相棒 劇場版U
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サロゲート
バレンタインデー
インビクタス/負けざる者たち
2009年の総括
イントロダクション
CINEMA Oh! PLEASE Top
監督:和泉聖治 製作年:2010年
製作総指揮:早河洋 上映時間:119分
この事件、特命係にとって致命傷。
あなたの正義を問う。
【イントロ】

テレビ朝日系の人気刑事ドラマシリーズ「相棒」の劇場版第2作である。「相棒」が土曜ワイド劇場での放送開始から10周年を迎えたことを記念して製作され、その放送10周年となる2010年6月3日に「Season9」放送決定のアナウンスと同時に本作の公開が発表された。また、2010年12月22日に放映された「season9」第9話では、映画とリンクしたストーリーとなっており、映画の事件の直前の状況にも触れられている。

2008年には映画「相棒 劇場版 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」で、興行収入44.4億、観客動員数のべ370万人を動員し、上半期興行収入No.1を記録した。今回の脚本は「相棒」の生みの親である輿水泰弘と前作を大ヒットに導いた戸田山雅司の2人が担当している。そして、前作に続いてメガホンをとるのは、スタイリッシュでスピーディーな演出に定評のある和泉聖治監督だ。

「相棒」は、特命係の水谷豊扮する杉下右京が、亀山薫(寺脇康文)を相棒として様々な事件を解決する作品で、紅茶好きの変人・右京と熱血漢の亀山の絶妙な掛け合いが大きな魅力だった。しかし、亀山は2008年12月17日に放映された「亀山薫 最後の事件」で警視庁を退職する。その後、右京一人だけの特命係を経て、及川光博が演じる神戸尊が新たな相棒になった。

知性派の右京と肉体派の亀山という対照的な名コンビの印象が強いために、新たな相棒は難しい役どころであった。新たな相棒が第二の亀山薫になるだけであったならば、これまでの亀山ファンからは「寺脇康文の方が良かったのに…」と、ブーイングされることも予測されるが、そもそも「ミッチー」の愛称で親しまれ、「王子」を自称している及川には、亀山のような猪突猛進型刑事のキャラは似合わない。

ドラマ「season 8」で神戸尊が相棒になった目的は、警察上層部の命で右京をスパイするためであった。そのために当初の神戸は、上層部の意に反してでも真実を追求する右京を醒めた目で見る、シニカルな役回りであった。それが右京と接することで変わっていくが、基本的にはキザな頭脳派である。推理では右京が数段上手であり、神戸はシャーロック・ホームズに対するワトソン博士のような役回りが多かった。ただ、「劇場版U」では事実を隠蔽する警察組織に激しい怒りを示し、冷静な右京と好対照を示した。

そもそも、どうして「特命係」が誕生したのか…事の発端は、小野田警察庁長官官房室長が警視庁公安部参事官時代に、外務省公邸人質監禁・篭城事件に対応すべくプロジェクトチーム「緊急対策特命係」を結成、その参謀が杉下右京だった。人質の救出方法で右京と対立した小野田は、自身の判断ミスで部下と人質に死者を出してしまう。しかし、上層部の判断により、責任は窓際部署「特命係」への封じ込めという形で右京1人に押し付けられたのだ。つまり、「特命係」の誕生、並びに現状に至る原因を作った張本人は小野田官房長なのである。

何度か廃止された「特命係」の復活に関与したりするなど、基本的には特命係を支援しており、廃止したがる内村を諭して処分されない様に手を回しているが、たまに味方なのか敵なのか分からない行動をとることもある喰えない男で、「特命係」を自分の手足、はたまた趣味のために利用している側面もある。

不思議な存在感を醸しだす小野田官房長を筆頭に、「相棒」の良さは、登場人物のキャラ設定が見事という点にある。杉下&神戸による相棒コンビの濃いキャラは言うに及ばず、2人を基本は裏からバックアップするキモカワオタクな鑑識課・米沢、時には熱い「トリオ・ザ・捜一」伊丹・三浦・芹沢の面々、特命を徹底的に嫌う内村刑事部部長と中園刑事部参事官、権力構造の中で信念を貫かんと身を焦がす大河内監察官、「花の里」の女将で元妻の宮部たまき、「暇か?」が口癖の角田課長など、実力派俳優達の演技アンサンブルが本当に魅力的に描かれている。

今回の作品もそれぞれのお馴染みキャラは健在で、スクリーン狭しと活躍する。知的キャラである杉下右京がフィジカルに活躍するシーンや、神戸尊の正義感が爆発する激高シーンなどは、映画ならではの特別サービスかもしれない。

10年という歳月をかけて、ほどよく熟成させてきた「相棒」の世界観は、観るものに安心感を与えるが、常に進化を続け、時に驚きを、時に不安と期待を抱かせる。

映画だからと妙に気負うこともなく、テレビでやっているのとほぼ同じ規模のストーリー展開で、登場人物のちょい豪華さとアクションシーンの迫力を多少増量するという味付けの作り方が大人の映画という感じである。この何とも渋い肩の力の抜けた制作意図が功を奏し、いつもの推理プロセスの伏線もばっちり効かせ、丹念に辿る描写展開も忘れず、大人に通用するエンターテイメント作品に仕上がっている。

