コンテイジョン/Contagion
マネーボール/Moneyball
キャプテン・アメリカ
/ザ・ファースト・アベンジャー
ワイルド・スピード MEGA MAX
猿の惑星:創世記(ジェネシス)
世界侵略:ロサンゼルス決戦
The Mechanic/メカニック
トランスフォーマー
ダークサイド・ムーン
ハリー・ポッターと死の秘宝
PART2
アイ・アム・ナンバー4
SUPER8/スーパーエイト
スカイライン -征服-
X-MEN
ファースト・ジェネレーション
パイレーツ・オブ・カリビアン4
生命の泉
ブラックスワン
アンノウン
エンジェル ウォーズ
SP 革命篇
ツーリスト
RED
ウォール・ストリート
グリーン・ホーネット
ソーシャル・ネットワーク
バーレスク
アンストッパブル
2010年度のバックナンバー
監督/脚本:スティーヴン・アンティン 製作年:2010年
音楽:クリストフ・ベック 上映時間:119分
この声で、夢への扉を開けてみせる。
【イントロ】

「バーレスク」とは本来、歌や踊り、寸劇などを組み合わせた大衆演芸を指す単語である。アメリカではストリップなども含むボードビル全般を指す言葉と理解されているらしいが、この作品の中で登場する台詞に「バーレスク・クラブは、ストリップなんかじゃない!」と、酔客を相手にするセクシーだけが売り物のクラブではないと、きっぱりと一線を画している。ギリギリのセクシーだが、上質のパフォーマンスと夢を提供する場所。それが、この作品の舞台「バーレスク」なのである。

全世界トータルセールス3000万枚、グラミー賞4部門受賞の歌手クリスティーナ・アギレラが映画初出演。

そして、共演は同じくグラミー賞受賞歌手であり、「月の輝く夜に」でアカデミー主演女優賞を受賞したシェールが「ふたりにクギづけ」以来約7年ぶりの映画出演。世界のショウビズ界を代表するディーバの豪華共演である。

クリスティーナ・アギレラは、露出度が高く派手でセクシーなメイクや衣装が特徴だが、シンガーとしての実力も評価が高い。デビュー前はNFLやMLBの試合前の国歌を歌ったり「Mickey Mouse Club」のショーに出演していた。1999年にアルバム「クリスティーナ・アギレラ」でデビューを飾ると、これが全米1位を獲得し、グラミー賞を受賞。同アルバムからのシングル「ジニー・イン・ア・ボトル」、「ホワット・ア・ガール・ウォンツ」、「カム・オン・オーヴァー・ベイビー」も全米1位を獲得し、大きな人気を得た。2002年にセカンドアルバム「ストリップト」をリリースすると、ここからもシングル「ビューティフル」がグラミー賞を獲得。その4年後に発表したアルバム「バック・トゥ・ベーシックス」は米・英で1位を獲得し、ヒットした。

2005年に作曲家のジョーダン・ブラッドマンと結婚し、現在は1児のママである。ちなみに、2010年10月に夫との別居を公表している。

シェールの本名は、シェリリン・サーカシアン・ラ・ピエー(Cherilyn Sarkasian La Pier)。アカデミー賞とグラミー賞という映画界と音楽界の頂点の賞を手中に収めている。エキゾチックな顔立ちであるが、ハリウッド女優であった母親がチェロキー・インディアンの血を引いているという。現在60歳半ばになるが、今回の作品でも抜群のスタイルを披露している。

2人の歌姫の存在感は言うまでもないが、「バーレスク・クラブ」の舞台監督・ショーン役のスタンリー・トゥッチの存在感も良い味をかもし出している。「プラダを着た悪魔」で、鬼編集長の右腕とも言うべきオネエ系のファッションディレクターの好演は記憶に新しいところだ。

スタンリー・トゥッチは、イタリア系アメリカ人の家庭に生まれ、父親は教師、母親は秘書及び作家である。姉妹のクリスティーンも俳優で、従兄弟のジョセフ・トロピアーノは脚本家として活躍している。1996年にはジョセフ・トロピアーノ脚本の「シェフとギャルソン、リストランテの夜」を友人で俳優のキャンベル・スコットと共に監督している。


1998年のテレビ映画「Winchell」でエミー賞、ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞し、2004年のアメリカ版「Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?」では、竹中直人の役を見事に演じ、大喝采を得た。独特の風格?のスタンリー・トゥッチが1960年11月11日生まれということは、私より6歳も年下だということに、何となく複雑な気持ちである。

