コンテイジョン/Contagion
マネーボール/Moneyball
キャプテン・アメリカ
/ザ・ファースト・アベンジャー
ワイルド・スピード MEGA MAX
猿の惑星:創世記(ジェネシス)
世界侵略:ロサンゼルス決戦
The Mechanic/メカニック
トランスフォーマー
ダークサイド・ムーン
ハリー・ポッターと死の秘宝
PART2
アイ・アム・ナンバー4
SUPER8/スーパーエイト
スカイライン -征服-
X-MEN
ファースト・ジェネレーション
パイレーツ・オブ・カリビアン4
生命の泉
ブラックスワン
アンノウン
エンジェル ウォーズ
SP 革命篇
ツーリスト
RED
ウォール・ストリート
グリーン・ホーネット
ソーシャル・ネットワーク
バーレスク
アンストッパブル
2010年度のバックナンバー
監督:オリバー・ストーン 製作年:2010年
原題:Wall Street: Money Never Sleeps 上映時間:133分
Gordon Gekko is back
Greed is Good (強欲は善)
【イントロ】

アメリカのみならず世界の金融マーケットの中心地として歴史を刻み、幾多の成功と挫折の伝説を生み出してきたニューヨークのウォール街は、ニューヨークマンハッタンの南端部(ロウアーマンハッタン)に位置する細い通りの1つだ。ブロードウェイから東へイースト・リバーに下る場所にある。

現在では、通りの周辺の区域も含めて、世界の金融地区「ウォール街」として定着しており、ニューヨーク証券取引所をはじめ米国の金融史とゆかりのある地区である。米国の金融業界や証券市場を指す比喩としての用法もある。しかし、現在では多くの金融機関が、かつてウォール街に置いていた本社機能をミッドタウン、ニュージャージー州やブリッジポートへと移転させてしまっている。JPモルガン・チェースが最後まで残っていたが、2001年11月、本社ビルをドイツ銀行に売却した。このため、もはやウォール街には純米国資本の大手金融機関の本部は存在しない。

ウォール街

ちなみに、付近にはニューヨーク連邦準備銀行やフェデラル・ホール、トリニティーチャーチなどもある。ブロードウェイを南に少し下ったところにある雄牛像は有名だ。

巨額の金が動く金融の世界に縁はなくとも、映画好きな方ならば、ゴードン・ゲッコーという男の名前にピンとくるはずである。そう、「プラトーン」「7月4日に生まれて」で二度のアカデミー監督賞に輝く社会派監督の巨匠オリバー・ストーンが1987年に放った傑作「ウォール街」でマイケル・ダグラスが演じた、金のためなら法律をも破る超強欲にして超冷徹な投資家の名前だ。

ゴードン・ゲッコーを主人公に、人間の「欲望」というテーマを力強くえぐり出したこの映画は、公開当時センセーショナルな社会的反響を呼び起こした。マイケル・ダグラスに初のアカデミー主演男優賞の栄誉をもたらしたゲッコーという強烈なキャラクターは、今でもなお、経済や金融の論評や記事で引き合いに出されることも多く、まるでこの世に実在するかのように語り継がれている。

ゴードン・ゲッコー

そして、映画「ウォール街」は、実際のウォール街に大きな影響を与えた。ゴードン・ゲッコーに憧れて投資銀行に入社する者や、彼ののファッションを真似る者などが後を絶たなかった。しかし、監督オリバー・ストーンは、カール・フォックスと同じく過剰な資本主義による倫理観の崩壊に嫌悪する側であり、ゴードン・ゲッコー側の人間ばかり増やしてしまった事に対し、大変遺憾だと述べている。

そんな伝説のカリスマを23年ぶりにスクリーンに甦らせた「ウォール・ストリート」は、前作から様変わりした現代のウォール街を舞台に、ゲッコーと複雑な関係で結ばれた2人の若者との葛藤を映し出し、さらに人間の強欲が招いた大恐慌以来の最悪の金融パニック勃発によって、あらゆる価値観が問い直される今の時代性を鋭く描いている。「ウォール街」とは異なる視点を持つそのドラマティックな物語は、オリバー・ストーン監督とマイケル・ダグラスの創作意欲を刺激し、新たな伝説へ挑戦しているようである。

そして、ストーン監督からの直々の呼びかけに応え、2人の若きトップスターがこのプロジェクトに参加している。スティーヴン・スピルバーグの秘蔵っ子として知られ、「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」や「トラスフォーマー/リベンジ」など、話題の超大作への出演が相次ぐシャイア・ラブーフ、そして「17歳の肖像」で映画界に彗星のごとく現れ、いきなりアカデミー主演女優賞候補に名を連ねたキャリー・マリガン。この2人が若き恋人を演じている。