杉下右京を演じる水谷豊の当たり役は多い。1974年に日本テレビのドラマ「傷だらけの天使」で、萩原健一に対して「兄貴ぃ〜」と呼び掛けるセリフが当時有名になり、リーゼントのチンピラ役アキラを好演したことを覚えているのはけっこうの年配者に限られるが、一生風靡した役柄であった。そして、1978年10月には、最高視聴率46.7%をたたき出した伝説のドラマ「熱中時代(教師編)」の主演で大ブレイクし、視聴率の取れるTV界の大スターとなった。

「熱中時代」までの水谷は棘や影のある青年やチンピラなどの役で出演する事が多かったが、この作品で、水谷自身がそれまで根付いていたイメージを払拭させた。主人公北野広大の特徴的な訛りのある口調が流行となるなど、一気にファンの幅を広げた。この人気を受けて「熱中時代」のタイトルだけを継承し、設定を一新した「熱中時代(刑事編)」もその後放送され好評を得た。ちなみに、後に共演する寺脇康文は「熱中時代」の時の水谷のモノマネが得意なほどの水谷ファンである。

その後、「刑事貴族」や「ハローグッバイ」、「探偵事務所」シリーズでは、シュールでスピード感のある破天荒かつ調子のいい二枚目半的な役を演じていた。また、「事件記者チャボ!」の記者役においては、地方が舞台のケースが多く、刑事役においては、ロンドン在住経験やイギリス車を重用、さらにはロンドン警視庁での研修勤務経験があることなど、何らかの形でイギリスと関わりのある設定が多かった。

余談ながら、もともと水谷はコーヒー派だが、「相棒」での演技をきっかけに紅茶を嗜むようになり、右京役として毎回紅茶を飲んでいるが、ティーポットのお茶を肩の高さから手元のカップに注ぐ優雅な仕草は、実際の撮影ではしばしば飛び散る紅茶による火傷を我慢しているという。また、右京役で紅茶を飲むようになり、紅茶の美味しさに目覚めたと語っている。撮影中に飲んでいるのは、アールグレイやダージリンが基本で、たまにフレーバーティーを飲んでいるらしい…

また、親友であった松田優作とは、互いを「優作ちゃん」「豊ちゃん」と呼び合い、二人で旅行に行ったり、互いの主演番組にゲスト出演するほどの仲であったようだ。少々ドジでお茶目な性格で、寝ながらくしゃみをして肋骨を痛めたり、自宅のドアにぶつかって顔に7,8針を縫う怪我をしたこともあるという。

たまに出演するバラエティ番組や歌番組でみせる気さくな性格が万人受けし、今では老若男女のファンから支持を得ている水谷豊である。

 
【ストーリー&インプレッション】

日本警察の要所・警視庁本部内で、前代未聞の人質籠城事件が発生した!

人質は、田丸警視総監、長谷川副総監をはじめとした、各部の部長ら幹部12名。現場となった会議室は機動隊と特殊捜査班SITによって完全に包囲されるが、犯人の動機は不明。要求もないまま、いたずらに時間が過ぎていくのだった。

いち早く事件に気づいたのは、偶然にも犯人の男と遭遇した神戸尊とその連絡を受けた杉下右京。右京は会議室内の様子を把握することが肝心と、鑑識の米沢守や元特命係の陣川公平の協力を得て、誰も予想しなかった奇策に出る。

内村刑事部長ら幹部たちが囚われているため、実質的トップの立場になった中園参事官が捜査本部の指揮をとることになった。しかし、一向に進展しない事態に、捜査一課の伊丹憲一、三浦信輔、芹沢慶二らは苛立ちを募らせるばかり。

と、そこに右京が持ってきた情報によって、籠城犯が元警視庁刑事の八重樫哲也だと判明。にもかかわらず、捜査の外に追いやられてしまう特命係の2人だったが、籠城前に尊が八重樫から助け出した女性が総務部装備課の朝比奈圭子だとつきとめた。

そんな時、緊迫する会議室内から2発の銃声が響いた!

右京の強固な反対にも関わらず、中園らの指示でSITと機動隊員たちが会議室内に強行突入。事態は何とか終息し、人質たち12名は無事に保護される。だが、籠城してまで八重樫が求めたものが何だったのか、大河内監察官の事情聴取に対しても、12名は曖昧にしたまま何も証言しない。皆が一様に口を閉ざすことに疑問を持った右京と尊は、角田課長らの協力を得て、独自に幹部たちへの聞き込みを始める。


一方、事件の報告を受けた警察庁幹部の小野田官房室長は、金子警察庁長官とともに、不穏な動きを見せ始めていた・・・。徐々に明らかになってくる事実。それは、八重樫や圭子が関わっていた過去の大きな事件に関する、衝撃の真相だった…。

