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2010年度のバックナンバー
監督:ザック・スナイダー 公開日:2011年4月15日
原案・脚本:ザック・スナイダー 上映時間:120分
現実は檻の中 心の中だけが自由
【イントロ】

監督のザック・スナイダーによると、この作品は「マシンガンを持った『不思議の国のアリス』」だという。スナイダーはロンドンのヒーサリーズ・スクールで絵画を学び、カリフォルニア州パサデナの名門アート・センター・カレッジ・オブ・デザインにおいて大胆な映画制作スタイルを確立。ミュージック・ビデオやCMのディレクターとして数多くの賞を受賞し、「ゾンビ」のリメイク作品「ドーン・オブ・ザ・デッド」で長編映画デビューした。その後、「ウォッチメン」や「300」といった独特の映像美を持った作品を世に送り出している。

「エンジェルウォーズ」の企画は、2007年3月に始まったようだが、スナイダーが「ウォッチメン」を優先したために後回しになったという。ワーナー・ブラザーズは「ウォッチメン」の成功により、引き続いて本作を配給することを発表した。これまで原作のある映画のみを監督してきたスナイダーにとって「エンジェルウォーズ」は初めてとなるオリジナル作品であり、スティーヴ・シブヤと共に脚本を書き、プロデューサーも勤めた。

原題「Sucker Punch」

また、この作品において音楽は重要な役割を果たしている。ストーリー上、音楽によってファンジーの世界が始まることになっているのだ。スコアは、スナイダーの全作品を手掛けているタイラー・ベイツと「ムーラン・ルージュ」のマリウス・デ・ヴリースが書いているが、作品内ではImmediate Musicの「Prologue」、Lords of Acidの「Crablouse」、レッド・ツェッペリンの「レヴィー・ブレイク」、ビートルズの「トゥモロー・ネバー・ノウズ」、クリフ・リンの「And Your World Will Burn」、シルバーサン・ピックアップスの「Panic Switch」なども使用されている。

この作品ではダンスも重要なモチーフとなっているが、時間的制約のためなのか、観客にイマジネーションを喚起させるためなのか、スナイダーは大胆にもダンス・シーンの大部分をカットしている。そのうち1つだけがエンド・クレジットで使われいる。今後、発売が予定されるDVDの「ディレクターズ・カット版」で、ダンスシーンが追加されるようである。

ダンスシーンが重要なモチーフになっている

このマシンガンを持った「不思議の国のアリス」という分かりやすいようで分かり辛い作品は、簡単にいえば、5人の少女たちが空想世界で戦うバトルアクション超大作という感じである。舞台は60年代の閉鎖的な精神医療施設。主人公ベイビードールは過酷な現実を打破し、未来を変えるため、空想の世界で日本刀と銃を手にセーラー服に身を包み、仲間たちとサムライ型の武装ロボット、第一次世界大戦時のドイツ兵ゾンビたち、火を吐くドラゴンなどと壮絶な戦いを繰り広げる…というのがオフィシャルの宣伝文句だ。

アキバ系ガールズコスチュームという、あられもないイデタチの可愛い女の子たちが大活躍するこの作品は、ストーリーがどうのこうのというより、オネエちゃんたちのキメポーズや映像美に賭ける制作スタッフの情熱を感じ取ってほしい。そして、この作品には日本テイストの味付けがふんだんに施されている。

アキバ系ガールズコスチューム

問題?のストーリーは、すべて「これは想像上の世界」と言えば許されるわけで、さまざまなシークエンスに登場するキャラクターが楽しめ、敵をクリアしながら戦う展開は、まるでロールプレイングゲームのような趣がある。日本製フィギュア的な風貌のセーラー服やナース衣装のコスプレ美少女たちは、たんに可愛いだけでなく、セクシーでタフなところが、きっとアメリカ人好みなのだろう。

マシンガンや日本刀を手に、カッコいい甲冑に身を包んだ巨大なサムライやゾンビらを相手に超絶バトルを繰り広げる爽快さは、ストーリー展開を真面目に追っかけず早々に放り投げれば、強烈なヴィジュアルに目を見張り、十分楽しめること間違いない。

ベイビードールの勇姿

激しいヴァイオレンスとアクション、それにギリギリの残酷さとセクシーさが刺激的で、けっしてコスプレ美女好きのオタクっぽい子供向け映画ではない。だからといって、過剰のエロを期待しても裏切られる。ほどよいセクシーという程度なので、念のため…。血飛沫がドバァ〜ってな残酷シーン満載という感じだった「300」とは違い、そのあたりの配慮はけっこうされているようで、えげつない残酷感もなくソフトである。