オリバー・ストーン監督とマイケル・ダグラス
シャイア・ラブーフ
キャリー・マリガン

巨匠と名優が奏でる魅惑的なストーリーに、今、ハリウッドで脚光を浴びる2人の眩いほどのフレッシュな魅力が加わった「ウォール・ストリート」は、まさに21世紀の今だからこ必見の極上エンターテインメントとして完成した。

今回の作品は、23年前の続編として制作されており、前作の主要登場人物も1分ほどではあるが、カメオ出演している。前作「ウォール街」を少しだけ「おさらい」しておくほうが理解しやすいので、恒例の小さな親切、大きなお世話の「ウォール街」紹介をしておこう。

ウォール街

バドはしがない証券会社のサラリーマン。証券営業をしていたが、貧しい生活に嫌気が差し、出世を夢見ていた。ある日、バドは営業活動の一環として投資銀行家であるゴードン・ゲッコーのオフィスを訪れる。ところがゴードンの会社は既に専属のディーラーがいて、バドが提供する情報には興味を示さない。バドはふと航空会社ブルースター・エアラインの労組幹部である父親から聞いた内部情報を漏らしてしまう。するとゴードンは興味を示し、バドは彼から証券売買注文を取ることに成功する。これが、バドとゴードン・ゲッコーの運命的な出会いである。

インサイダー情報の提供を見返りに、ゴードンとの取引を成功させたバドであったが、ブルースター・エアライン以外のインサイダー情報は持っていない。バドはゴードンとの関係を保つため、スパイ活動によるインサイダー情報の収集を行い、ゴードンへ提供するようになる。2人の関係はより密となり、営業と顧客という関係から、家族に近い関係へと発展していった。

バドとゴードン・ゲッコー

その後、バドとゴードンは株式買占めによるブルースター・エアラインの買収を計画する。株式買占めによる企業買収は法律で認められる合法的行為である。しかし、バドの父親は、企業を売買することは、結局、投資家が金儲けのためにやることだと考えており、また同僚の労働者への責任からその計画に難色を示す。バドは業績不振のブルースター・エアラインを再建し、雇用を守ると主張するが、それでもバドの父親は受け入れない。バドは父親に強く反発する。

しかし、ゴードンは嘘をついていた。ブルースター・エアラインを再建する気はまったく無かったのだ。ゴードンはブルースター・エアラインを解散して売り払い、航空機や従業員の年金を自分の物にする計画を立てていた。バドはそのことを知り、憤慨し、復讐計画を建てる。

バドはゴードンがブルースター・エアラインの買収を画策していることを、新聞社を利用して公にする。マーケットはすぐ反応を示し、ブルースター・エアラインの株価はわずか1日で約50%も増加する。その後、バドは自分が勤務する証券会社の同僚にブルースター・エアライン株を一斉に売らせる指示をし、株価崩壊を引き起こしてゴードンに損害を与えることに成功する。しかし、まだこのストーリーには続きがあった…

ってな感じである。そう、「ウォール・ストリート」にカメオ出演しているのは、バドを演じたチャーリー・シーンなのである。バドとゴードンが顔を合わし、会話を交わすシーンが用意されているが、どのような内容かは、映画を観てチェックしてほしい。ちなみに、バドの父親のカールを演じたマーティン・シーンは、チャーリーの実父である。

チャーリー・シーンとマーティン・シーン

 
【ストーリー&インプレッション】

8年間の刑務所暮らしに別れを告げるべく、ゴードン・ゲッコーは入所時に保管された私物を受け取っている。「シルクのハンカチ1枚、ネクタイ1本、ゴールドの紙幣挟み1、紙幣なし、腕時計1個」と看守が確認するのをゲッコーは黙って見守っている。最後に「携帯電話が1台」と、前世紀の遺物である巨大な携帯電話が机の上にど〜んと置かれる。時代の移り変わりが如実にわかる見事な演出である。

巨大な携帯電話が机の上にど〜んと置かれる

本作冒頭に映し出されるゴードンの出所時の状況はいかにも侘しい。インサイダー取引を罪体とするゴードンの裁判は5年間続いたが、その結論はゴードンの言葉によれば、「殺人罪でも懲役5年なのに、懲役8年…」という重いものだった。そして、ゴードンが出所してきた2001年には、彼を迎えにくる人間は誰もいなかったから寂しさもひとしおである。出所してからは、自分の上をいく強欲でモラルを欠いた者たちが君臨する金融業界に警鐘を鳴らす本を執筆して生計を立てる身だ。ただ、伝説の人物の再登場だけにメディアや講演会などではいまだ人気は衰えていない。

