相棒 劇場版U
トロン:レガシー
KISS & KILL
SPACE BATTLESHIP ヤマト
ハリー・ポッターと死の秘宝
Part 1
SP 野望篇
THE MOTION PICTURE
エクスペンダブルズ
ナイト&デイ
十三人の刺客
THE LAST MESSAGE 海猿
バイオハザードIV
アフターライフ
特攻野郎Aチーム
ベストキッド
ソルト
インセプション
アデル ファラオと復活の秘薬
踊る大捜査線 THE MOVIE 3
ヤツらを解放せよ!
アウトレイジ
セックス・アンド・ザ・シティ2
アイアンマン 2
座頭市 THE LAST
プリンス・オブ・ペルシャ
時間の砂
パリより愛をこめて
グリーン・ゾーン
オーケストラ!
のだめカンタービレ最終楽章
後編
タイタンの戦い
第9地区
ハート・ロッカー
マイレージ・マイライフ
NINE ナイン
ショーロック・ホームズ
日本アカデミー賞
パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々
サロゲート
バレンタインデー
インビクタス/負けざる者たち
2009年の総括
イントロダクション
CINEMA Oh! PLEASE Top
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ 製作年:2009年
原題:Le Concert 上映時間:124分
   
寄せ集め楽団が巻き起こす奇跡の物語。
沸き起こる拍手に温かい涙が流れる。笑って、元気をくれる作品。
【イントロ】

ソ連時代の圧政で名門オーケストラでの地位を奪われた天才指揮者が、ひょんなことから昔の仲間を中心にオーケストラを再結成し、かつての栄光を取り戻そうと奮闘する姿をユーモラスに、また感動的に描いた渾身の音楽映画の登場だ。

主演はロシアを拠点に活躍するアレクセイ・グシュコフ。モスクワ芸術劇場で演技過程を修了し、舞台を中心に活躍していたが、映画出演も40本以上あるロシアの名優である。共演はクエンティン・タランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」で一躍有名になった美人女優のメラニー・ロラン。今回の作品ではクローズアップのショットが多用されており、その美貌が際立っている。バイオリニストとしての演技も自然で、感情表現が上手く描かれている。

監督はルーマニア・ブカレスト生まれのラデュ・ミヘイレアニュ。チャウシェスク独裁政権下にあったルーマニアから80年に亡命し、ユダヤ人ジャーナリストの息子としてイスラエルの保護下に入った。次にフランスへ移り、高等映画学院で映画を学び、監督デビューする。2005年の「約束の旅路」では、仏セザール賞最優秀脚本賞を受賞している。今回の作品は、旧ソ連時代に多くの有能な演奏家たちが排斥された出来事を背景にし、人間の尊厳を取り戻したい人たちのストーリーが主軸になっている。

コンサートシーンは、パリのシャトレ座の全面協力を得て撮影されている。シャトレ座は、パリ1区、セーヌ川右岸に1862年から建つ、座席数が2,500の劇場。オペラ、オペレッタ、バレエ、演劇、クラシック・コンサート、映画上映などに使われてきた由緒正しき劇場である。

「オーケストラ!」は、まさに音楽映画と呼ぶにふさわしい作品である。音楽と感動が渾然一体になったラストシーンは素晴らしいの一言に尽きる。

自然と溢れる涙を気にせず、大きなスクリーンで鑑賞して欲しい作品だ。

 
【ストーリー】

劇場清掃員として働く冴えない中年男アンドレイ・フィリポフは、かつてはロシア・ボリショイ交響楽団で主席を務めた天才指揮者だった。

当時のブレジネフ政権はユダヤ人の排斥運動をおこなっていたが、アンドレイはユダヤ系の演奏家たち全員の排斥を拒絶し、名声の絶頂期に解雇された。

他人の尊厳を守るために自分の職を失った。そして、職を失ったことにより、自分の尊厳が失われてしまうという、何とも不条理な世の摂理である。

アンドレイはいつか復職する日を夢見て、30年にもわたり劇場清掃員として働いていた。ある日、清掃中にアンドレイは、1枚のFAXを目にする。それは、演奏を取りやめた交響楽団の代わりに、パリのシャトレ座に出演するオーケストラを2週間以内に見つけたいという内容だった。

その瞬間、彼はかつての仲間を集めて偽のオーケストラを結成し、ボリショイ交響楽団代表としてパリに乗り込み、公演を実現させようという突拍子もない計画を思いつく。

アンドレイはまず、元チェロ奏者で今は救急車の運転手・サシャ・グロスマンに話を持ちかける。サシャは呆気にとられるが、アンドレイの熱意に押され、気がつけばアンドレイを救急車に乗せて昔の仲間を訪ねていた。

タクシー運転手、蚤の市業者、ポルノ映画の効果音担当…モスクワの片隅でかろうじて生計をたてている彼らのほとんどが、アンドレイの荒唐無稽な誘いを二つ返事で承諾する。演奏曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ソリストは若手スター、アンヌ=マリー・ジャケを指名した。

しかし、演奏旅行には2つの大きな障害がある。1つは資金。

チェロ好きの資産家を巧みに仲間に引き込み、まんまと資金の調達に成功する。

もう1つの問題のパスポートも、ジプシーのヴァイオリン奏者が24時間で全員の偽造パスポートをつくり、遂に寄せ集めオーケストラはパリへと旅立っていった。

到着早々、アンドレイのもとにアンヌ=マリーのマネージャー、ギレーヌ・ドゥ・ラ・リヴィエールが現れ、彼とは旧知の仲らしい彼女は、アンヌ=マリーに話すつもりかと何かをきつく口止めする。

