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監督:クリストファー・ノーラン 製作年:2010年
脚本:クリストファー・ノーラン 上映時間:148分
お前の頭へ侵入する。
【イントロ】

映画「インセプション」とは、人間の夢と潜在意識をテーマにしたSF映画である。インセプションは「物事の開始、発端」を意味する言葉で、本作の中では、他人の潜在意識に侵入し、その相手に別の思考を植えつけるという「ミッションネーム」として、このキーワードが使用されている。

メガホンをとったのは、今、ハリウッドでもっとも期待される監督、クリストファー・ノーラン。渡辺謙と組んだ「バットマン・ビギンズ」、マジシャンの攻防を描く「プレステージ」、そして「ダークナイト」で世界的に大ブレークしたことは記憶にも新しい。「正義が悪を裁く時代ではない」という、現代社会の裏面的構造を鋭く突いた脚本など、「バットマン」シリーズという娯楽作品の域を大きく飛び越え、当時の全世界歴代興行収入ランキングでも「タイタニック」についで第2位を記録。しかし、決して売れ線に走るワケではなく、挑戦的な姿勢を崩していないノーラン監督。「インセプション」を観る前に、彼の作品をもう1度チェックしておくのもいいかも知れない。

稀有な才能の持ち主である監督の下、レオナルド・ディカプリオと渡辺謙という人気と実力を兼ね備えた俳優と、将来を嘱望されるジョセフ・ゴードン=レヴィットとエレン・ペイジという若手演技派の二人もメインキャストに名を連れている。

「X-MEN ファイナル ディシジョン」でのキティ・プライド役や「JUNO/ジュノ」では、16歳で妊娠をしてしまった女子高生を好演し、20歳と335日という史上4番目の若さでアカデミー主演女優賞にノミネートされたエレン・ペイジは、「設計者」アリアドネという難しい役を見事に演じている。

そこに色気と演技力を合わせもつ美人女優マリオン・コティヤールが加わり、ノーラン監督作品には欠かせないマイケル・ケインも、しっかり出演。少しだけ出てたルーカス・ハースはレオの親友枠での出演かも…そんな豪華な出演陣は、皆素晴らしい演技を披露している。

また、レオにインセプションされるロバート役のキリアン・マーフィー。彼は「バットマン・ビギンズ」と「ダークナイト」にも出演しており、ノーラン監督のお気に入りの俳優の1人であることに間違いない。

この作品は、ノーラン監督が幼い頃から構想を練っていたというテーマで、脚本も本人が手がけている。自らの頭の中で組み立てた物語を、ブルースクリーンを一切使わずにここまで映像として完璧に表現できる彼は、間違いなく超一級の映画監督だ。

その圧倒的なまでの映像とスケールは息を呑む。しかし、何と言ってもストーリーの斬新さと現実と非現実の境界の表現力の素晴らしさである。そして、非常に難解な内容で、ストーリーに追いつけない観客も少なくない…かも。

鑑賞前日には十分な休養をとって、1シーン、1つの台詞も見逃さない覚悟で、真剣に観ないと作品の真意を理解するのは至難の業である…という、コメンテイターもいるが、少しだけ前知識を入力しておけば、比較的理解しやすいかも知れない。

まず、この作品における夢の世界を、対象個人の脳に侵入するようなイメージで捉えてはいけない。あえて言うなら、パソコンでいう共有フォルダのようなものと解釈すればわかりやすい。本人も、侵入者たちも、互いに影響を与え合うことができるようである。

作品の中でも説明はあるが、知っておけば役に立つ事柄として、「夢の中で死ねば、目が覚める。」「強い睡眠薬によって誘導された深い眠りの場合、夢の中で死ぬと、現実の世界の肉体は『リンボ』と呼ばれる『天国と地獄の中間の場所』に行き、つまり、肉体が滅びるまで植物人間状態になってしまう可能性がある。」「それを防ぐには、仲間が水をぶっかけるなどして強制的に目を覚ます。」「現実世界での感触を知る独楽やサイコロを常に持ち歩き、今いる場所が夢か現実かわからなくなったら、それを使って確かめる。」最低限、これくらいを知っておけばかなり楽になるはずだ。