冒頭シーンでは、公安が中国系マフィアのアジトである船舶に強行突入するところ始まる。突入は、マフィア側が自爆を敢行したことにより、マフィアの人間3人と公安の警察官1名の死という結末で表面的には決着するが、これが今回の「相棒」で発生する警視庁占拠事件の発端となる事件なのだ。

最初の映画版「相棒」は、マラソン大会を人質に取った脅迫事件の陰に隠された、ある親子の復習劇であり、テレビドラマとは比較的離れた時系列の物語である。テレビとは複雑に絡み合うようなことはなく、設定や登場人物は同じで、「相棒」という世界観を踏襲した1つの物語であった。しかし、今回の「劇場版U」は、前回と異なり、なかなか趣向が凝っている。言ってみれば、テレビシリーズの中に組み込まれた1つの長編作品的要素を含んでいるのだ。古くからの「相棒」ファンは、驚愕の展開に一瞬「あれっ…」と思うはず。

今後の「相棒」に大きな影響が出てくる内容で、これからのテレビドラマの行方がかなり気にかかる。余談ながら、次回のテレビドラマでは、レギュラー陣の入れ替えや人事異動みたいなものがあるのだろうか…と、訝ってしまう。ま、「相棒」のことだから、なるほど!という着地点を用意していることだろう。

警察内部の汚職や人間関係を描く映画は、警察といえども1つの縦社会組織であることと、それぞれの駆け引きや立場を浮き彫りにすることでスリリングなドラマに仕上がる。それと同時に、譲れない正義を貫くことで感動を引き出していく。何より、国民を守るべき立場にいるものが、法や人命をないがしろにする様は、単なる犯罪ドラマとは比べ物にならない衝撃がある。しかし、どのポジションから「正義」を問うかによって、様相はガラリと変化する。また、人は各々守るべきものが違うものである。






明らかに虚偽内容の上申書が通ってしまい、「悔しい」と嘆く神戸。これに対し、右京は「悔しいじゃない。怪しいですよ」と切り返す。日本社会には不正と欺瞞が溢れており、多くの人々は不正に直面して「悔しい」で終わってしまうのが常。これが不正のなくならない大きな要因である。これに対し、右京は「怪しい」と考え、粘り強く真実を追求する。この作品では、神戸の熱い正義感が右京の秘めた正義感を引き立てる見事なシーンとして描かれている。

ラストで、右京が彼なりの決意で正義を語るその言葉を聞けば、神戸が右京という人間そのものに惹かれて自ら特命係に残った理由が理解できる。単純な勧善懲悪ではなく、組織の片隅にいながらも、自分なりの方法で正義を行おうとする人間を描くところに、この作品の「大人」感があるのかもしれない。

そもそも「相棒」の大きな魅力は、時には組織の腐敗や社会の矛盾を深くえぐり、時には犯罪に走る人間の滑稽さをコミカルに描き、その懐の深さが単なる刑事ドラマにとどまらないところにある。

もちろん、右京を取り巻く人間関係の描き方や軽妙洒脱な会話の面白さも群を抜いている。それらの要因が相まって、腰を据えて楽しめる作品を待望する昨今の「本物志向の大人達」を満足させるドラマに仕上がっているのだ。今作は、その全ての要素が詰まった集大成の作品となっている。

 

キャスト スタッフ
杉下右京:水谷豊 監督:和泉聖治
神戸尊:及川光博 製作総指揮:早河洋
伊丹憲一:川原和久 監督補:東伸児
三浦信輔:大谷亮介 エグゼクティブ・プロデューサー:平城隆司
芹沢慶二:山中崇史 企画:桑田潔
角田六郎:山西惇 製作:神山郁雄、鈴木武幸、水谷晴夫、大西豊、脇坂聰史 他
米沢守:六角精児 プロデューサー:松本基弘、上田めぐみ、伊東仁、香月純一 他
内村完爾:片桐竜次 脚本:輿水泰弘、戸田山雅司
中園照生:小野了 撮影:会田正裕
陣川公平:原田龍二 美術:近藤成之
大河内春樹:神保悟志 装飾:山岸正一
宮部たまき:益戸育江 照明:大久保武志
朝比奈圭子:小西真奈美 音楽:池頼広
八重樫哲也:小澤征悦 録音:舛森強
磯村栄吾:葛山信吾 編集:只野信也
松下伊知郎:名高達男 音響効果:佐々木英世、西村洋一
小野田公顕:岸部一徳 選曲:藤沢信介
長谷川宗男:國村隼 助監督:安養寺工
金子文郎:宇津井健 スクリプター:唐崎真理子
田丸寿三郎:品川徹 制作担当:金井光則
李華来:江波杏子 ラインプロデューサー:今村勝範
曹良明:本宮泰風 音楽プロデューサー:津島玄一
磯村幸恵:丘みつ子 宣伝プロデューサー:孤島健二郎
飯島政史:小木茂光 アソシエイトプロデューサー:高野渉、山田兼司
鈴木光彦:大森博史 共同プロデューサー:遠藤英明
原子嘉和:大出俊  
寺門宗佑:佐々木勝彦  
井手実篤:井上高志  
鶴岡小太郎:佐渡稔  
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