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2009年の総括
イントロダクション
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監督:ポール・グリーングラス 製作年:2010年
撮影監督:バリー・アクロイド 上映時間:114分
   
決死の大量破壊兵器捜索、唯一の手がかりは、「偽情報」だった…
114分間、あなたは最前線へ送り込まれる。
【イントロ】

「グリーン・ゾーン」とは、かつて連合国暫定当局があったバグダード市内10kuにわたるエリアのことである。イラク暫定政権下の正式名称は「インターナショナル・ゾーン」だが、「グリーン・ゾーン」の呼び名が一般的である。

この作品は、ワシントン・ポスト紙の元バグダード支局長ラジブ・チャンドラセカランの2006年の著書「インペリアル・ライフ・イン・ザ・エメラルド・シティ」を原案に、ポール・グリーングラス監督とマット・デイモンが「ボーン・スプレマシー」「ボーン・アルティメイタム」に続いて、三度目のタッグを組んだ戦争系サスペンス・アクションである。

イラク駐留米軍を描いたアカデミー賞受賞作「ハート・ロッカー」が、爆弾処理班兵士たちの日常、すなわち個人の葛藤に迫っていたのに対し、「グリーン・ゾーン」は、組織の論理と矛盾をえぐり出していく。あの戦争は何だったのか…という、監督の思いが、イラクの現実のリアルな再現描写の中に痛切なまでに刻まれているようだ。

ポール・グリーングラス監督が、9.11同時多発テロの実話に基づく「ユナイテッド93」でコンビを組んだバリー・アクロイドを撮影監督に招聘し、「ハート・ロッカー」の戦場描写でも絶賛されたこの極限映像のスペシャリストが、銃撃戦などのアクション・シークエンスをハンディ・カメラを多用し、他作品の追随を許さないほどの圧倒的な臨場感を創りだしている。常に体感型の映像スタイルを志向するグリーングラス監督の要望を見事に叶えた素晴らしいカメラワークである。

クリント・イーストウッドと組んだ「インビクタス・負けざる者たち」も好評を博し、本年度のアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたマット・デイモンは、今や誰もが認めるハリウッド屈指のスーパースターである。

強い使命感に突き動かされ、戦火のバグダッドを疾走する主人公ミラーを熱演している。ジェイソン・ボーンのような特殊技能を何も持たない一人の軍人が、大掛かりな陰謀を暴き出していく無謀な姿にカタルシスを感じる。

大量破壊兵器の情報源をひた隠しにする国防総省の要人、パウンドストーンに扮するのは、「リトル・ミス・サンシャイン」のコミカルなパパ役から一転し、憎らしいほどのふてぶてしさを漂わせるグレッグ・キニア。その犬猿の仲であるCIAエージェントのブラウンを、「ハリー・ポッター」シリーズのマッドアイ・ムーディ役で広く知られる曲者俳優ブレンダン・グリーソンが演じている。

さらに「ユナイテッド93」のプロデューサー・トリオのもとに、脚本のブライアン・ヘルゲランド、編集のクリストファー・ラウズ、音楽のジョン・パウエルといった「ジェイソン・ボーン」シリーズの凄腕スタッフが結集し、グリーングラス監督&マット・デイモンの新たなる到達点を力強くバックアップしている。

 
【ストーリー】

2003年、英米連合軍によって陥落したイラクの首都バグダードに、アメリカ軍駐留地域、通称「グリーン・ゾーン」があった。

ロイ・ミラー上級准尉は、イラク政府が隠した大量破壊兵器を発見するという任務に就いていた。

ミラーはMET隊を率いて戦闘を繰り広げるが、大量破壊兵器は見つけられない。これが3度目の失敗となったミラーは情報の正確性に疑問を感じ、作戦会議の席上で情報源の説明を要求する。