次に夢に入る時の前情報…夢の世界が多重構造になっている点が案外ややこしい。最初の夢がレイヤー1、レイヤー2は、最初の夢の中でもう1度見る夢。レイヤー3はレイヤー2の中でまた夢を見るという具合に階層が深くなっていくという感じである。

夢のレイヤーが深くなればなるほど、夢の中の時間の進み方は早くなる。およそ、現実の時間が1分とすれば、レイヤー1では20分、レイヤー3では1200分(20時間)というような計算になっている。

スクリーンの中は、今はどのレイヤーなのかと一瞬戸惑うかも知れないが、夢の各階層で展開される激しいアクションやドラマの同時進行は、それ自体に迫力があって見応えがあり、十分に楽しめるようになっているのでご安心。

「インセプション」の多重性はストーリーだけではない。映像もSFXで生み出したシュールな場所や、大自然の中でのロケ、街中のアクションといった多様性がある。スローモーションとSFXを効果的に使い、また音響効果も素晴らしい。何と言っても、制作費1億6000万ドル(約145億円)の大作なのだ。

148分と比較的上演時間が長い作品ではあるが、むしろ、短く感じるほどである。最初から最後まで高密度の実によく出来た映画である。映画好きには堪らない作品になることだろう。また、観賞後には、この作品を観た人と映画について語りたくなる作品だ。

 
【ストーリー&インプレッション】
※ネタバレ的内容が含まれております。映画を観るまでは読まないほうがいいかも…

他人の夢から深層心理に侵入し、アイデアの段階で企業秘密を盗み出す企業スパイ「extractor(エクストラクター)」のドム・コブは、名実ともに業界ナンバーワンの腕を持っているが、昔、最愛の妻モルと夢の中へ幾度となくダイブし、潜在意識の深い階層で妻と二人きりの時間を楽しんで暮らしていたが、やがて現実と夢の判別がつかなくなったモルは自殺し、さらにコブは妻殺害の容疑をかけられ、今では家に2人の子供を残しての逃亡生活を余儀なくされていた。

ある日、大企業の経営者サイトーへの侵入中、本人の強力な精神的抵抗の前に敗れ去る。だがそれは、最初からサイトーが仕組んだ「テスト」であった。類まれな能力を認められたコブは、サイトーからかつてない難解なミッションを依頼される。

依頼主のサイトーが彼に課したミッションは、ライバル会社の解体と、それを社長の息子ロバートにさせるようアイディアを植えつける「インセプション」だった。

インセプションは彼の得意とするアイデアを盗むミッションではなく、他人の潜在意識に別の考えを植えつけるという難度の高いミッションで、ほぼ不可能だと言われていた。しかし、インセプションに成功すれば、コブの容疑を晴らし、無事アメリカに帰国出来るようにするという条件で、コブはこれを最後の仕事と決め、引き受けることにした。業界トップの類稀な才能をフルに発揮し、万全の準備をして最後のミッションに挑む。成功すれば究極の完全犯罪である。

まず手始めはチーム編成だ。コブは相棒のアーサー以外に、夢を構築する「アーキテクチャー」のアリアドネ、自分の姿を別人に変えられる「偽装師」イームス、そしてターゲットをより深く眠らせる薬を調合する「薬剤師」ユスフをスカウトする。サイトーを加えたコブのチーム計6人は、おそらく世界で一番長いと思われるシドニー〜ロサンゼルス間のフライト中、ファーストクラスの個室でターゲットであるロバートの夢の中に潜入を開始する。

首尾よくロバートの夢の中に潜入したコブ達だったが、直後に手練の兵士たちによって襲撃を受けてしまう。これはロバートが企業スパイに備えて潜在意識の防護訓練を受けており、護衛部隊を夢の中に投影させていた為であった。インセプション成功の為に更に深い階層の夢へと侵入していくコブたち。次々と襲い来るロバートの護衛部隊に加え、コブの罪悪感から生み出されたモルまでもが妨害を始める。さらに曖昧になる夢と現実の狭間、迫り来るタイムリミット…

