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2010年度のバックナンバー
監督:波多野貴文 公開日:2011年3月12日
原案・脚本:金城一紀 上映時間:103分
最終任務−この国を警護せよ。
運命の最終章。
【イントロ】

深夜枠の連続ドラマとしてスタートした頃から、多くの熱狂的ファンを獲得してきた「SP 警視庁警備部警護課第四係」。昨年公開された「SP 野望篇」では、主演の岡田准一の本格的格闘技アクションが話題になった。その中でも、約20分間にわたり展開された迫力ある「フリーランニング」のリアルなアクションシーンは秀逸だった。そして、「SP」プロジェクトの集大成となる「SP 革命篇」がスクリーンに帰ってきた。

ま、テレビでも映画でも「SP」を観たことがないという方はいないだろうと思うが、前作の「野望篇」の詳細はバックナンバーをご覧いただければ参考になるはずだ。

テレビドラマから映画化というパターンは最近の定番となっている節があるが、「革命篇」の前日エピソードを映画公開前にテレビドラマで放映するという、ある意味無謀な戦略で映画ファンを驚かせた。では、テレビを見ていない人は「革命篇」が分かりづらいかといえば、いや、十分楽しめる…のだが、けっこう重要な伏線が数多く盛り込まれたスペシャルバージョンだけに見ておいた方が、より一層楽しめることは間違いない。

尾形率いるテロリストグループ

テレビドラマから映画化する傾向に異を唱える映画ファンや、今回の場合のように先にテレビドラマを見ておかなければ面白さが半減(そんなこともないが…)するような、考えようによれば観客を無視したメディアミックス戦略を毛嫌う人もいる。ま、確かに商売上手というか、映画のクオリティがどうなの…という点は多少認めるが、個人的な見解だと「それのどこが悪いの?」という感じである。それどころか、どんどんやってくれって思うくらいだ。嫌なら観なければいい訳だし、観た後であれこれ言うのはいかがなものか…と、思う今日この頃である。

とりあえず、テレビ版「革命前日」の簡単なストーリーを紹介しておけば、見逃した人には親切かな…

「野望篇」から2ヶ月…。日々過酷な任務をこなしている警視庁警備部警護課第四係の尾形、井上、笹本、山本、石田にとっては、つかの間の休日が与えられた。

前夜、任務を終えて帰宅した時の恰好のままの尾形は、身辺整理をし、がらんとしたマンションの一室に佇んでいた。尾形が覗き込むパソコンには、明日の「計画」決行に向けて準備している3つのテロリストチームのリーダーたちから、「予定通り」と書かれたメールが送られて来る。

渋い…

恋人と久しぶりのデートの約束をしていた山本はシネコンにいた。遅れて来た彼女に愚痴りつつも、幸せそうな山本。一方、娘の千花と会う予定の石田は公園で待ち合わせ。その公園には、計画の決行日までは顔を合わせない約束だった滝川と安斎もいた。安斎は、井上を警戒し、今日中に始末した方がいいと言うが、滝川はほっておけばいいと落ち着いた様子だ。

休日を過ごす山本と石田

その頃、シンクロの症状が昂進している井上は病院を訪れていた。精密検査の結果を見た医師から、休養を勧められるが、今は現場を離れることができないと断る。井上を心配し、官房長官襲撃事件で痛めた肩の定期検診のふりをして病院に来ていた笹本が、リハビリに付き合えと強引に井上を誘い出し、二人はバッティングセンターに行く。余談ながら、あれほどキレイなスイングでボールをかっ飛ばす女性は少ない…と、思う。

警視庁では定例ミーティングが行われていた。警護課長の中尾、管理官の小波、そして理事官の梶山が翌日の任務配置予定表を確認。その会議が終わった頃、尾形は中尾に電話し、改訂した予定表の提出を忘れていたと伝える。そこには、当初は入っていなかった井上、笹本、山本、石田の名前が連なっていた。新しい予定表は、梶山の所にも届けられるが、梶山は変更に気づかなかった。

梶山は伊達に、今のところ予定通りに進行している旨を電話し、「尾形に私たちの計画がばれているような気がします」と不安を口にするが、伊達に突っぱねられる。同じ頃、麻田総理は、翌日の内閣不信任案の採決を前に、これまでの議員生活を振り返っていた…。

西島理事官の自殺に関する捜査を粘り強く続けている公安・田中は、尾形が東大時代に所属した政治サークル「雄翔会」のメンバーらが、官房長官襲撃事件以降、2ヶ月ほど、まったく顔を合わせていないことが不自然だと考えていた。

捜査打ち切りの声も出ているなか、上司の室伏は田中に一週間の猶予を与える。尾形と伊達の繋がりを見つけるため、尾形の出身地である岡山へ向かった田中は、尾形の実家を訪れ、本物の尾形総一郎は東京の大学に入学してから失踪していることを知る。衝撃の事実を突き止めた田中だが、尾形の実家から出たところで、この日の朝からずっと田中を尾行していた何者かに襲撃されてしまう…。尾形と名乗っている男の正体は一体誰なのか…

