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イントロダクション
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監督:北野武 製作年:2010年
大友組組長衣装:山本耀司 上映時間:109分
全員悪人
【イントロ】

北野武15本目の監督作品。「BROTHER」以来、約10年ぶりとなるヤクザ映画を作り上げた。過激なバイオレンスシーンや拷問シーンが数多く含まれるため、映倫でR15+指定を受けている。

凶悪な男たちの怒号が飛び交う「アウトレイジ」は、まさに「男」の映画である。世界のキタノは、十八番ともいえる凄まじいアクションとバイオレンスを描いている。ヤクザ映画といえば、組同士の抗争を描いた作品が多いが、本作はある1つの暴力団組織の中で繰り広げられる、激しい権力闘争を生き残ろうとするヤクザたちにフォーカスされている。

ヤクザ組織は生死と隣り合わせにある軍隊に似通っている。しかし、上司からの命令とか国の命令ならば個人的には行動でいない軍隊とはヤクザは根本的に違っている。個人が上からの命令にも反発したり、エゴを丸出しに好き勝手に行動する。考えようによれば、どこか人間臭く、その行動には必ず暴力が絡むので映画の題材としては面白い。体中に多大なストレスを抱えていようが、自分の思い通り動けないのは、日本のビジネスマンにも当てはまる。

どこの社会にもある上下関係。中間管理職、最下層の下っ端労働者、あるいは最高経営者。それぞれ悩みをもち、それは尽きることが無い。

そんな、誰もが共感できる人間模様を、ヤクザ社会というある意味極端にデフォルメされた舞台で描く娯楽性豊かなドラマに仕上がっている。

「アウトレイジ」で描かれた、自分の欲望をむき出しに戦うワルたちの姿は、組織にがんじがらめになって働く現代人に、小気味良い刺激を与えてくれるはずだ。

ヤクザの権力闘争を描いた「アウトレイジ」は、単なる暴力映画でも、ヤクザ映画でもない。社会の縮図を描き、純粋な痛みの中に、ところどころに笑いの要素も散りばめた「完全なるエンターテインメント・ムービー」と世界のキタノ監督は言う。

近年は、「TAKESHIS’」「監督・ばんざい!」「アキレスと亀」などのようなホワァ〜とした映画ばかりが続いていたが、キタノ監督の原点であるバイオレンス作品に戻ってきた。

当初からのキタノファンには懐かしくもあり、喜ばしいことだ。キタノ監督のバイオレンス作品には、彼独自の美学があり、絶妙の間がある。しかし、今回の作品は、かつてのキタノ映画に見られた静謐なムードは微塵もない。大量のセリフと怒号が飛び交うこの群像劇には、キタノ映画に初参加の俳優の顔触れが功を奏して、新鮮な「男の映画」の趣がある。

全員が極悪非道という設定だが、キタノ監督自身が演じる大友のキャラクターが特筆ものである。弱小組織の組長は、サラリーマンでいうならちょうど中間管理職のようなものだ。

上からは無理難題を押し付けられ、下に対しては何かと面倒を見て気を配らねばならない…なんともやるせない立場で、妙に哀愁が漂っている。俳優ビートたけしが演じる大友が凄むシーンは、迫力もあるが何となく微笑ましくもある。大友役を他の俳優でキャスティングするのは多分不可能である。

加瀬亮、三浦友和、椎名桔平のキャスティングも秀逸だ。特に加瀬亮は、今までのナイーブで草食系のイメージを払拭する、知性の中に狂気を秘めた凶暴な役柄を見事なキレッぷりで演じている。また、一本気なヤクザを熱演している椎名桔平のラブシーンは、当初は予定になかったようだが、彫り師がせっかく時間をかけて刺青を描いたにもかかわらず、ほとんど椎名の刺青シーンがなく、彫り師があまりにも悲しそうなので、ベッドシーンを追加したという監督の心優しいエピソードが残っている。

後に「考えてみれば、風呂場でもいいんだけどさ」と笑顔で語ったという…試写の後、彫り師がキタノ監督に感謝を伝えたことは言うまでもない。

 
【ストーリー&インプレッション】

巨大組織山王会本家の若頭・加藤は、傘下の池元組が対立する村瀬組と近づいていると聞き、池元組長に村瀬をしめろと命令する。だが、もともと池元はこうした嫌な仕事に手を出す気は無く、さらなる下部組織である大友組にすべて任せてしまう。

いつもこうした面倒事ばかり押し付けられる大友は、いいかげんうんざりしていたが、武闘派のメンツにかけ汚れ仕事を引き受ける。大友が村瀬組のポン引きに仕掛けた罠が拡大し、全面抗争に発展し、さらに池元の汚さにキレた大友は覚悟を決める…

