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イントロダクション
CINEMA Oh! PLEASE Top
監督:ジェイソン・ライトマン 製作年:2009年
原案:ウォルター・キルン 上映時間:1時間49分
   
あなたの「人生のスーツケース」
詰め込みすぎていませんか?
【イントロ】

インターネット全盛の現代に、人との心の繋がりについて問題提起する人間ドラマの登場。ま、テーマは仰々しいが、テンポの良い上質のコメディ映画である。

「バックパックに入らない物は背負わない」と、面倒な人間関係を避け、効率良く人生を生き、リストラ宣告人として自分の仕事を淡々とこなす主人公ライアン・ビンガム役に、大人の色気ムンムンのジョージ・クルーニーが扮している。ライアンに絡む女性にヴェラ・ファミーガ、アナ・ケンドリックが各々の魅力を十分に発揮している。

映画では、リストラそのものを批判することもせず、インターネットを含むデジタルの世界を否定しているわけでもない。現代社会の持つ合理性とその中で彷徨う人間の様々な感情を淡々と表現している。

人生の多くの要素はデジタル化された数字によて構成されている。リストラは成績という数字によって判断され、消費はポイント換算される。便利なはずのツールはいつしか人間の行動や心を支配する。主人公のライアンは、そんな現代を象徴するような、マイルを貯めることだけを生きがいとするクールなビジネスマンだが、もっとドライな新人類の登場によって少しずつ自分が変化していく。

まだ30代前半の新進気鋭の映画監督ジェイソン・ライトマンが、ウォルター・カーンの同名小説をもとにシェルドン・ターナーと共同で脚色を手掛けている。

意表を突く素材とユーモラスな語り口で問題提起する才能に長けており、今回もスマートで軽快な台詞が堪能できる作品に仕上がっている。

 
【ストーリー】

主人公ライアン・ビンガムはリストラ請負人。企業に雇われ人のクビを切りまくる彼の仕事は不景気の今、最盛期を迎えている。酒もあるし、食事もある、雲に囲まれた飛行機の中が、アメリカ各地を飛び回る彼にとっては我が家同然。そんな生活が快適過ぎて、地に足を付けず、ずっと1人で気ままに生きているビンガム。

彼の去年の出張回数は322日。彼のアパートは生活感がまるでない、ショールームのような部屋。それもそのはず、彼に必要な生活用品は全てスーツケースの中に入っているからだ。また、彼は講師となりフリーライフの講演を行い、しがらみのない生活の素晴らしさを唱える。特定の恋人も持たず、家族とも疎遠のビンガム。マイレージを1000万マイル貯める目標だけが生きるモチベーションなのだ。

そんな快適な生活を満喫している彼をピンチに陥らせるのは、ネットでリストラを宣告することで経費が節減できると提案する、ドライで生意気な新人ナタリーの出現。リストラ宣告人の自分の首が切られるかもしれない危機感よりも、「それでは出張がなくなりマイルが貯まらない…」と、憤りの方が先に立つビンガムの姿が妙に可愛い。

ただ、ビンガムは直接相手に会って語りかける大切さをナタリーに説く。このあたり、ライアンは根っからの冷血漢ではなく、職業と割り切っていても相手に敬意を失わず、実践が伴わずアイデアと効率重視だけのナタリーとは一線を画す。

ビンガムは上司からナタリーの教育係に任命され、リストラ現場への同行を余儀なくされる。空港での効率よくチェックインするノウハウやワンランク上のサービスを享受する方法などを伝授するビンガム。

リストラの仕事の過酷さや繊細さを、直接人と向き合いながら学んでいく世間知らずのナタリーは、案の定、現実に打ちのめされていく。恋人からメールで別れを宣告されたり、リストラ相手に自殺を仄めかされたり、クールさを装うナタリーも、次第に感情を押さえ込むことが出来なくなっていく…

ビンガムは、彼と同じように出張で全国を飛び回り、同じような価値観を持つアレックス・ゴーランと出会い、ベッドを共にするようになる。シングルライフを謳歌しているビンガムだが、知的でセクシーなキャリアウーマンのアレックスは彼には何も要求せず、ただ包み込む。その余裕のある包容力にビンガムは徐々に心地良さを覚えていく。

ビンガムは妹の結婚式のために、アレックスを連れて地元に赴く。シングルではいたいが、そこで一層距離を縮める2人。

ところが、結婚式当日に花婿が結婚に怖じ気づいてしまうという大事件が発生。姉から説得役を頼まれるビンガムだが、結婚してしまったらどんな未来が待っている、という想いをジムに打ち明けられると、ビンガムの顔の表情が変わり生唾を飲む。それはビンガム自身の恐怖でもあったのだ。また、それはなぜ彼が人と繋がりを持ちたがらないのか、ようやく分かる瞬間でもあった。彼は地に足が付いてしまう自分が怖いのだ。