団員たちは演奏することよりも、パリ旅行にはしゃぎまくり、現地で自分の商売のネタをみつけるため走り回るものもいる。30年ぶりの演奏だというのに、誰もリハーサルにやってこない有様だ。

コンサートを前に、夕食を共にするアンヌ=マリーとアンドレイ。そこでアンドレイは、究極のハーモニーに到達できたはずのレアというヴァイオリニストの悲しい運命を語り始めた…チャイコフスキーの演奏経験もなく、リハーサルもなしでは究極のハーモニーは無理だと、この演奏をキャンセルするアンヌ=マリー。

一度はキャンセルした彼女だが、「出演してくれれば、あなたの親についてわかるかも知れない」という言葉と、ギレーヌから渡されたレアのチャイコフスキーの楽譜により、出演を決意する。

コンサートの開始時間になり、指揮台にアンドレイが立つ。アンヌ=マリーもヴァイオリンを構えているが、小遣い稼ぎに夢中の寄せ集め団員が集まらない。リハーサルなしのぶっつけ本番の演奏は奇跡を起こせるか。

そして、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が始まった…

 

【インプレッション】

1980年代の旧ソ連では、当時のブレジネフ政権はユダヤ人の排斥運動をおこなっていたため、ボリショイ交響楽団でユダヤ人団員をかばったために指揮者が解雇される事件が本当にあった。

この作品は、その時のエピソードと、2001年に偽ボリショイ交響楽団が香港でコンサートツアーを行ったエピソードを上手くミックスし、自信喪失の時代を生きる人々を励ます物語として誕生したようだ。

ラデュ・ミヘイレアニュ監督は、80年に共産党政権下のルーマニアから亡命したユダヤ系で、マイノリティの描写は実に生き生きと演出している。人間の強さと、忘れてはならない国家の罪を振り返り、今のロシアや東欧の危うさを笑い飛ばしている。

コミカルに描かれたユニークな楽団員たちの行動には、賛否の分かれるところであるが、すべてがシリアスだと映画自体が重くなるので、丁度良い具合のスパイスと判断しても差し支えはないだろう。

ただ、リハーサルなしのぶっつけ本番で公演に挑むというのは、少々やりすぎ感がある。いかに荒唐無稽のストーリーとはいえ、その辺りには現実感を出してもらいたい…というのが本音である。

しかし、この映画は間違いなく名作である。「奇跡が起きますように…」と、祈ってから、ラストまで約12分の演奏シーンの中に映し出された、簡潔ながらも印象的な演出手腕は見事である。

時代という抗い難い波に翻弄された人々の暗く哀しい想いが、この演奏で解き放たれている。

アンドレイとアンヌ=マリーと楽団員達の心とハーモニーが徐々に一体化していき、隠された真実と彼らのその後も描かれたクライマックスの演奏シーンは圧巻の一言。

知らない間に涙が頬を伝っている…はず。

本来、女優はクローズアップに耐えられる美しさが必要不可欠である。もちろん、ただ美しいというだけではなく、ちゃんと感情を表現出来ないと映画の長丁場はもたない。

メラニー・ロランのクローズアップには凛とした美しさがあり、演奏中に徐々に自分が何者なのかが分かってくる様子が抑えた演技の中からも伝わってくる。

台詞は必要ない。

チャイコフスキーの協奏曲だけがすべてである。出演者全員の感情が音となり、旋律となり、そして、観客の心を揺り動かす。30年前に奪われた人間の尊厳は見事に取り戻せたようだ。

同時期に同じクラシック音楽を題材にした映画「のだめカンタービレ」が公開されているが、まったく趣の違った作品なので、どちらが良い悪いという判断は出来ない。ただ、クラシック音楽の素晴らしさはどちらの作品からでも伝わってくる。

幼いときからピアノかバイオリンの練習をしておけば良かったと、心底思ってしまった。

上質の音楽映画「オーケストラ!」を堪能して欲しいものだ。

 
キャスト スタッフ
アンドレイ・フィリポフ:アレクセイ・グシュコフ 監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
アンウ=マリー・ジャケ:メラニー・ロラン 製作:アラン・アタル
オリヴィエ・デュプレシス:フランソワ・ベルレア 原案:ヘクトール・カベッロ・レイエス/ティエリー・デ・グランディ
ギレーヌ・ドゥ・ラ・リヴィエール:ミュウ=ミュウ 脚本:アラン=ミシェル・ブラン/マシュー・ロビンス
サシャ・グロスマン:ドミトリー・ナザロフ 撮影:ローラン・ダイアン

イヴァン・ガヴリーロフ:ヴァレリー・バリノフ

美術:クリスチャン・ニクレスク
イリーナ・フィリポヴナ:アンナ・カメンコヴァ 音楽:アルマン・アマール
ジャン=ポール・カレル:リオネル・アベランスキ プロダクションデザイン:クリスティアン・ニクレスク
フランツ・フォン・シュトレーゼマン:竹中直人 衣装デザイン:ヴィオリカ・ペトロヴィッチ
ヴィクトール・ヴィキッチ:アレクサンドル・コミサロフ 編集:ルドヴィク・トロシュ
“トゥル・ノルマン”のオーナー:ラムジー・ベディア 原題:Le Concert
   
<< Back Next >>
 
 
ホーム