その過程でもアフリカの外交官に大使館でカジノを開かせたり、大親分の関内が池元組の若頭に含みを持たせたりと、相手の弱みに徹底的に付け込んだり、アホな親分に嫌気がさしている子分の出世欲を刺激するなど、ヤクザの狡猾さに舌を巻く展開が連続する。やがては山王会本家をも巻き込む壮絶な下剋上の権力闘争へと発展し、その過程の中で大友組は一人また一人と殺されながら徐々に壊滅していく。

子分と親分、そして、その上の大親分までのすべてが腹に一物を持っている。

油断しているとハメられ、弱点を見せると付け込まれる。あらゆる計略が渦巻く中に、任侠や男気といった義理人情は微塵もない。

誰が悪党で、誰が本当の悪党で、誰が一番の悪党か…怒号が飛び交い、裏切りと駆け引き、ハッタリとだまし合い、銃弾と血がシュールなアートのように描かれ、男たちの凄惨なバイオレンスがスクリーンを彩る。

建前は上からの命令には絶対服従。失敗はすなわち死を意味する状況で、組織の結束と組員の忠誠心が問われていく。子分を信頼する親分がいる一方、我が身可愛さに子分を切り捨てる親分もいる。親分に命を預ける子分もいれば、先のない親分を見切る子分もいる。

金と権力というニンジンを目の前にぶら下げ、制裁という恐怖で尻を叩き、人間心理の裏を読んで荒くれ者たちを意のままに操る山王会本家の関内の深謀遠慮がクールであり、ある種の笑いを誘う。恫喝や腕っ節だけでなくヤクザも頭がよくないと人の上には立てない世の中なのだ。北村総一朗が、好々爺然とした外見とは裏腹にどす黒い陰謀を隠し持つ男を不気味に演じている。「踊る大捜査線」のとぼけた署長とは一味違う魅力をかもし出している。

思わず目をそむけたくなるような残酷シーンもあるが、殺すと決めて敵を追い詰めたあとは、いたずらにもてあそばずあっさりと止めを刺す、このあたりのさじ加減は絶妙である。

「アウトレイジ」は第63回カンヌ映画祭のコンペティション部門に選出された作品である。

「観る人が本当に痛いと感じるバイオレンス映画」の評判どおり、カンヌでの評価は賛否両論であった。残念ながらパルムドールは逃がしたが、世界のキタノの存在感は十分示した。

しかし、ヨーロッパの人間がこの映画を観て、どのような感想を抱くか興味津々である。マフィアとはまた違った「ヤクザ」の認識がどの程度あるのだろうか…

キタノ監督はフランス文化省から芸術文化勲章の最高章であるコマンドゥールを授与されている。ポンピドゥー・センターで特集上映が組まれ、3月からパリ市内のカルティエ現代美術財団主催の「BEAT TAKESHI KITANO GOSSE DE PEINTRE」(ビートたけし/北野武 絵描き小僧)においてはビートたけし/北野武氏による絵画・映像・立体、さらにアトラクションなど多岐にわたる内容の個展が開催された。初の自伝「Kitano Per Kitano」がフランスの出版社から出版されるなど、まさにフランスでは特別な日本人なのである。

フランスでのキタノ人気や評価は絶大だが、不思議と日本での興行成績には結びつかない。テレビドラマの映画化に負けてしまう現実は、何とも情けないような申し訳ないような気持ちに陥ってしまう。マニアックすぎるのだろうか…しかし、大衆に迎合するキタノ作品というのも、いただけない。

キャスティングの面白さ、ストーリーの単純さ。これでもかと言うほどの暴力オンパレードの強烈な獣同士のぶつかり合い。しかし、見終わった後のそこはかとないペーソスにキタノ映画の真髄を感じる。

 

キャスト スタッフ
大友(山王会池元組大友組組長):ビートたけし 監督:北野武
水野(山王会池元組大友組若頭):椎名桔平 製作:森昌行、吉田喜多男
石原(山王会池元組大友組組員) :加瀬亮 脚本:北野武
関内(山王会会長) :北村総一朗 音楽:鈴木慶一
加藤(山王会若頭):三浦友和 撮影:柳島克己
池元(山王会池元組組長):國村隼 編集:北野武、太田義則
小沢(山王会池元組若頭):杉本哲太 美術:磯田典宏
村瀬(村瀬組組長) :石橋蓮司 衣装デザイン:黒澤和子
木村(村瀬組若頭):中野英雄  
飯塚(村瀬組組員):塚本高史  
片岡(刑事):小日向文世  
大友の女 :板谷由夏  
水野の女 :渡辺奈緒子  
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