しかし、上官からは情報は精査されていると一蹴されてしまう。ミラーは任務の遂行中、英語が堪能でフレディと名乗るイラク人男性と接触する。フレディは、政府の要人たちが近くの民家に集まっているのを見たとミラーに告げる。ミラーはその民家で激しい銃撃戦の末、フセイン政権の最高幹部アル・ラウィ将軍の側近であるサイードという男を拘束する。

ミラーはサイードの尋問を行うが、突然現れた特殊部隊の隊長ブリッグス少佐に、サイードを強引に連れ去られてしまった。しかし、ミラーの手元には、サイードから咄嗟の機転で押収した1冊の手帳が残された。国防総省の動きに不信感を募らせたミラーは、CIAのエージェント、ブラウンと会う。

国防総省のパウンドストーンと敵対するブラウンは、ミラーと同様、大量破壊兵器の謎を探っていた。ミラーは、ウォールストリートジャーナル紙の女性記者デインが過去に書いた記事から、「マゼラン」と呼ばれるイラク政府高官が大量破壊兵器の情報源であると確信する。

パウンドストーンは、サイードの手帳にアル・ラウィの隠れ家のリストが載っていることを知り、その機密を入手しようと画策し、まんまと手帳奪取に成功した。

ミラーはブラウンの協力で、米軍基地に収容されたサイードに接触する。サイードは尋問のため瀕死の状態に陥っていたが、虫の息で「ヨルダン」という言葉を呟く。

イラク戦争自体が壮大な嘘に踊らされた茶番劇だと確信したミラーは、唯一の証人であるアル・ラウィ将軍を追う。ミラーの企みに気付いたパウンドストーンは、ブリッグスの部隊を操り、ミラーとブラウンの妨害行動にでる。

アル・ラウィ将軍はなぜ偽情報を流したのか、国防総省の真の狙いは何か、アル・ラウィ将軍との接触に成功したミラーに待っていた運命は…敵はイラクではなく味方の中にいるのか…そして、驚愕の真実が明らかになる。

 

【インプレッション】

手持ちカメラを駆使した数々のアクションシーンは、高速カット割りの手ぶれ映像でかつてない臨場感を生み出す。

VFX全盛の時代において、あえて俳優の生身のアクションにこだわった手法で、21世紀の最先端スタイルとして世界中の観客を熱狂させ、多くの映像クリエイターに影響を与え続けるグリーングラス監督が、スピード感とリアリティを格段に向上させ、さらに迫真の度合いを上げようと、観客をバクダッド陥落後のイラク戦争の現場へと招待する。

街灯もない路地でターゲットを追い、銃撃戦を交えつつ疾走する。ハンディカメラで撮影された映像は、上下左右に激しく揺れ、戦場の緊迫感を再現する。実際に銃弾をかいくぐる兵士が体感する緊張と興奮がある。主人公の息遣いだけでなく、心臓の鼓動までが聞こえてきそうだ。

すでに大量破壊兵器の保持が大嘘だったという事実を誰もが知っているので、この作品のサスペンスとしての緊張感が少しだけ損ねられているのが残念である。

しかし、真実をひた隠す国防総省情報局、蚊帳の外に置かれるCIA、陰謀を察知しつつ公表しないジャーナリスト、権力に付き従う軍部など、何とも馬鹿馬鹿しい戦争の縮図が見事に描かれている。

また、出演者に本物の軍人を多数起用し、リアリティをだすことに成功している。

大量破壊兵器に関する陰謀を知ったミラーは、「今更どうでもいい」というパウンドストーンに、「戦争の原因だぞ、どうでもいいことか」と詰め寄るシーン…また、「イラクのことはイラク人が決める」という、自治を願うイラク人の心情を表現した台詞が何度も登場する。これが、グリーングラス監督のもっとも訴えたい「グリーン・ゾーン」でのテーマなのだろう。

