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2010年度のバックナンバー
監督:デヴィッド・フィンチャー 製作年:2010年
脚本:アーロン・ソーキン 上映時間:120分
世界最大のSNS「Facebook」誕生の裏側を描いた伝記ドラマ。
【イントロ】

世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である「フェイスブック」の生みの親、マーク・ザッカーバーグは、現役の実業家である。今や5億人以上という途方もないアクティヴユーザーを抱える、まさに世界一のSNSを立ち上げた創設者というのは、一体どういう人物なのだろうか。そして彼がそれを立ち上げるきっかけになった理由とは…

その創設者のサクセスストーリーや心の暗部を、「セブン」や「ファイト・クラブ」のデヴィッド・フィンチャー監督が、ハイレベルなディレクションで映画化。スピード感溢れる展開と、ネット社会の「今」を見事に切り取り、1人の天才が起業の過程において、何を失い、何を手に入れたかを描いている。

この作品は、1人の若者がいかにしてビリオネアになったかという単純なサクセスストーリーではなく、「フェイスブック」が途轍もなく巨大な化け物になっていく際に生じた2つの訴訟問題を絡めているところが、物語に深みを与えているようだ。

主人公であるマーク・ザッカーバーグという男は、正直、一般人には理解し難い性格である。マシンガンのような早口で、コロコロと話題が変わっていく。その合間に、色々なことをひらめいてはアイデアを形にする彼は、かなり病的で変わっていると言わざるを得ない。「フェイスブック」が結果として巨万の富を生み、彼が若き億万長者となった事実を私たちは知っているが、映画で描かれる主人公は、金儲けや売名に関心は薄い。


それどころか、ドラッグや遊びにさえ興味を示さず、常に勉強、あるいは仕事をするのが大好きな、典型的な地味なオタク青年である。ただ、ガールフレンドを平気で傷つけ、女の子の品定めという下世話なマネを思いつくイヤな奴であったり、ハッキングや他人のアイデアをちゃっかりいただいても罪悪感という意識が極めて希薄…それがマークなのだ。

しかし、同時にマークは、サイトに掲載する広告をダサいと嫌がり、「ナップスター」の創業者ショーン・パーカーの「The Facebook」の「THE」をとって名前をシンプルにしろというアドバイスに、自分と同じ臭いを感じ取る。利益優先の起業ではなく、ネットを使って、社会に新しいムーブメントを起こしたいと夢見みる価値観もまた、彼の一面なのである。

「ソーシャル・ネットワーク」は、ゴールデングローブ賞で4冠を獲得し、アカデミー賞では8部門にノミネートされており、オスカーに限りなく近い作品と言われている。

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また、この作品では、知っていた方がよりドラマを理解できる「用語」が数多く登場している。映画鑑賞前に、これらの用語を簡単に予習しておこう。誰もが知っている用語かも知れないが、今更、人に聞きにくい用語があるかもしれない…小さな親切、大きなお世話的用語説明である。

当然のことながら、財務に関する用語について分かっている方がこの映画は面白い。主人公マークと親友エドゥアルドの間には、財務についての認識にもかなり違いがあるようだ。

■CFO (Chief Financial Officer)
財務部門の最高責任者を意味する役職名である。実質、その会社の役員も兼ねている場合が多い。マークは大学の寮で最初に「フェイスブック」を立ち上げるときに、エドゥアルドを「僕のCFO」と呼ぶシーンがある。

■CEO (Chief Executive Officer)
最高経営責任者。企業において、取締役会が任命する執行役員のトップに位置する人物。必ずしも会社の代表取締役=CEOというわけではなく、あくまでも、業務執行のトップがCEOである。マークはフェイスブックのCEO。

■VC (Venture Capital)
ベンチャー・キャピタルとは、ベンチャー企業に投資を行う投資会社のことである。その投資対象は、成長性が高く、まだ株式市場に上場していない企業。VCはそういう会社を上場させて、大きな利益を得るのが狙いなのだ。フェイスブック社もシリコンバレーに移転した際、VCの出資を受け入れている。2011年1月現在、フェイスブック社は未上場だが、その時価総額は500億ドルと見積もられている。

■株式の希薄化
増資などで株式の総数が増え、1株あたりの価値が下がることをいう。エドゥアルドは自分の持ち株数についての契約を交わすが、その後、VCの投資によって新たな株式が発行されたことで、全体における彼の持ち株比率が大幅に減少した。これが、エドゥアルドがマークを恨み、訴訟するにいたった原因なのだ。

