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監督:キャスリン・ビグロー 製作年:2008年
脚本:マーク・ボール 上映時間:2時間11分
   
War is a drug
戦争とは麻薬だ
【イントロ】

イラクを舞台としたアメリカ軍爆弾処理班を描いた話題の戦争映画「ハート・ロッカー」は、最初から最後まで手に汗握る展開に、全編緊張感漂うスリリングな作品に仕上がっている。死と隣り合わせ、極限まで集中した命がけの作業風景は、見る者にも一瞬の気の緩みを許さない。

女性監督キャスリン・ビグローが、ジャーナリスト兼脚本家のマーク・ボールの取材をもとに製作した「ハート・ロッカー」は、、第82回アカデミー賞の作品賞や監督賞など6冠に輝いた作品である。

第二次世界大戦やベトナム戦争をモチーフにした戦争映画は多いが、、時代は、「9.11」以後の対テロ戦争に移ってきている。対テロ戦争の特殊さと異様さに、本気で踏み込んだ作品は、この「ハート・ロッカー」が初めての作品かも知れない。

「ハート・ロッカー」が、国内外で高い評価を得た理由の一つには、爆弾処理班という特殊な存在に着目した点と、常に死と隣り合わせの彼らの任務を仔細に描いた上で、彼らの内面に迫ったところである。

主役のジェレミー・レナーは、さほど有名な役者ではないが、有名な俳優を起用するより、作品のリアリティ感が高まっているような気がする。ただ、本当の主役は人物ではなく、バグダッドの荒廃した風景であり、爆発物処理班の過酷な任務そのものである。

なお、タイトル名の「ハート・ロッカー」は、アメリカ軍の隠語で「苦痛の極限地帯」や「棺桶」を意味している。

 
【ストーリー】

場所はイラク。アメリカ陸軍の爆発物処理班は日々発見される爆発物との格闘を続けている。その毎日は死と隣り合わせ。今日もトンプソンとサンボーンやエルドリッジを始めとするブラボー中隊の面々は出動要請を受け、爆発物とおぼしき物の処理作業に取り組んでいた。

爆破のための遠隔操作ロボットも支給されているのだが、作業中に故障してしまう。ロボットが役に立たないので人力でやるしかない。今回、その役目を引き受けるマット・トンプソン軍曹は、爆破から身を守るために宇宙服のような防爆服を身にまとう。しかし、大型の爆発物に対する防御力はゼロに近い。

部下のサンボーン軍曹は、その他の兵士を指揮して周囲の警戒に当たる。爆破作業を狙って狙撃してくる者や、遠隔装置による爆破をしようとする者、または自爆テロをしようとする者がいないか、周囲の警戒が欠かせないのだ。

トンプソンは爆発物に到達。爆薬を置き、サンボーンたちの方に引き返してくる。サンボーンはそのとき、不審な男を発見。周囲の店にいる男が何やら携帯電話で話している…。

遠隔操作を疑い、その男に携帯電話による通話を止めるように警告する。しかし、時すでに遅かった。男は携帯電話のボタンを押し、その瞬間に爆発物が巨大な地響きと轟音をあげて爆発した。トンプソンは吹き飛ばされ、周囲はしばらく土煙に包まれた…

サンボーンはキャンプ・ビクトリー内に立ち並ぶ兵士用のバラックのひとつにやってきた。大音量の音楽が聞こえてくるバラックのドアをノックする。出てきたのは新たにブラボー隊に転属してきたウィリアム・ジェームス2等軍曹。彼は死んだトンプソン軍曹の代わりにサンボーンの爆発物処理班に配属されてきた…

ジェームスはサンボーンに窓際に張られた大きな木の板をどかすのを手伝ってくれという。その木の板は毎晩のようにキャンプ・ビクトリーに撃ちこまれる迫撃砲を避けるためのものだった。サンボーンは「動かさない方がいい」と注意するのだが、ジェームスは「窓だけ木の板を置いても屋根からは防げない、だったら部屋が明るい方がいい」主張する。

ジェームスの爆発物処理能力は常人の域を超えていた。まるで恐怖感のないような振る舞いと、彼のチームプレーを無視したやり方に同僚のサンボーンやエルドリッチは怒りと不安を覚える。ジェームズという男は既に800以上もの爆弾を処理しており、爆弾を恐れていないスリルジャンキーなのだ。

残りが1ヶ月ほどの任期が終えるまで、様々な爆発物の処理をするブラボー中隊。彼らが帰国するまで、刻一刻と流れる時間は、まるで、この男達の破滅へのカウントダウンのようである。道路や車、果ては人体に仕掛けられた爆弾を無力化しようとするジェームス。「どうせ死ぬのなら気持ちよく死にたい」と、防爆服を脱ぎ捨てて、大量の起爆装置を解除す彼の行為は、勇気なのか狂気なのか…