ってな内容のタイトル通り「革命」前日の模様が放映された。

photo

 
【ストーリー&インプレッション】

尾形の「野望」が実現する舞台は、麻田内閣不信任案の採決が行われる国会議事堂。井上らSPに警護された国会議員が、次々と衆議院棟・本会議場内へ登庁してくる。しかし、国会議事堂は尾形率いる武装したテロリストグループに密かに占拠されていた。

麻田首相や閣僚たちも雛壇に現れ、各大臣席に着いていく。尾形と野望を共有してきた与党幹事長の伊達は、麻田を睨みつけ、「すぐにそこから引きずりおろしてやるからな」とつぶやく…

SPに警護された国会議員が、次々と衆議院棟・本会議場内へ登庁してくる。
すぐにそこから引きずりおろしてやるからな
尾形が命をかけて挑む、計画の火蓋が切られる。

麻田内閣の行方を多くのマスコミが注視するなか、いよいよ本会議がスタートする。同時に、尾形が命をかけて挑む、計画の火蓋が切られる。国会はテロリストたちに占領され、騒然とする議場内の模様の一部始終が日本全国に生中継され、全国民が固唾を呑んで見守るという異常事態に陥る。

シャレた部屋でその映像をTVでクールに見ている政治サークル「雄翔会」の面々。そして、徐々に解明される人間関係と計画の全貌。テロを知った井上たちSPメンバーは狡猾なテログループにどのように戦いを挑むのか…そして、それぞれの運命は…。

さぁ、どうする

「SP 革命篇」は、ひじょうにテンポがよく、ほどよい緊張感が継続する作品に仕上がっている。何といってもテーマ曲がカッコいい。個人的に「好きな」映画はテーマ曲が印象的なものが多い。

「革命篇」の音楽担当、菅野祐悟は、在学中よりアーティストへの楽曲提供を始め、2004年フジテレビドラマ「ラストクリスマス」で劇伴デビュー。繊細で美しいピアノや弦の旋律、テクノ、音響、オーケストレーションと、その創作の範囲は幅広い。テレビドラマでは「ガリレオ」「MR.BRAIN」「不毛地帯」「新参者」などを、そして、映画では「容疑者Xの献身」「アマルフィ 女神の報酬」「踊る大捜査線 THEMOVIE3 ヤツらを解放せよ!」などを手がけている。余談ながら、テーマ曲「Security Police」の着メロをダウンロードし、目覚まし用ミュージックに設定している。

菅野祐悟は今回の作品で大胆な挑戦を試みている。それは、木管楽器を一切使っていないことである。モノクロにさえ感じる「SP」の深みある映像に、木管の音色が不要な色をつけてしまうのを避けたかった…とのこと。さらに今回は、40人近いミュージシャンが全員違った演奏をする、現代音楽的なアプローチまで試みられているという。また、「野望篇」サウンドトラック同様、今回も一般的なものよりも低い音域を奏でる5弦コントラバスを多用しており、その低音域は劇場の大型スピーカーでなければ再現できないといわれ、ぜひ劇場で体感してほしい。

「革命篇」で舞台となるのは主に国会議事堂の本会議場である。しかし、議事堂は当然ロケが許可されないため、「SP」スタッフは国会議事堂の本会議場を再現したセットを制作しなければならなかった。すべて実際の本会議場のロケハン写真から本物と寸分違わぬように描き起こされ、セット壁面の木目模様や経年の使用感までも忠実に表現すべく、細部までも徹底的にこだわったセットが完成した。

またまた余談ながら、国会議事堂は象徴的なモニュメントである中央塔を境にしてシンメトリーなシルエットであり、正面に向かって右側が参議院、左側が衆議院となっている。現在の議事堂は1920年1月に起工、1936年11月に竣工した。工事に携わった作業員数は約254万人という国家的事業であった。ちなみに、建物の構造は地上3階(中央部4階、中央塔9階)、地下1階の鉄筋コンクリート造りである。

中央塔の下に位置する中央広間の四隅には、日本の議会制度の基礎を作った3人の政治家、初代内閣総理大臣の伊藤博文、議会開設の必要性を広く国民に訴えた板垣退助、そして、日本初の政党内閣総理大臣を務めた大隈重信ら3人の銅像が立っている。さらに有名なのは、誰も立っていない空の台座が1つあることである。もう1人の像を誰にするはずだったかは、その真相を残す資料は全く存在していない。政治というものには完成はなく、理想に向かって常に進化を遂げる者こそ真の政治家だという戒めを込めているという説や、皇居に背を向けることを避けるためなどの説などがあるようだ。

「革命篇」は衆議院棟を舞台にストーリーが進行する。テロリストグループが占拠する本会議場は衆参ともに2階にあり、3階まで吹き抜けの構造となっている。

国会が舞台

国会は三権分立の原則に従って、立法府の最高機関が行政府の一下部組織に警察権を委ねるのは好ましくないという考えから、議事堂敷地内は警察による警備ではなく、衆参各議院が自立的に規律保持を行っている。これを「議院警察権」という。従って、たとえ警察官といえども各議長の許可が無い限り敷地内に立ち入る事はできない。国会議事堂内で警備を行っているのは「衛視」と呼ばれる衆議院事務局と参議院事務局の職員なのである。「衛視」は拳銃などの武器を携帯していないが、国務大臣や海外からのVIPを警護する「SP」は例外として議事堂内での警察活動を許されている。つまり、議事堂内で唯一武器の携帯を許されているのが「SP」という事実が、「革命篇」のストーリーを構成する重要なポイントとなっている。