■IPO (Initial Public Offering)
株式上場のこと。つまり、会社の株式を株式市場に公開して、一般投資家による株式の売買を可能にすることである。株式を保有している者は、IPOの後、持ち株を市場で売ることにより、多額の売却益を得ることができる。フェイスブック社は、2011年1月現在IPOされていないが、その時期は確実に近づいている。

■ビリオネア
ミリオネアはミリオン(百万)から派生した百万長者、ビリオネアはその百倍の10億(ビリオン)から派生したケタ違いの億万長者のことである。1ミリオンドルは約8000万円、1ビリオンドルは80億円。主人公マークは、2010年当時25歳で、世界長者番付の「世界で最も若いビリオネア」となった。2011年1月現在、彼の資産は5700億円と言われている…ふぅ〜。

■自己破産
「Napster」起業者のショーン・パーカーは、「著作権侵害についての法廷闘争で敗れたため自己破産した」とマークに語っている。日本では、自己破産しても会社を解雇されたり、選挙権を失うこともない。住民票にも記録が残らないので、意外と世間に知られずに過ごすことができるのだ。

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また、日本では馴染み薄いアメリカ文化特有の用語も知っていた方が、よりドラマが楽しめる。経済大国アメリカのエリート事情がわかる用語をいくつかピックアップする。

■ハーバード大学
マークやエドゥアルドが通う大学。マサチューセッツにあるアイビーリーグ(アメリカ合衆国東部の世界屈指の名門私立大学8校から成る連盟)の1校で、アメリカ最古の伝統ある高等教育機関である。卒業生にはノーベル賞受賞者が48人もいて、世界大学ランキングでは第1位を獲得している。映画関連では、トミー・リー・ジョーンズやナタリー・ポートマンが同大学出身だ。

■スタンフォード大学
カリフォルニア州シリコンバレーの中心にある名門私立大学。マークはこの大学の近くにプール付きの家を借りて、「フェイスブック」製作の仕事場にしている。「Google」の創設者の2人、セルゲイ・ブリンとラリー・ページはスタンフォード出身である。ちなみに、鳩山由紀夫がこの大学の博士号を持っている。

■ファイナルクラブ
ハーバード大学の男子学生による秘密結社的な団体。アメリカの大学には男子学生の友愛会「フラタニティ」、女子学生の友愛会「ソロリティ」があるが、ハーバード大学にはそれらがなく、より排他的な「ファイナルクラブ」が存在する。このクラブは、何世代にもわたって政界や金融界の重要人物を輩出しており、入団には個人の能力、家柄や資産などの厳しい審査が行われることで有名である。

ハーバード大には「ファイナルクラブ」が8つあり、最古の「ポーセリアン」はルーズベルト大統領やロックフェラー一族もメンバーで、最も入会が難しく、そして、「フェニックス」が最も社交的なクラブだと言われている。資産家の息子ウィンクルボス兄弟は「ポーセリアン」の一員だが、マークはクラブハウスの自転車置き場にしか入れてもらえない。エドウァルドには「フェニックス」から入団の誘いがあるが、マークはどこからも勧誘されていない。

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ついでにIT系基本用語も知っておいて損はない。

■SNS (Social Network Service)
ソーシャル・ネットワーク・サービス、つまりネット上の社交サービスの総称。大多数が会員制で、会員同士がネット上でコミュニケーションを楽しむ。日本では匿名で参加できる「mixi」や「GREE」「モバゲー」あたりが有名である。

■Napster ナップスター
ピア・トゥ・ピア(P2P)の技術を利用したファイル共有ソフト、ないし音楽配信サービスの名称でもある。1999年にノース・イースタン大学の学生でクリエイターのショーン・ファニングと、彼のビジネス・パートナーのショーン・パーカーが発表した。全米で爆発的な人気を得て、多数のファイルが無料で交換されたため、全米レコード業界などから著作権侵害などで訴訟を起こされて敗訴した。

その後、Napster社は2002年にRoxio社に買収され、2003年に同名の音楽配信サービスをスタートしたが、これは月額の定額制サービス。ショーン・ファニングは、2002年に合法的な音楽配信を開発提供する会社「SNOCAP」を設立した。

■Google グーグル
ご存知、世界一の検索エンジン。1998年にスタートし、2002年には世界でも最も利用される検索エンジンになる。劇中、ウィンクルボス兄弟は、最初に彼らが考案したサイト「ハーバード・コネクション」のために雇ったプログラマーが、その仕事を辞めて「Google」に就職したと語っている。2010年、日本最大のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」も、検索エンジンとして「Google」を採用した。