また、イラクでの任務の恐ろしいところは爆発物処理だけではなく、いつ何時襲ってくる敵が、街では市民にまぎれ、砂漠では風景に同化して身を潜めている恐怖である。

そんな環境の中で、普通の人間は神経を病み、タフな者でも正気を保つのがやっとの状況である。ジェームズのような戦争中毒の人間だけが順応できる極限の世界なのだ。

ブラボー中隊は無事に帰国できるのか…

 

【インプレッション】

車のハンドルに一切の遊びがない状態…そんな感覚の作品である。死と隣り合わせの、極限まで集中した命がけの爆発物処理作業は、見る者に一瞬の気の緩みを許さない。まさに緊張感の連続である。

今までの戦争映画のような派手な戦闘シーンなどはないが、私たちが知り得なかった、隠れた英雄であるアメリカ軍爆発物処理班の活動に注目し、戦地において最も危険な役割を担う男達の生き様が描かれている。

登場するアメリカ兵は、略奪もしなければ非人道的な所業を平気で行う悪魔でもない。常に死の恐怖におびえ、砂漠で孤独を感じ、ときには仲間同士でケンカもする、人間味溢れる若者たちなのだ。

冒頭で「戦争は麻薬である」というクレジットが入る。解釈は人によって異なるが、主人公の行動がすべてを物語っている。任務終了後の家庭での暮らしは、生きがいのない抜け殻のような生活ぶりである。そして、彼はまた戦地へと戻っていく。

乾いた空気に強い陽ざし、雑然とした埃っぽい街。バグダッドのあの猥雑な空気にすっかり慣れてしまったジェームスにとって、平穏な日常には生きているという喜びを感じない。一日一日を命を賭けて、生死の一線上を綱渡りで生きるイラクの日々が懐かしく思えるのだ。

ジェームズは決して狂人ではない。ごく普通の男なのだが、そんな男をスリルジャンキーに変貌させてしまうところに戦争の恐怖がある。ごく普通の幸せに不感症となり、感情が麻痺してしまう。人と接することが苦手になり、自分の殻に閉じこもるようになってしまう。

何のための戦いかは分からない。ただ、極限状態に身を置くという事で、正義感でも強迫観念でもなく、ただ生きているという実感を得る。私たちのように平和ボケした人間には理解不能な精神状態である。しかし、現実にはそんな戦争中毒の人間が多数存在するという恐怖がそこにある。

アカデミー賞の監督賞を受賞したキャスリン・ビグローのドライに徹した演出は、女性監督という事で勝手に思い描く、どこかセンチメンタルで情緒的な作品なのかという予想を、ある意味覆している。ただ、女性だから扱えた戦争テーマだったのかも知れない。なぜ戦わなければいけないのか…という根本的な部分を追求するような事はあえて触れず、戦争後に襲ってくる日常の様々な恐怖や精神的苦悩を淡々と描き、よけいに怖さが感じられる演出はさすがである。

世界のどこかでは、実際に映画版「ハート・ロッカー」の現実がある。スクリーンから伝わってくる悲惨なシーンが現実に行われていると思えば、ただ映画を観ているだけの私たちは、何て幸せなんだろうと実感する。

世界では今でも多くの紛争が続いている。決して終焉を迎えない空しい争いの果てには、一体何が待っているのだろうか。「ハート・ロッカー」を観て、いろいろと考えて欲しい。

 
キャスト スタッフ
ジェレミー・レナー 監督:キャスリン・ビグロー
アンソニー・マッキー 製作:キャスリン・ビグロー/ニコラ・シャルティエ/グレッグ・シャピロ他
ブライアン・ジェラティ 脚本:マーク・ボール
クリスチャン・カマルゴ 撮影:バリー・アクロイド
ガイ・ピアース 音楽:マルコ・ベルトラミ/バック・サンダース
レイフ・ファインズ 編集:ボブ・ムラウスキー/クリス・イニス
デヴィッド・モース  
エヴァンジェリン・リリー  
第82回アカデミー賞 作品賞
監督賞:キャスリン・ビグロー/主演男優賞:ジェレミー・レナー/脚本賞:マーク・ボール/撮影賞:バリー・アクロイド/編集賞:ボブ・ムラウスキー、クリス・イニス/作曲賞:マルコ・ベルトラミ、バック・サンダース/音響編集賞:ポール N.J.オットソン/録音賞:ポール N.J.オットソン、レイ・ベケット/
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