国会制圧時のテロリストの鮮やかな手口はスピーディでリアリティがあり、特筆に値する。国会の通路封鎖のため守衛に地雷を踏ませた状態でずっと立たせておいたり、同時にワイヤー式対人地雷のクレイモアを設置したりと、クールに立ち回る姿は何となくハリウッド的。

クレイモア地雷

また、「雄翔会」が議事堂から離れた部屋に集まり、事の推移をTV中継で見ながら、操ってるのは本当は我々だと成り行きを説明してくれる演出は、なかなか分かり易くて親切だ。ここで観客は、尾形も知らない、さらなる「大義」というか「陰謀」を知ることになる。

全編通して緊張感漂う作品だが、女SPの笹本にいつもどつかれる七・三分けの山本のM体質や、常に手錠の携行を忘れる井上の表情などがいい感じで緊張を和らげてくれる。基本的にはお茶目な堤真一が、今回の役柄では常にシリアスな演技を求められているだけに、ユーモアを表現できない分、少々イラッとしているのではないかと思うのは、小さな親切、大きなお世話かもしれない…

ちょっとイラッとする堤真一
カッコいい笹本SP

尾形と伊達との人間関係、そして、「雄翔会」メンバーとの微妙な関係性が興味深い。「雄翔会」の若き官僚たちの甘さと伊達のしたたかさが上手く描かれており、国会に向かう時のスーツを秘書に選ばせ、結局違うスーツを着用するという、身内も信用しない曲者ぶりに伊達のアイデンティティが表現されているようだ。そして、自分たちが本当の黒幕と自負し、高みの見物とシャレこむエリートたちの行く末に悲哀を感じる。

観終わった後にけっこう多くの謎が残るのだが、各々が解釈してくれということか、次回作が用意されているのか…ま、こういうエンディングもアリかな…と思う。井上に残した手紙の内容には、一体どのようなことが書かれていたのだろう…とか、4人組の掃除屋「リバプール」の面々には誰から依頼があったのか…とか、伊達の秘書が当日のSP任務配置図改訂版のコピーを持っていることの不自然さ、もしかしてコピーをとれる立場の警護課長も黒幕なのだろうか…などと、鑑賞後に友人と話し合える楽しみがある。

4人組の掃除屋「リバプール」

個人的な希望としては、「革命篇」の続きをテレビドラマとして放映してもらえるとありがたい。井上たちSPメンバーのキャラクター設定も定着し、チームワークもいい感じになってきているので、このままジ・エンドだと少々もったいない気がする。

継続してほしいなぁ〜

ちなみに、「革命篇」の公開日は東日本大地震の翌日で、その影響をもろに被り東日本を中心に休館や上映時間の短縮を余儀なくされた。当然、初日舞台挨拶も同様に影響を受け延期となった。しかし、2011年3月12、13日初日2日間で興収推定3億円弱と、映画観客動員ランキングで初登場第1位となった。やはり、「SP」ファンは多いようだ。

 

キャスト スタッフ
井上薫:岡田准一 監督:波多野貴文
笹本絵里:真木よう子 製作総指揮:石原隆/和田行/島谷能成/加太孝明
山本隆文:松尾諭 製作:亀山千広/藤島ジュリー景子
石田光男:神尾佑 原案・脚本:金城一紀
尾形総一郎:堤真一 音楽:菅野祐悟
中尾義春:江上真悟 (警護課第4係・課長) 撮影:相馬大輔
梶山光彦:伊達暁 (警護課・理事官) 編集:穂垣順之助
西島勇司:飯田基祐 (警護課・元理事官) 美術デザイン:d木陽次/竹中健
田中一郎:野間口徹 (公安) 美術プロデュース:宮崎かおる
室伏茂:春田純一 (公安) 照明:和田雄二
木内教永:古山憲太郎 4係(新人チーム) VFXスーパーバイザー:ロバート・スコタック
青池由香莉:入山法子 4係(新人チーム) VFXディレクター:山本雅之
原川幸子:平田敦子 (警護課庶務係) サウンドデザイン:トム・マイヤー
伊達國雄:香川照之 (与党・幹事長) 選曲:藤村義孝
伊達の秘書:堀部圭亮 アクション監督:大内貴仁
田辺晋一:蛍雪次朗 (内閣官房長官) スーパーバイザー:杉山泰一
麻田雄三:山本圭 (内閣総理大臣) プロデューサー:関口大輔/稲葉直人/中島久美子/古郡真也
滝川栄治:平岳大 (防衛大臣・秘書官)  
安斉誠:波岡一喜 (外務省国際テロ対策協力室)  
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