伝説の人物

ゴードンの出所後7年を経た2008年のニューヨーク。投資銀行ケラー・ゼイベルに勤めるジェイコブ・ムーアは順風満帆の人生を送っていた。若くして経済的な成功を収めた彼には、結婚を前提に交際しているウィニーという聡明で美しい女性がいる。ウィニーは非営利ニュースサイトの運営に携わるジャーナリストで、金や仕事の面ではジェイコブと異なる価値観を持っていたが、彼が情熱を傾ける次世代クリーン・エネルギーへの投資には理解を示している。心から愛し合っているふたりの前には、輝かしい未来が広がっていた。

ところが長らく成長を続けていたアメリカ経済の矛盾が一気に表面化し、ジェイコブの人生を根底から崩壊させる一大事が起こる。急激な業績悪化で株価が暴落したケラー・ゼイベル社が突然破綻し、ジェイコブ自身も資産を失ってしまう。それ以上にジェイコブがショックを受けたのは、人生の師であり父親のように慕っていた昔気質の経営者ルー・ゼイベルが自ら命を絶ったことだった。

ジェイコブとルー・ゼイベル

ジェイコブは失意のどん底の中で、生前のルーのアドバイスに従い、心のよりどころであるウィニーに結婚を申し込む。ウィニーの返事は「イエス」だった。

しかし、ケラー・ゼイベル社の破綻やルーの自殺が金融業界の黒幕ブレトンの陰謀だと知ったジェイコブは復讐を誓い、ウィニーの父親であるゴードン・ゲッコーに助言を求めることを決断。ゴードンは絶縁状態のウィニーとの仲を取り持つことを条件にジェイコブと手を組むことに同意する。本能の赴くままに「欲望」を追及し、卓越した頭脳とあらゆる手段で虎視眈々と復活を目論むゴードン。そんなひと筋縄ではいかないゴードンとの駆け引きによって、愛の強さを試されるジェイコブとウィニー。3人に微笑むのは女神か、それとも悪魔か。尽きぬ欲望と愛憎の行き着く果てには、このうえなくスリリングでドラマチックな結末が待っていた…。

金融業界の黒幕ブレトン
ゴードンとジェイコブ
ゴードンとジェイコブ

物語はリーマンショックに端を発する金融不況の時期を描いているが、オリバー・ストーン監督はマイケル・ムーア監督ほど声高に、その「犯人探し」をしているわけではない。辛口の社会派監督作品を期待する向きには少々物足りないかもしれないが、エンターテイメントとしてのストーリー展開のテンポはひじょうにスムーズであるスピーディだ。また、撮影のロドリゴ・プリエトのカメラアングルは、ニューヨークの摩天楼を妖しげに、また、ゴージャスに、まるで宝石箱をひっくり返したような美しさを映し出している。

インテリアやファッションを含むすべてのデザインが見事で、このあたりが邦画と決定的に違うような気がしてならない。豪華だが華美過ぎず、オフィス造形やパーティ会場の設え方にも品があり、センスがある。メンズファッションに関しても、前作の「ウォール街」では、多くのビジネスエリートに多大な影響を与えた。ネイビーのストライプスーツ、シルクのポケットスクウェア、フレンチカフのシャツ、サスペンダー、襟とカフスだけ白のカラフルなクレリックシャツ…「パワールック」アイテムの数々を世の男性が取り入れた。

パワールック

「ウォール・ストリート」公開前に、アメリカファッション業界は今回の作品の影響が波及することに備え、NYのトレンディなシャツメイカー「Jack Robie」から「Mohan's Custom Tailors」まで、映画のスタイルを紹介するプレスリリースを顧客に送ったとのこと。ま、「備える」というより、映画にあやかり新商品を売りたいという戦略(下心)としては、当然のことである。

今作品でゴードン・ゲッコーが着る、ドーメルやホランド&シェリーの服地で仕立てられた「不況期のパワールック」に興味が惹かれるところであるが、それは映画を観てのお楽しみだ。ただ、注目ポイントはむしろ、アクセサリーの方にある。ヴァシュロン・コンスタンタンやIWCの腕時計、ダンヒルの諸々のメンズアクセサリー、ヒッキー・フリーマンのシャツ、バートン・ピエイラの透明セルフレームのメガネ、懐中時計チェーンなど…ファッションに興味のある方は、ぜひチェックしてほしい。

不況期のパワールック
IWCの腕時計
ベルスタッフの革ジャケット

シャイア・ブラーフも、映画のなかでは1着6500ドルのスーツが数着用意されており、シャツは白の2ボタンカラーで、タイはエルメスで決めている。また、カジュアルウェアではベルスタッフの革ジャケットを粋に着こなしている。

多分、いろんなブランドとのタイアップも無関係ではないと思われるが、不況時代のアメリカ的パワーファッションがどんな風に表現されているのか、また、現実のメンズファッションにどのような影響があるのか…注目したいところだ。