■MySpace マイスペース
2008年に「フェイスブック」に抜かれるまで、英語圏でもっとも会員数の多いSNSだった。2003年にカリフォルニア大学バークレー校とロサンゼルス校の出身者と南カリフォルニア大学大学院生らによって設立された。2005年にはメディア王ルパート・マードック率いる「ニューズ・コーポレーション」の傘下に入る。音楽ファンを中心に高い人気を誇っていたが、「フェイスブック」に抜かれて以降は凋落傾向だ。

■ビル・ゲイツ
OS「Windows」を生んだ世界最大のコンピューター・ソフトウェア会社、マイクロソフトの共同創業者で、現在は会長。マークと同じハーバード大学中退だ。映画では、マークが「フェイスブック」を始めたばかりのころ、ハーバード大学で講演会を行い、「マーク・ザッカーバーグは次のビル・ゲイツだ」と語る。

■シリコンバレー
カリフォルニア州北部のサンフランシスコ湾岸地帯南部の総称。「アップル」「Google」「アドビシステムズ」「eBay」「Yahoo!」など、IT系企業の本拠地のほとんどがこの地帯に存在している。映画では「Napster」の創設者ショーンが、マークにこの土地に引っ越すことをすすめる。

■アルゴリズム
ある問題を解くために必要な論理的な手順のこと。マークは女生徒の顔を比較する「フェイス・マッシュ」というサイトを作るときに、エドゥアルドにアルゴリズムを書かせている。

■コード
コンピューター上で動作するプログラムのこと。マークをはじめ、映画に登場するプログラマーたちはプログラムを作ることを「コードを書く」とも言う。

■Apache
世界中で最も使われているウェブサーバー用ソフトウェアである。マークがハーバード大学の生徒名簿をハッキングするときに言及している。

■Wgetコマンド
遠隔地にあるサーバーからファイルを取得するコマンド(コンピューターに対する命令)。同じくマークがハッキングするときに言及。

■Perl
スクリプト言語(簡易的なプログラムを作るのに適したプログラミング言語)の1つ。おもに、Linux(OS)上でプログラムを書くときに使う言語である。

■SSL (Secure Socket Layer)
インターネット上で情報を暗号化して送受信するプロトコル(通信規約)。個人情報を送信するときは、SSL環境で行うのが望ましい。

■Linuxマシン
「Linux」と呼ばれるオペレーティングシステムで動作しているコンピューターのこと。特にサーバー目的で多く使われている。「フェイスブック」の利用者が急増して、エドゥアルドが「Linuxマシン」が必要なのかと聞くと、マークはもう買ったと答えた。

最後に「Facebook フェイスブック」の簡単な説明もしておこう。2004年にマーク・ザッカーバーグが設立したソーシャル・ネットワーク・サービスであり、ユーザーは実名でアカウント登録することが特徴である。2011年1月現在、ユーザー数は世界で5億人に達しており、文句なしに世界一の「SNS」である。変な例えだが、もし「フェイスブック」が国家だとしたら、中国、インドに次ぐ世界第3位の人口を持つ国家ということになる。アメリカでは、「Google」を抜いてアクセス数ナンバーワンのWebサイトである。

 
【ストーリー&インプレッション】

2003年秋。ハーバード大学2年生のマーク・ザッカーバーグはボストン大生の恋人のエリカと口論になり、「アンタがモテないのは性格がサイテーだからよ」と言われて振られてしまう。怒ったマークはブログに彼女の悪口を書き並べ、さらにハーバード大のコンピュータをハッキングして女子学生の写真を集め、親友のエドゥアルド・サベリンの協力の下で女の子の顔の格付けサイト「フェイスマッシュ」を立ち上げる。


そのサイトは瞬く間に話題となり、公開から2時間で2万2000アクセスを記録するが、大学側に察知され、サーバーをダウンされてしまう。

後日、理事会に呼び出しを食らったマークは半年の保護観察処分を受けることになるが、大学のセキュリティの問題点を指摘したのだと上から目線で応戦する。セキュリティ部門の主任からは「4時間で止めた」と言われるが、「4時間もかかっちゃダメでしょう…」的に、小馬鹿にする始末。

結局、大学中の女学生全員から嫌われ者となるマーク。そこへ、ボート部に所属するエリート学生であるキャメロン・ウィンクルボス、タイラー・ウィンクルボス兄弟とその友人のディヴィヤ・ナレンドラはマークの優れたプログラミング能力に目を付け、「名誉挽回のチャンス」と称し、「harvard.edu」のドメインに群がる女と出会うことを目的としたハーバード大生専用のコミュニティサイト「ハーバード・コネクション」の制作協力を依頼する。


