コンテイジョン/Contagion
マネーボール/Moneyball
キャプテン・アメリカ
/ザ・ファースト・アベンジャー
ワイルド・スピード MEGA MAX
猿の惑星:創世記(ジェネシス)
世界侵略:ロサンゼルス決戦
The Mechanic/メカニック
トランスフォーマー
ダークサイド・ムーン
ハリー・ポッターと死の秘宝
PART2
アイ・アム・ナンバー4
SUPER8/スーパーエイト
スカイライン -征服-
X-MEN
ファースト・ジェネレーション
パイレーツ・オブ・カリビアン4
生命の泉
ブラックスワン
アンノウン
エンジェル ウォーズ
SP 革命篇
ツーリスト
RED
ウォール・ストリート
グリーン・ホーネット
ソーシャル・ネットワーク
バーレスク
アンストッパブル
2010年度のバックナンバー
監督:ジャウム・コレット=セラ 公開日:2011年5月7日
原作:ディディエ・ヴァン・コーヴラール 上映時間:113分
交通事故に遭い、4日間の昏睡から目覚めると
妻は自分を「知らない」と言い、見知らぬ男が自分を名乗っていた!
【イントロ】

上質のサスペンス映画だ。邦題が「身元不明」で日本公開が予定されていたが、3月の東日本大震災の影響でタイトル変更と公開日延期が余儀なくされた、ある意味曰く付きの作品である。原題「unknown」を和訳すれば、知られていない、未知の、不明な…という意味があり、ま、普通に考えれば「身元不明」というタイトルは作品の内容を言い得て妙と言うべきだが、微妙な時期だけに配給会社の判断は正解だと言える。ただ、作品の内容は震災とはまったく関係ないのだが…

映画「アンノウン」は、フランス人小説家であるディディエ・ヴァン・コーヴラールの2003年の作品「Hors de moi(Out of My Head)」を、スティーヴン・コーンウェルとオリヴァー・ブッチャーが脚本化し、スペイン出身のジャウム・コレット=セラが監督した作品である。

原作はフランス人小説家であるディディエ・ヴァン・コーヴラールの「Hors de moi(Out of My Head)」

交通事故の後、昏睡状態が続き、目が覚めたとき自分が何者か分からなくなってしまう男の精神的恐怖。また、自分を知っているはずの人間が「あなた誰?」と、自分の存在すら否定されてしまう状況に、事の真相と己のアイデンティティを取り戻すために行動を開始する主人公。そんな自分を狙う暗殺者の影。何らかの陰謀に巻き込まれたことを確信した主人公の取った行動とは…

主人公の科学者マーティン・ハリス博士を演じるリーアム・ニーソンは、大手スタジオの大ヒット作から高評価を得るインディペンデント映画までの両方に出演する国際的知名度をもち、また、数々の受賞歴がある名優である。

リーアム・ニーソン

数多い出演作品の中で、過去3本の映画ではそれぞれ異なる実在の人物を演じ、多くの栄冠に輝いている。1993年度米アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した、スティーブン・スピルバーグ監督作品の「シンドラーのリスト」では、オスカー・シンドラー役を演じ、米アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英アカデミー賞にノミネートされた。その3年後には、伝記映画ニール・ジョーダン監督の「マイケル・コリンズ」で、主人公のアイルランド共和軍の英雄を熱演し、再びゴールデングローブ賞にノミネートされ、イブニング・スタンダード英国映画賞および96年度ベネチア国際映画祭最優秀男優賞を受賞した。そして、2004年にはビル・コンドン監督の「愛についてのキンゼイ・レポート」で、性に関する研究者として論議を巻き起こしたアルフレッド・キンゼイ役を演じ、ゴールデングローブ賞に3度目のノミネートを果たし、インディペンデント・スピリット賞にもノミネートされ、ロサンゼルス批評家協会賞を受賞している。

最近では、サスペンス作品「96時間」、「特攻野郎AチームTHE MOVIE」では天才戦略家のハンニバル・スミス役、神話大作である「タイタンの戦い」でのゼウスでの熱演が記憶に新しいところだ。映画ファンにはジェダイの騎士クワイ=ガン・ジン役を演じた「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」や、謎めいたヘンリー・デュカード役を演じた「バットマン ビギンズ」の2本の大ヒット作でもよく知られている。

ジェダイの騎士クワイ=ガン・ジン

また、特徴的な声を生かし、「ナルニア国物語」シリーズのアスラン王役の声優として出演し、「崖の上のポニョ」英語吹替え版でも声の出演をしている。

普通のパターンは、若い頃はアクション俳優で活躍し、年齢を重ねて演技派へと転向する傾向が多いが、リーアム・ニーソンは、熟年になってからアクションに目覚めたようで、アクションシーンの多い作品への出演が目立つ。今回も存在感たっぷりのアクションスターぶりである。