映画「ナイト&デイ」や「エクスペンダブルズ」にも登場している「ドゥカティ」の美しいバイクが、今回も活躍している。シャイア・ブラーフ演じるジェイコブが通勤に使用する「STREETFIGHTER」と、ジェイコブとブレトンがバイクバトルを繰り広げるシーンでジェイコブのために用意されていた、「エクスペンダブルズ」でジェイソン・ステイサムが乗っていた同種の「DESMOSEDICI」だ。確かに、このイタリア製バイクは美しく、性能も素晴らしいので、数々の映画にはマストアイテムなのかもしれない。

STREETFIGHTER
DESMOSEDICI

ちなみに、ブレトンが乗っているのはやはりイタリア製「モト・グッチ」のバイク。ちなみに、日本では「モトグッチ」、あるいは「モト・グッチ」と表記されることが多く、同じくイタリアに本社のある大手ファッションブランド「グッチ」の関連企業と間違われることもあるが、資本関係を含め全く関連はない。アルファベットの綴りも「GUCCI」と異なり、「Moto Guzzi」である。また、日本の自動車検査証においては「モトグッティ」と表記されている。

チャーリー・シーンのカメオ出演も話題の1つだが、この作品には意外な人物が出演している。ヘッジファンドのヘッドマネージャー役に実在するオーストリアの運用資産12億ドル(約1070億円)のヘッジファンドグループ「スーパーファンド」代表のクリスチャン・バハ氏である。オリヴァー・ストーン監督が自身のポケットマネーをクリスチャン・バハ氏の「スーパーファンド」に出資しているという、浅からぬ縁から出演が実現したようだ。「スーパーファンド」は、元警察官のバハ氏が創業したファンドで、1996年から2003年までの間で旗艦ファンドは約500%という驚異的なリターンを上げたことで世界中に名を知られている。

セントラルパークでシャボン玉で遊ぶ子供たちの姿や、ニューヨークの巨大ビル群をフワフワと漂うシャボン玉シーンに、アッという間に破綻するバブル経済の幻影を映し出した演出はひじょうにオーソドックスな手法だが、すべてを象徴しているようで素晴らしい。

どこかショボくれていたゴードン・ゲッコーが、ギラギラした表情に変化する瞬間はこの映画最大の見どころである。早口でまくしたてながら札束をばらまき、片っ端から株を買いまくる豪快な暴れっぷりを披露してくれるのだ。相変わらず経済に元気のない日本だが、こんな男が1人でも登場すれば日本経済も活性化する…かも。ま、村上ファンドやホリエモンの二の舞になるかも知れないが…

ゴードン・ゲッコー&ジェイコブ・ムーア

金融危機の後、一握りの金持ちだけが富を独占するシステムが明るみに出ている今、悪役であるはずのゴードン・ゲッコーの大どんでん返しが、一概に悪とは言い切れないところに、社会派のオリバー・ストーン監督の風刺が込められているように感じられる。ただ、ゴードン・ゲッコーの最後の選択に賛否が分かれるところである。ゴードン・ゲッコーって、そんな人間なの?という声が聞こえてきそうである。

いずれにしても、人間というのは懲りない生き物である。今回の勝者が次も勝つとは限らず、敗者は復活の時を狙って爪を研ぐ。どうやらウォール・ストリートの悪行は、これからも続きそうだ…。ウォール街の裏側を垣間見れる「ウォール・ストーリー」を鑑賞して、ゴードン・ゲッコーの魅力を堪能してほしい。

ウォール街

 

キャスト スタッフ
ゴードン・ゲッコー:マイケル・ダグラス 監督:オリバー・ストーン
ジェイコブ・ムーア:シャイア・ラブーフ 製作:エドワード・R・プレスマン、エリック・コペロフ
ウィニー・ゲッコー:キャリー・マリガン 製作総指揮:バド・カー、セリア・D・コスタス
シルビア・ムーア:スーザン・サランドン アレッサンドロ・ケイモン、アレックス・ヤング
ブレトン・ジェームズ:ジョシュ・ブローリン 脚本:スティーヴン・シフ、アラン・ローブ
オードリー:ヴァネッサ・フェルリト 音楽:スチュワート・コープランド、クレイグ・アームストロング
ルイス・ゼイベル:フランク・ランジェラ 撮影:ロドリゴ・プリエト
ジュール・シュタインハート:イーライ・ウォラック 編集:デヴィッド・ブレナー、ジュリー・モンロー
バド・フォックス:チャーリー・シーン(カメオ出演) キャラクター創造:スタンリー・ワイザー、オリヴァー・ストーン
  プロダクションデザイン:クリスティ・ズィー
  衣装デザイン:エレン・マイロニック
<< Back Next >>
 
 
ホーム