ビンガムは人と会社とのつながりを断ち切る事は得意だが、人との繋がりを持つ事に怯える、脆い心を持つ男であった。

花婿を説得することによって、今までの快適だが薄っぺらい自分自身の生き方を深く考えるようになる。カネや地位といったビジネスでの成功よりも、落ち込んでいるときに親身になって心配してくれる人が周囲にどれだけいるかが、豊かさを測る物差しであると…

そして、気楽な生活を理想としてきた彼が、空っぽのバックパックに何かを入れたいと思い始めたそのとき、地に足を付けたものだけが感じる痛みが訪れる…

 

【インプレッション】

先日もNHKでも、リストラ請負人を主人公にしたドラマを放映していた。このような職業は、今がもっとも旬なのかも知れない。

解雇による訴訟を避けるため、リストラのプロに依頼する。今回の作品で、リストラされる社員の多くは、実際に企業からリストラされた人たちがオーディションによって選ばれているという。リストラを宣告されたときのリアクションは、演技ではなく、本人が体験した本物の苦悩がスクリーンから伝わってくるようだ。

ライアンという人物の面白さは、人を切る非情な仕事をしながら、あくまでも「軽く」生きる男だということだ。彼は決して悪人ではなく、他人と深く係わらないのは、予め自分を防御するバリアを張っているからに他ならない。空港やホテルで無駄なく動き、スマートにキメているつもりのライアンの、滑稽なまでのこだわりを見ていると、微笑ましくもあり、哀れでもある。

別れの宣告や辞職をメールで済ます世の中になっている…と、思えば何だか悲しくなってくる。情緒というものが欠落してしまったようだ。ゲーム世代の若者が大人になり、現実とバーチャルの差が分からなくなる時代がやってきているのは、何も映画の世界だけではないように思える。

リストラというようなデリケートな問題であれば特に、人との関わりを知らない人間が、ドライな手段で目的を達成しようとすることと、目的を達成するために、あえて深い関わりを避けるということでは、まったく違うものである。効率を優先し、ネットでのリストラを提案するナタリーが、恋人からの別れをメールだけで済まされ、やりきれない悲しさをライアンにぶつけるところは秀逸だ。相手の人生を決める一大事を、感情の伴わない文明の利器だけに頼ることへの安直さを身をもって知り、当事者が受ける理不尽さを体験して、少しずつ成長していく姿を上手く演出している。

バーで出会ったアレックスと自分の持っているカードを見せ合い盛り上がる場面では、なぜか、昔観た「リーサル・ウエポン」で、主人公が出会った女性と自分の身体の傷跡自慢をしているシーンを思い出す。

今回の作品の中に登場する超VIPカードの「コンシェルジュ・キー」のようなカードが、実際にあるのかどうか知らないが、きっと世の中にはいろんな種類のカードが存在しているだろう…

マイレージを貯めている知人が周りにいないので、1000万マイルを貯めるという事が、どれほどの偉業だという実感が掴めないことが少々残念であるが、映画の中ではライアンは世界で7人目ということになっている。これって名誉なこと?と、オーソドックスな疑問を持つ者も少なくないはず…しかし、そんなことを突っ込めば、映画自体が成立しなくなる…

この作品で用意されている結末に、この映画を観た人がどのような感想を抱くかが興味津々である。あ〜なるほど、と頷く人もいれば、頭の中に疑問符がいっぱい登場する人もいるだろう。

勿論、正解などないのだが、頑張れ!ライアン・ビンガム!と、呟いた。多分、いまだにお気軽な生活を続けている独身男が、主人公を称える精一杯のエールかもしれない。

 
キャスト スタッフ
ジョージ・クルーニー 監督:ジェイソン・ライトマン
ジェイソン・ベイトマン 製作:アイバン・ライトマン/ダニエル・ダビッキ/ジェフリー・クリフォード
ヴェラ・ファーミガ 製作総指揮:トム・ポロック/ジョー・メジャック他
アナ・ケンドリック 脚本:シェルダン・ターナー/ジェイソン・ライトマン
ダニー・R・マクブライド 原作:ウォルター・キルン
エイミー・モートン 撮影:エリック・スティールバーグ
メラニー・リンスキー 美術: スティーブ・サクラド
サム・エリオット 音楽:ロルフ・ケント
J・K・シモンズ 衣装デザイン:ダニー・グリッガー
  編集:デナ・E・グローバーマン
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