飛行機内で目覚めたロバートとチーム・コブ。顔を見合わせるメンバーには笑顔が…自宅に戻り、愛する子供達の顔をやっと見ることが出来たコブ。

チームの1人、夢の「アーキテクチャー」アリアドネは、ギリシャ神話では、迷宮からの脱出に糸玉を使うことを教える女性の名前である。この作品では、難問を解決する鍵「アリアドネの糸」として、現実に戻るために自分だけが感覚を知る小さなコマ。現実の世界では重力のため止まるが、夢の中ではまわり続けるコマが、止まりそうになりながらも回り続けているエンディングが用意されている。この判断は観客に委ねるというラストが、いつまでも余韻となって残る。

手首にケーブルをつないでターゲットと一緒に眠り、夢を「共有」するという発想が面白い。初めはターゲットが見る夢に「潜入」するものと思っていたが、コブ達の「設計」した夢にターゲットを招き入れているという感覚である。夢の中でまた夢を見るという発想も斬新である。そして、複雑で難解な展開になってくると、途中で必ず「?」という瞬間が訪れる。瞬時に頭で理解しようとしても、混乱してしまうこと必至。この感覚は、昔「バック・トゥー・ザ・フューチャー」を初めて観たときに感じた「あれっ?」っていう感覚に近い気がする。考えすぎると迷宮に迷い込む。

この映画の中では、もはや夢と覚醒の境界線は曖昧になり、夢の中の夢…また、その夢の中の夢という恐ろしく複雑でスケールの大きな構成に、主人公が軸足を置いている現実でさえ夢なのではという疑問にさらされる。もはや壮大なだまし絵の世界に近い。時間も空間も歪み、重力さえなくなる夢の情景を描いた映像は細部にまでリアリティが宿り、圧倒的な情報量は視覚的表現の可能性のさらなる進化を実感させてくれる。

この作品でキーポイントになるのがコブの妻モルも存在である。彼女はコブと夢をシェアし、およそ50年間を過ごした結果、夢の中の幸福を真実と信じ込むようになった。現実に帰りたくないというモルの潜在意識に、コブは「現実に戻らなければいけない」とインセプションしていたのだ。

ところが現実に戻ってもなお、モルはそこが現実の世界だと信じることが出来ず、現実に戻ろうとして窓から飛び降り自殺をした。モルの死がトラウマとして残るコブは、任務の途中に度々モルに邪魔をされ、窮地に陥る。亡霊のようにつきまとっていたモルの姿は、実はコブ自身が抱いている自分への憎しみの投影でもあった。他者の夢をコントロールする男が、己の罪悪感に振り回されるアイロニーが、この物語を奥深くしているようだ。家族と過ごした美しい思い出と、後戻りできない人生、意識の深層に潜む「願い」があまりにも切ない。

夢の中で死にかけている仲間を救うために自らの身を危険にさらしたコブが、モルの死に対する贖罪を果たしたと納得して作り出した「コマが回り続ける世界」なのかも知れない。

人は知らぬ間に夢に入りこんでいる。ここからが夢だとわかる夢はない…

 

キャスト スタッフ
ドム・コブ:レオナルド・ディカプリオ 監督:クリストファー・ノーラン
サイトー:渡辺謙 製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
アーサー:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット 脚本:クリストファー・ノーラン
モル・コブ:マリオン・コティヤール 音楽:ハンス・ジマー
アリアドネ:エレン・ペイジ(アーキテクチャー) 撮影:ウォーリー・フィスター
イームス:トム・ハーディ(偽装士) 美術:ガイ・ヘンドリックス・ディアス
ユスフ:ディリープ・ラオ(調合士) 製作総指揮:クリス・ブリガム
ロバート・フィッシャー:キリアン・マーフィー  
ピーター・ブロウニング:トム・ベレンジャー  
モーリス・フィッシャー:ピート・ポスルスウェイト  
ナッシュ:ルーカス・ハース  
マイルス教授:マイケル・ケイン  
ブロンド女:タルラ・ライリー  
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