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カルティエ タンクソロ (Cartier)

そんなに意識したことはないのだが、やはり昔から映画好きだったようだ。そして、多くのモノや感性を映画から影響を受けていることに気がつく。20歳くらいに観た「個人生活」という映画からもこの年齢になるまで忘れられない印象的なシーンが脳裏に焼き付いている。

「個人生活」という映画は、フランス映画界で一世を風靡した色男、アラン・ドロン主演の大人のメロドラマである。野望を持つ若手政治家と、若いファッションモデルの愛人関係という設定はもちろん若造?には十分刺激的だったが、歴史を感じさせる街並、豪華な調度品、優雅なライフスタイルといった背景にも、かつての日本人が憧れた「カッコいいパリらしさ」のすべてが凝縮された映画であった。

早朝のパリ。大統領官邸エリゼ宮で行なわれていた閣議が、今終わった。降りしきる雨の中、待ちうけていた報道陣のカメラの砲列が注目の若手政治家ジュリアン・ダンディユに殺到する。彼は左翼自由主義をスローガンとする連合共和党の多数派を率いて頭角を現してきた野党の党首だ。

混迷する政界はジュリアンのような若く野心的な政治家にとっては恰好の活躍の舞台であった。このフランス政界の若手ホープは、今ではパリの花屋の売り子までがその姿を見つけて囁き合うようなマスコミの寵児なのである。というのも彼には美しく知的な妻と息子がいながら、最近クリージーという美貌とプロポーションで売り出したトップ・モデルとの公然の関係が噂されていたからである。

個人生活

メディアはジュリアンの多忙な一秒一刻を争って追っていた。やがて、新しい内閣が誕生しようとしており、ジュリアンにとっては政治生命を左右するほど重要な閣僚のポスト争いが熾烈に行われていた。幼いときから炭坑夫として働き、労働運動に身を投じてきた彼にとって連合共和党の総裁ビベールの未亡人で影の実力者といわれるルネは深い信頼で結ばれた仲であった。ジュリアンは今、ルネの助けを必要としていた。

同志サバランがジュリアンに反対派として対立していたからである。ジュリアンとは一心同体の秘書ドミニクも、彼が閣僚のポストにつくためには何よりもサバランを巻き込むことだと考えていた。サバランへの調停者をルネに依頼したが、彼女はジュリアンがクリージーと別れることを条件に引き受けた。そして思惑通り、サバランはジュリアンに協力することを約束。これでジュリアンが閣僚のポストに着くことはほぼ確実だった。

ジュリアンは受話器をつかんでクリージーに電話する。しかし、誰も出なかった。数日後、大統領はジュリアンを新内閣の重要メンバーに選任した。彼の社会的野望は遂げられようとしていた。

しかし、その瞬間、ジュリアンの胸の内に熱い思いが込みあげてきた。それはクリージーへの未練であった。クリージーのやさしさ、伸びきった肢体…・その豊かな胸に顔を埋めると、ジュリアンの孤独で凍った心が次第に暖かくなっていくことを感じる。何度目かの電話でやっと彼女に電話連絡がついた。

彼女は、もし0時までに彼女の家にこなければ自殺するという。必ず行くと約束したものの、いまわしい会議が始まろうとしていた。「今、エリゼ宮で大統領がお待ちになっています」。ジュリアンはもう引き返すわけにはいかなかった。夜がとっぷりとふけていく。街灯がマロニエの木立ちを照らしていた。ジュリアンがクリージーのアパルトマンに着いたとき、時刻はすでに0時をまわり、クリージーの部屋はまっ暗だった…

行き届いた脚本と淡々としながらも余韻の残る演出がユニークな秀作である。大臣のポストを獲得するべく政治的な駆け引きに奔走する男の多忙な一日と、彼がその合間に回想する女との出会いや愛を交わすシーンが交錯する構成だが、終盤近くになるまで女は回想の中のみの存在で、「今」のシーンでは男がひたすら不在の女に連絡を取ろうとする。繰り返されるその描写が、男の女に対する渇望を自然に感じさせるのがなんとも巧みである。秘密の恋ならではの艶かしさが画面からにじみ出るようなシーンの甘美さが素晴らしい。

例によって、記憶は曖昧なのだが、この映画では(時間)時計が重要なアイテムだったようで、アロン・ドロンが度々時間を確かめるシーンで腕時計がスクリーンにアップで映し出される。その黒革ベルトの金の時計がカルティエのタンクソロなのだ(多分…)。当時のドロンの格好良さとの相乗効果で、この時計のなんと美しいこと!と衝撃を受けたものだ。それ以来、好きな腕時計のベースになっているのは、革ベルトの薄いドレスウォッチタイプなのである。

カルティエ タンクソロ

20歳の若造がスクリーンにクローズアップされた時計がカルティエだという事は知る由もなかったが、あまりに印象的だったものですぐに調べたと思う。今から30数年前は、まだ現在のように海外ブランドがポピュラーな時代ではなかったのでけっこう苦労した記憶がある…

今でもカルティエのこのタイプの時計を見ると、若かりし頃の凛々しいアラン・ドロンの姿が甦る。

 
 
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