一旦は引き受けるが、これにヒントを得たマークは、エドゥアルドをCFOの役職を与えることにより、1000ドルの融資を受け、ソーシャル・ネットワーキングサイトの制作に取り掛かり、2004年初頭、「ザ・フェイスブック」が誕生した。

エドゥアルドの所属する大学一のファイナル・クラブである「フェニックス」の人脈を利用して、サイトは瞬く間に広まった。それに気付いたウィンクルボス兄弟らはアイデア盗用でマークを告訴しようとしたが、資産家の子息でもある彼らは「ハーバードの紳士は訴えない」という思想の為に思い留まった。

「ザ・フェイスブック」の流行のおかげでマークは女子からモテるようになった。だが、マークが偶然見かけたエリカに声をかけたところ、彼女はサイトの存在を知らなかったために一蹴されてしまう。躍起になったマークはサイトを更に大きくしようと決意し、システムを改良して他大学へも次々と開放してゆく。そしてその頃アメリカ西海岸では「Napster」の設立者であるショーン・パーカーは、偶然ベッドを共にした女子大生が使っていた「ザ・フェイスブック」を目にする。


これに興味を持ったショーンは、サイトを通じて直ちにマークたちにアポを取り、西海岸にスポンサーを探しに来た彼らと面会し、「独演会」を行う。エドゥアルドは何となく胡散臭いショーンに懐疑的だが、マークは彼の考えにすっかり魅了されていた。

「こっちの方がクールだぜ…」ってな調子のショーンの提案を受け、サイトネーミングは、「ザ」を取って「フェイスブック」となり、会社の拠点はカリフォルニアに移動した。マークがそこで作業をする一方、エドゥアルドはニューヨークでスポンサーを探し、その間にショーンはマークたちが借りた家に転がり込んだ。ショーンはマークに「俺たちの時代が来た」と語って自分たちの力で事業を拡大することを訴え、そして新たな投資会社との契約を成立させてゆく。

そこへエドゥアルドがニューヨークから戻り、自分の知らぬ間に次々と事が進んでいることに腹を立て、会社の銀行口座を凍結させてしまい、そこからマークとの友情に亀裂が入っていった。

同じ頃、イギリスのボートレース大会に参加していたウィンクルボス兄弟は、「フェイスブック」がヨーロッパの大学にまで浸透するほど巨大化しているという事実を知り、ついにマークを相手とした裁判に踏み切る意向を示した。そしてエドゥアルドもまた、3割以上あった持ち株を0.03%まで引き下げられ、重役を降ろされたことをきっかけに告訴を宣言し、マークは2つの訴訟を抱えることとなった…

「ソーシャル・ネットワーク」は、作家であるベン・メズリックがノンフィクション書籍「facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男(The Accidental Billionaires)」の執筆前に、出版社へのプレゼンテーション用に書いた10ページほどの企画書を基にしている。なお、書籍は映画脚本と同時並行して執筆されたもので、純然たる原作書という訳ではないようだ。

映画を制作するにあたり、脚本を担当したアーロン・ソーキンは、実際にマーク・ザッカーバーグに取材を申し込んだが断られた。ソーキンは後に「最終的には映画の客観性を保つ意味ではそれで良かった」と、述懐している。また、書籍の著者であるベン・メズリックも、ザッカーバーグだけでなく当時を最もよく知る人物としてエドゥアルド・サヴェリンに取材を申し込んだが、双方ともに拒絶されている。


このような経緯により完成した映画・書籍は「facebook」サイドの協力を得ずに作られており、何となくサヴェリンの視点に偏っている部分が多く見受けられる。

なお、サヴェリンは映画完成後に極秘裏にプライベートで鑑賞したようだ。そして、ザッカーバーグも全米公開後に映画館を借りて、「facebook」社員全員と共に観たという。その後、ザッカーバーグがスタンフォード大学での講演では、社会的地位を得るために「facebook」を立ち上げたように描かれている点が事実と異なるとコメントした一方で、「映画の中でキャストが着ているシャツやフリースは、実際僕が着ているものと同じだよ」と、衣裳に関しては良い評価をしている。また、自身を演じたアイゼンバーグの演技についても「中々良かった」とコメントした模様。これは、「facebook」の社員であるアイゼンバーグの従兄弟からアイゼンバーグ自身が又聞きしたようである。