いろんな要素が詰め込まれた宝石箱のような映画であるが、観終わった後の「爽快感」や「痛快感」はあまり感じられないところが、きっとザック・スナイダー監督の持ち味なのだろう。ストーリーを無視できない人には、この映画の深さやメッセージが伝わってくる…という。去年の話題作「インセプション」に似通う雰囲気が漂っている。「精神病院の世界」「ナイトクラブの世界」「戦闘世界のイマジネーション」という階層を行き交いながら物語は展開されるのだ。

現実と虚構が描かれているが、現実の世界そのものが虚構なのかもしれない…。これは観る人によって解釈が違ってくるような作品である。なお、原題の「Sucker Punch」とは「不意の一発」という意味である。

ちなみに、「エンジェルウォーズ」で活躍する5人の美女は以下の通り…

主人公ベイビードール(エミリー・ブラウニング)
願いは叶えるものだと信じ、自分が自分らしくあることを望んでいる。
ベイビードール
ベイビードール

スイートピー(アビー・コーニッシュ)
ロケットの姉。グループのリーダー的存在だが施設中では規律に従うことが利口だと心得ている。
スイートピー
スイートピー

ロケット(ジェナ・マローン)
典型的な次女気質。計画に大賛成の純粋な女の子。
ロケット
ロケット

ブロンディー(ヴァネッサ・ハジェンズ)
心ならずも計画をばらしてしまうことに…
ブロンディー
ブロンディー

アンバー(ジェイミー・チャン)
気弱で自信をもつことが苦手な女の子。だが、芯は強い。
アンバー
アンバー

 
【ストーリー&インプレッション】

母親が亡くなり、遺産のすべては2人の姉妹に遺される。残された姉妹に待っていたのは、義父の虐待。姉ではなく、これ見よがしに妹に暴力を振う義父。姉が駆けつけたときには、妹はすでに死んでいる。激昂しつつも、拳銃を手にした姉。しかし、義父を撃つことができない。

シーンは墓地、妹の埋葬後に待っていたのは警察。妹殺しの容疑で逮捕された姉は、更正施設ではなく、精神病院に送られる。その精神病院の実態は、収容された若い女の子を娼婦にしている、華美な装飾がいかがわしい娼館なのである。全てを闇に葬り去り、亡き妻の全遺産を手に入れようとする義父の企みで、ロボトミー手術が施されることになるベイビードール。

「レノックス・ハウス」にいるキモいお兄さん

オープニングシーンはセリフなくテンポよくストーリーが展開されていく。まるで上質のミュージックビデオを見ているような感覚である。ベイビードールに降りかかった非業な運命が、このオープニングで端的に描かれ、この映画のビジュアル傾向の方向性が示されている。

ロボトミー手術が行われるまで5日の猶予しか残されていない。無理やり強要されたダンスレッスンの最中に、ベイビードールは異空間の中にいる自分を自覚する。そこは、日本風寺院。僧侶風の男から「自由を求めるなら闘え。アイテムは5つ。地図、炎、ナイフ、鍵、そして、最後のアイテムはそのうちに分かる…」と謎のアドバイスを受ける。

自らの自由獲得のため、刀と拳銃で武装したベイビードールは、寺院の外で待つ巨大な3人鎧武者とバトルを開始。熾烈な攻防が続くが、見事勝利をおさめるベイビードール。

見事勝利をおさめるベイビードール

そこで、現実に戻るベイビードール。まわりが絶賛する彼女のダンス…ベイビードールは自分が踊っている時には、自由を勝ち取るために敵と戦えることが可能だということを知る。そして、仲間と一緒にこの醜悪な環境から逃げ出そうと、スイートピーとロケットの姉妹、ブロンディとアンバーを誘う。

その後、ベイビードールのダンス中に逃亡に必要なアイテムを入手するため5人の女戦士と化し、第1次世界大戦のヨーロッパでゾンビ兵士と戦ったり、ドラゴンを退治したり、未来都市で列車に仕掛けられた時限爆弾を解除しようと奮闘したりと八面六臂の大活躍。

八面六臂の大活躍

最後のアイテムは一体何なのか…。そして、5人の女の子は逃亡に必要なアイテムを手に入れることができ、無事脱出できるのか…。そして、彼女たちに待ち構える恐るべき運命とは…。もうこれは劇場で観てもらうしかないでしょう。空想の世界で思う存分に戦うことが、現実で絶望に囚われた少女たちの存在証明なのであり、5番目のアイテムは果たして何を指すのか…それが分かったとき、本当の自由の意味を知るという仕掛けである…と思う(少々弱気)。