この手の映画でよく引き合いに出されるのが「ショーガール」である。ちなみに、「ショーガール」は、アメリカで劇場公開時に過激な暴力シーンや性的シーンが問題となり「NC-17指定」で公開された。そして、「暴力とセックス」というアメリカショービジネス、ひいてはメディアの暗部を、ストリップ・ダンサーという題材で露骨な悪意を込めて描いたため、観客の総スカンをくってしまったのだ。結局、1995年のゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)で10部門ノミネートされ、最悪作品賞・最悪監督賞・最悪主演女優賞・最悪新人俳優賞・最悪脚本賞・最悪主題歌賞の6部門制覇(後に2000年の特別賞である1990年代最悪作品賞も受賞)という偉業を達成した、ある意味伝説的な凄い映画である。


恐怖映画「スクリーム」の劇中で、犯人が「この世で最も怖いホラー映画は?」と学生に尋ねるシーンで、その学生は「ショーガール」と答えた。これは「ハリウッドでこんな最低な映画を作ってしまう事が何よりもホラーだ」という、製作者の「ショーガール」に対する皮肉が込められているようだ。

「バーレスク」は、エロも暴力もなく、そして珍しいことに標準的な悪者が存在しないという、ひじょうに健全な作品に仕上がっている。若い恋人同士が一緒に観ても、「や〜ね…」ってなことにはならない映画だ。クリスティーナ・アギレラの迫力あるボーカルやショーアップされたダンスシーンが画面いっぱいに躍動する絢爛豪華なステージは、映画館の客席でいることを忘れてしまい、「バーレスク・クラブ」のお客になったような錯覚に陥ってしまう。





映画鑑賞後には、最寄のCDショップに立ち寄り、サントラ盤CDをつい買ってしまいたくなるほど、全編に流れる音楽はどれもが素晴らしい。

一般的なミュージカル映画にあるような、突然、台詞の代わりに歌いだすというような違和感もなく、全米ナンバーワンを目指すというような荒唐無稽な展開もなく、身の丈にあったサクセスストーリーというところが、ひじょうに好感の持てるエンターテイメント作品である。

クリスティーナ・アギレラとシェールという本物のパフォーマーが、観客すべてに本物の感動を伝えてくれる。最初からエンディングまで、スクリーンに釘付け状態になることは間違いない。

 
【ストーリー&インプレッション】

アイオアでウェイトレスをしているアリ・ローズが、歌手になりたいという夢を叶えるため、片道切符を買ってロサンゼルスにやってくるところから幕を開ける。

そこで彼女の心を奪ったのは、経営難に喘ぎながらも歌手兼オーナーのテスが手がけるゴージャスなショーで毎夜観客を魅了する「バーレスク・クラブ」だった。ここで働きたいと願うアリを最初は認めなかったテスだが、アリの情熱に負け、とりあえず、ウエイトレスとして雇うことに…


アリは努力し、やがてステージに立てるようになるが、残念ながらアリの得意な歌よりもソフトなストリップの要素を含んだダンスがメインであり、歌は全然重要視されなかった。アリが初めて「バーレスク・クラブ」に足を踏み入れた場面で、ダンサーのニッキが「紳士は金髪がお好き」のナンバーをまるでマリリン・モンローとジェーン・ラッセルそっくりに歌っていたが、それは実はモンローとラッセルの歌のCDに口パクで合わせているだけだったのだ。このクラブに来る客は、オールディーズの歌手の歌声にのせてダンサーがショウを見せること目当てに来るのであり、歌は重要ではないときっぱり言われる始末。




しかし、アリのショーは徐々に人気が出てくるようになり、それまでトラブルメーカーだが花形ダンサーだったニッキの立場を脅かす存在となっていく。

そして、ある夜、ニッキの代わりにアリがステージに上がることになる。当然面白くないニッキは、アンプからコードを引き抜き、音を止めてしまうという暴挙に出る。無音ステージのトラブルを乗り切ったのは、アリの奇跡的なアカペラの歌唱力だった。最初の数秒で「バーレスク・クラブ」の中にいる全員の心を魅了した瞬間から、アリはクラブの看板スターへの階段を駆け上っていく。

日々盛況が続く「バーレスク・クラブ」だったが、借金の返済が滞っており、立退きの期限が刻一刻と迫っていた。クラブの運命やいかに…

ってな、分かりやすいメインストーリーがあり、ちょっとした定番のラブロマンスがあったり、アリにちょっかいを出してくるクラブの買収を目論むイケメン不動産王が登場したり、アリとテスの疑似母娘関係があったりと、なかなか賑やかな肉付けがされている。