「ハート・ロッカー」と「グリーン・ゾーン」も、共にイラク戦争後を題材にした作品であるが、戦争の持つ悲惨さや空しさは、どちらの作品からでもよく伝わってくる。何故戦争をしなければならないのか…平和ボケした今の日本に住んでいては、その答えはなかなか見つからないかもしれない。もし日本が突然侵攻されても、自国では防衛する手段を持っていない。侵攻なんかされるはずがない、きっとアメリカが守ってくれると、楽天的な考えが蔓延している。

戦争が良くないことは誰もが知っている。しかし、有事に自国を防衛する能力がなければ、その国のアイデンティティーはあるのだろうか。戦争映画を観るたびに、日本の恵まれている現状を感謝すると同時に、不安な未来を憂いてしまう。

自分の常識や日本の常識は世界では通用しない。いろんな国家間の思惑が絡み合い、決して戦争はなくならないだろう。平和を唱える者は多いが、そのほとんどが、自分だけ、自国だけの平和を願うものである。また、正義という言葉はひじょうに便利なエクスキューズであり、一方通行の正義を振りかざすのは、愚の骨頂だ。

たとえ聖戦であっても、犠牲になるのは常に何の罪もない大勢の市民であり、何のための戦いかも知らずに前線に送り込まれる名も無き戦士たちだ。そして、戦いに勝利した後に待っているのは、本当に平和なのだろうか…無意味な争いの陰には莫大な資金や利権が蠢いているのは周知の事実である。

暗躍する軍需産業、埋蔵されているはずの豊富な地下資源の奪取、宗教というな名のビッグビジネスの独占…地球が滅亡する日まで、正義という名のオブラートに包まれた陣取り合戦は終わらない。

2003年7月17日、イギリスのガーディアン紙にジュリアン・ボーガー特派員の「米国を戦争へと追いやったスパイたち」というタイトルの記事が掲載された。CIA情報を二次解釈し、サダム・フセイン政権転覆を正当化する目的でワシントンに創設された「影の右翼情報組織」についてのレポートである。

ドナルド・ラムズフェルド国防長官を中心とする政権上層部は国防総省内に「特殊作戦室」(Office of Special Plans=OSP)を作り、チェイニー副大統領など政権内保守強硬派の保護のもと、CIAが入手した生情報を独自に解釈しているという。

公式行政手続きを踏むことなく、議会のチェックも受けず、CIAや国防総省内の公式情報部門さえも排除してホワイトハウスに直接強い影響を及ぼすOSPは「影の政府」と言ってもいい存在である。強硬派で知られたダグラス・フェイス元国防総省政策次官の捏造情報が、イラク侵攻正当化の過程でCIAと国務省を押し切る力を見せたようだ。

ブッシュは2005年12月14日の演説で「多くの情報が間違っていた」と、イラクに大量破壊兵器がなかったことを認めている。ダグラス・フェイスの口車に乗っていただけだという印象の発言だが、フセインが石油の決済をドルからユーロへ変更し、ドル離れが他の湾岸諸国へ広がるのを牽制する大きな目的があったといわれており、フェイスの報告書をうまく利用したとも考えられる。

サダム・フセインが人道上の罪で死刑が執行されたが、パウンドストーンのモデルとなったダグラス・フェイスなどは何の罪にも問われていない。正義とは一体何なのだろうか…

現実は映画の世界より複雑なようだ。

 
キャスト スタッフ
ロイ・ミラー:マット・デイモン 監督:ポール・グリーングラス
クラーク・パウンドストーン:グレッグ・キニア 製作総指揮:デブラ・ヘイワード/ライザ・チェイシン
ブリッグス:ジェイソン・アイザックス 製作:ティム・ビーヴァン/エリック・フェルナー/ロイド・レビン
マーティ・ブラウン:ブレンダン・グリーソン 脚本:ポール・グリーングラス/ブライアン・ヘルゲランド
  音楽:ジョン・パウエル
  撮影監督:バリー・アクロイド
  編集:クリストファー・ラウズ
  美術:ドミニク・ワトキンス
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