ちなみに、ベイビードールが使用する日本刀は、主演のエミリー・ブラウニングの小柄な体型を考えて、脇差の刀身に本差の柄を合わせており、柄にはエイの腹部の革が使用されている。つばや目貫もすべて手彫り。漆塗りの鞘には雪の結晶の模様があしらわれているが、この模様が重要なシンボルの1つである。ベイビードールはこの刀を組紐状の帯で背中にくくりつけ、革のホルスターと連結させている。

また、刃の両面にはシンボリックな文字が刻まれており、この文字をつなげて読むと、本作のあらすじになるという凝った演出が施されているのだ。

刃の両面にはシンボリックな文字が刻まれており、この文字をつなげて読むと、本作のあらすじになる

他にもシンボルに対するこだわりが小道具などにも多く見られ、悲運に見舞われたベイビードールの妹の薄気味の悪いおもちゃにもベイビードールのトラウマが象徴されている。また、清掃員が持っている安物のライターにはドラゴンの絵柄が付いているが、このドラゴンが後のシーンではヒロインたちの敵となり、さらには金の高級ライターとなってベイビードールが脱走を試みるシーンに出現する。

また、ヴィジュアルの共通イメージにも細心の配慮がされている。ベイビードールが収容される精神医療施設「レノックス・ハウス」のアーチは、ドラゴンとの対戦シーンにも、娼館を舞台にしたシーンにも登場する。全焼した教会から始まる第一次世界大戦のシーンでは、その教会が「レノックス・ハウス」のたたずまいにそっくりである。

教会であれ、城であれ、寺院であれ、ベイビードールの行く先々には「レノックス・ハウス」をイメージさせるものが必ずある。陰鬱な色使いも同様だ。観客はシーンが変わっても、同じところにいるような気分になり、ベイビードールの身に起きていることをいつも意識するようになる憎い演出だ。

ベイビードールの心と同様に、作品の中のビジュアルも時空を自由に移動する。その狙いは観客の感情を煽り、惑わすことにある。監督が目指したのは、幻惑的でシュールなビジュアルであり、現実とも幻想ともつかない世界の構築である。そして、その手段として、鏡が多用されている。鏡に象徴されるのは、「2つの現実」「幻想」「自分との対峙」である。殺伐としたストーリーと豊かなビジュアル、この作品の魅力は矛盾をはらんでいるところにある。現実と幻想、リアリズムとシンボリズムが同列に語られているのだ。

ハリウッドの次世代を担うであろう若手女優たちのコスプレアクション

ハリウッドの次世代を担うであろう若手女優たちのコスプレアクションばかりに目を奪われていると、作品の本質を見逃すかもしれない…。切ないエンディングが何を意味するか、またベイビードールのイマジネーションの中に現れる謎の男性の役割は一体何なのか…。この人物がベイビードールのイマジネーションの世界だけに登場していることがキーポイントであれば、ラストシーンに登場する運転手は何を意味するか…。

いっそ大胆に、ベイビードール以外の女の子は彼女の勝手に創りだした妄想の産物なのか…ベイビードールは実はスイートピーである!な〜んて発想も面白いかも知れない。ま、監督であり、脚本を手掛けているザック・スナイダーに教えてもらわなければ正解は分からない。

映像美に酔いしれるか、いろんな解釈に戯れるか、それはあなた次第…という、クールな作品である。スクリーン狭しと暴れる、ミニスカート姿が色っぽい女の子たちの勇姿を見逃しては損するってなものだ。

 

キャスト スタッフ
ベイビードール:エミリー・ブラウニング 監督:ザック・スナイダー
スイートピー:アビー・コーニッシュ 製作総指揮:ウェスリー・カラー/クリストファー・デファリア
ロケット:ジェナ・マローン 製作:ザック・スナイダー/デボラ・スナイダー
ブロンディ:ヴァネッサ・ハジェンズ 原案・脚本:ザック・スナイダー
アンバー:ジェイミー・チャン 音楽:タイラー・ベイツ/マリウス・デ・ヴリース
ブルー・ジョーンズ:オスカー・アイザック 撮影:ラリー・フォン
ベラ・ゴルスキー博士:カーラ・グギノ 編集:ウィリアム・ホイ
ハイローラー / 医師:ジョン・ハム 脚本:ザック・スナイダー/スティーヴ・シブヤ
ワイズマン / 賢者 / バスの運転手:スコット・グレン 美術プロデュース:
   
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