若き天才の億万長者の内面に迫る本作は、導入からして大胆不敵。彼女に振られた腹いせに女子の品定めサイトをネットに立ち上げ、やがてそれが「フェイスブック」へと成長していくことを示唆する。モテないオタク青年の妬みと、それでも誰かと繋がりたい切ない願望が巨大な社交場のルーツであったという視点はなかなか説得力に富んでいる。

数億もの人々のコミュニケーションツールで億万長者になった起業家だが、自分自身はコミュニケーション能力を欠き、全能感を抱いたままの未成熟な子供同然なのだ。リアル社会での名誉や利益をめぐって、仲間にさえ離反される悲哀が縦軸のストーリーだが、デビッド・フィンチャー監督が本当に伝えたかったテーマは、若者カルチャーへの瞠目と疑念と憐憫であるように思われる。



また、この映画では、リアルな現実をなおざりにし、バーチャルに依存しがちな現代人の人間関係そのものが真の主役と言えるかもしれない。かつて生身を殴り合うことで「生」を実感する映画「ファイト・クラブ」を撮ったフィンチャー監督だが、身体性を欠いたネットワークが増殖していく様は、さながら「反ファイト・クラブ」である。そして、その成功者は、成功と引き換えに孤独感に苛まされ、心の痛みからは逃れられない。

自らが創ったコミュニケーションツールでも、本当に繋がりたい女性からは返事が返ってこないラストシーン。虚ろな眼をした主人公が本当に望むものは一体何なのだろうか。人が羨む成功を手に入れても、1人の女性の心が掴めない歯痒さ、もどかしさなのだろうか。それとも、ネットの申し子の天才は、我等旧世代が心配する人間関係への疑念など微塵も気に掛けず、実はもう別の次元へと駒を進めているのかもしれない。どんでん返しが得意の監督だけに、ラストシーンで聞こえてくるカチリというクリック音は、彼女からの返事を待つ更新音ではないような気がしてならない。この若き天才は、センチメンタルよりファンタジーが似合っている。

マーク・ザッカーバーグ役を演じたジェシー・アイゼンバーグは、アカデミー主演男優賞にノミネートされている。オスカー候補は「英国王のスピーチ」のコリン・ファースが最有力との前評判だが、もしかして…という可能性もある。余談ながら、映画冒頭のガールフレンドとの会話シーンでは、なんと99テイクもの撮影が行われたようだ。


エドゥアルド・サベリン役のアンドリュー・ガーフィールドは、2012年7月公開予定のマーク・ウェブ監督「スパイダーマン」最新作の主人公に抜擢された、アメリカとイギリスの二重国籍を持つ人気急上昇中の俳優である。また、「Napster」を立ち上げたショーン・パーカー役を、ハリウッド音楽界でもとびきりの人気者であるジャスティン・ティンバーレイクが演じて、かなりいい味を出しているのも見所である。

フラッシュバック的に2つの時間軸を行き来するストーリー展開、疾走感のあるセリフ回し、小気味良い編集テンポ、効果的なBGM、「フェイスブックって何?」という人も、ITは苦手という人も、この映画の面白さは必ず心に響くはず。またまた見逃してはいけない映画の登場である。

 

キャスト スタッフ
マーク・ザッカーバーグ:ジェシー・アイゼンバーグ 監督:デヴィッド・フィンチャー
エドゥアルド・サベリン:アンドリュー・ガーフィールド 製作総指揮:ケヴィン・スペイシー、アーロン・ソーキン
ショーン・パーカー:ジャスティン・ティンバーレイク 製作:スコット・ルーディン、マイケル・デ・ルカ
キャメロン・ウィンクルボス:アーミー・ハマー シーアン・チャフィン、デイナ・ブルネッティ
タイラー・ウィンクルボス:アーミー・ハマー 脚本:アーロン・ソーキン
クリスティ・リン:ブレンダ・ソング 音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
マリリン・デプリー:ラシダ・ジョーンズ 撮影:ジェフ・クローネンウェス
ダスティン・モスコビッツ:ジョゼフ・マゼロ 編集:カーク・バクスター、アンガス・ウォール
ディヴィヤ・ナレンドラ:マックス・ミンゲラ  
エリカ・オルブライト:ルーニー・マーラ  
ローレンス・サマーズ学長:ダグラス・アーバンスキ クリス・ヒューズ:パトリック・メイペル
アメリア・リッター:ダコタ・ジョンソン サイ:ジョン・ゲッツ
ジョシュ・トンプソン:トレヴァー・ライト ゲイジ:デヴィッド・セルビー
ピーター・シール:ウォレス・ランガム K.C.:シェルビー・ヤング
フェニックス代表:ダスティン・フィッツシモンズ アリス:マレース・ジョー
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