アリはテスとの初対面の場面では、テスに向かって「Yes Mum」と言って、テスに嫌な顔をされるシーンが用意されている。日本語字幕では「イエス・マダム」となっているのだが、これはマダムを縮めたマムと、母親の意味のマムのダブルミーニングになっているようだ。母を7歳の時に亡くしたアリは、テスの持っている大きな母性を直感で感じ取り、自然とマムと答えたと思われる。そして、化粧の仕方を知らないアリに、テスが自分のアイライナーを与えて「母親に教わらなかったの?」と問いながら化粧を教えていく場面は、けっこうグッとくるシーンでもある。

アリが「バーレスク・クラブ」のダンサー兼歌手として栄光の階段を上っていくミュージカルシーンは、すべて客席にゲストを配置し、アリが徐々にダンサーとしてプロ級のテクニックを身につけていくまでの過程を上手くモンタージュしている。そして、テスがソロで歌う場面は、観客が誰1人いない閉店後の舞台上でのリハーサルシーン。自分の力のみに頼って生きていく女性の孤独をハスキーな声で歌い上げるテス(というより、シェール本人)の姿は、いぶし銀的魅力全開である。アリの華やかさなステージや煌びやかな衣装との対比は、まさに対極の位置にあるような粋な演出が効果的である。そして、どちらも迫力満点で、2人の歌姫が持つオーラがガンガン伝わってくる。

素朴なラブロマンスのお相手は、クラブスタッフのジャック。ある理由でジャックの部屋に居候状態になるアリだが、彼のことはずっとゲイだと勘違いしていた…な〜んて件は、エンターテイメントやファッション業界の世界では何も珍しくない状況をよく表現している。で、このジャックという男もなかなか良いヤツなのである。お決まりのトラブルはあるものの、ドロドロしたところがなく、サラッとしたテイストなのだ。決して色恋沙汰がメインのテーマでないことがよく分かる演出だ。


そして、アリにちょっかいを出し、クラブ買収を狙う若き不動産王マーカスの存在は、本来ならバリバリの悪役として登場してもちっともおかしくないはずのポジションなのだが、結局そんなに悪くない、ただ「バーレスク・クラブ」好きで可愛いネエチャンに目がないというだけの、けっこうちゃんとしたビジネスマンなのである。で、最後にクラブのピンチを救うアリのアイデアのヒントまでちゃっかり教えているのだ。もしかして、こいつが一番の善玉か…って、思えてしまう。


退廃的なナイトクラブが題材なのに、全然エロティシズムも頽廃した雰囲気も感じられないので、肩透かしを食らってガッカリする人もなかにはいるかもしれないが、極彩色飛び交う華麗なステージの興奮と神懸り的ボーカルの秀逸さを堪能できることは間違いない。

音が消え、静まり返った「バーレスク・クラブ」に、クリスティーナ・アギレラのアカペラが響き渡った瞬間、きっと体全体にゾワ〜っとした、いや、全身が落雷に打たれたような衝撃を受けることだろう。

そして、ひじょうにシンプルだけど、物凄い感動を覚えるはずである。作品の冒頭からアリの歌上手は披露されているのだが、すべてがこのシーンのための前フリであるかのような演出は心憎いばかりだ。いつかいつかと待たされて、そしてしばらくの静寂の後に、まさに「きた〜」という感じである。このシーンを観るだけでも価値があるというものだ。

何も考えず、「バーレスク・クラブ」の豪華なショーを楽しんで欲しい。これは、見逃しては損する作品だ。

 

キャスト スタッフ
アリ:クリスティーナ・アギレラ 監督:スティーヴン・アンティン
テス:シェール 製作:ドナルド・デ・ライン
ニッキー:クリスティン・ベル 製作総指揮:ダナ・ベルカストロ、ステイシー・コルカー・クレイマー
ジャック:キャム・ギガンデット グレン・S・ゲイナー、リサ・シャピロ
ショーン:スタンリー・トゥッチ 脚本:スティーヴン・アンティン
マーカス:エリック・デイン 音楽:クリストフ・ベック
アレクシス:アラン・カミング 撮影:ボジョン・バッゼリ
ジョージア:ジュリアン・ハフ 編集:ヴァージニア・カッツ
ヴィンス:ピーター・ギャラガー 衣装デザイン:マイケル・カプラン
ナタリー:ディアナ・アグロン 音楽監修:バック・デイモン
  プロダクション・デザイン:ジョン・ゲイリー・スティール
<< Back Next >>
 
 
ホーム