タクシードライバー役で登場し、事件に巻き込まれる何とも可哀そうな美女・ジーナを演じるダイアン・クルーガーは、ドイツ出身の女優・ファッションモデル。幼少の頃はバレリーナを志し、ロンドンのロイヤル・バレエ・スクールで学んでいたが、怪我で断念。その後、パリに移り、モデルとしてキャリアをスタートさせる。フロラン演劇学校で演技を学び、同校の優秀な生徒に与えられるクラッセ・リプレ賞を受賞した。

ダイアン・クルーガー

2002年にデニス・ホッパー主演の「ザ・ターゲット」でスクリーンデビューし、女優としてのキャリアをスタートさせる。2004年公開のブラッド・ピット主演「トロイ」でハリウッドに進出し、「トロイ」と同年公開されたニコラス・ケイジ主演「ナショナル・トレジャー」で、公文書館責任者のアビゲイル・チェイスを熱演し、国際的に知られるようになる。なお、2007年の続編「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」にも同役で出演している。

余談ながら、この続編はニコラス・ケイジが主演した作品で1番興行収入が高い作品である。なお、ニコラス・ケイジはこの作品で第28回ゴールデンラズベリー賞ワースト男優賞にノミネートされている。

ダイアン・クルーガーは、2005年に「マキシム」誌の「ホットな女性」50位に選出され、以後、ハリウッドとヨーロッパの両方で活躍している女優である。2007年の第60回カンヌ国際映画祭の開会式及び閉会式の司会と、2008年の第59回ベルリン国際映画祭の審査員も務めている。最近では、2009年公開の「イングロリアス・バスターズ」でのドイツ人レジスタンス・ブリジット・フォン・ハマーシュマルク役の凛々しい姿が印象的だ。なお、この作品では全米映画俳優組合賞助演女優賞にノミネートされている。

ダイアン・クルーガー

ジャニュアリー・ジョーンズ演じるマーティン・ハリス博士の妻・エリザベスは、物語の鍵となるミステリアスな存在。ジャニュアリー・ジョーンズは、急速に変化する1960年代、男性優位の世界を舞台にした米AMC放送の賞受賞ヒットシリーズ「マッドメン」に現在出演中の女優だ。有能で女好きの広告会社幹部ドン・ドレイパーの妻ベティ・ドレイパー役の演技で、ゴールデングローブ賞ドラマシリーズ部門主演女優賞に2度ノミネートされ、エミー賞ドラマシリーズ部門主演女優賞にも1度ノミネートされている。また、ほかのキャストとともに全米映画俳優組合賞ドラマシリーズ部門最優秀アンサンブル演技賞を2度受賞している。

ジャニュアリー・ジョーンズ
ジャニュアリー・ジョーンズ

なお、夏に公開予定のマーベル・コミックの同名のキャラクターを描いた映画「X-メン」シリーズの5作目「X-MEN: First Class」では、テレパスと身体をダイヤモンド化する能力を持つミュータント、エマ・フロストを演じている。

交通事故に遭った男が経験する奇妙な世界。自分はいったい誰なのか?記憶のみならず、一切の身分証明を失くした男が途方に暮れ、ヒントを探し、真実を求めて彷徨う。ところが、わずかに甦った妻との思い出も否定され、あらゆる自己認識が崩壊していく様を観客はただ固唾を飲んで見守るだけである、そして、すべての謎が解き明かされるとき、その隠された真実に驚愕する。果たして主人公の正体は…

交通事故に遭った男が経験する奇妙な世界

適度な緊張感を保ったまま、ストーリーは一気に佳境に向かう。スクリーンから目を離せないサスペンス映画の秀作である。

 
【ストーリー&インプレッション】

植物学者のマーティン・ハリス博士は、バイオテクノロジーの学会に参加するために妻のエリザベスと一緒に初めてのベルリンにやってきた。雪がちらつく寒い空港からタクシーに荷物を積み込みホテル・アドロンに向かう。しかし、ホテル到着後、マーティンはパスポートや学会で発表する原稿の入った一番大事なアタシュケースを空港に置き忘れてきたことに気がつき、エリザベスをホテルで降ろした後、急いで別のタクシーで空港に引き返した。

植物学者のマーティン・ハリス博士は、バイオテクノロジーの学会に参加するために妻のエリザベスと一緒に初めてのベルリンにやってきた。

気が焦るマーティンは、女性のタクシードライバー、ジーナに空港への近道を走るように頼み込むが、運悪く交通事故に遭い、タクシーは川に転落してしまう。ジーナのおかげでマーティンはからくも一命を取り留めるが、ジーナはその場から姿を消してしまっていた。昏睡状態に陥ったマーティンは4日後に意識を回復するが、身分を証明するものは持ち合わせておらず、自分のことを思い出すことができない。

運悪く交通事故に遭い、タクシーは川に転落してしまう。
運悪く交通事故に遭い、タクシーは川に転落してしまう。

また、不思議なことにホテルで自分を待っているはずの妻やアメリカ大使館からベルリン警察に行方不明の届出が出ていない。自分を探している人はいないのだ。そして、自分は一体誰なのか分からない…。

病院のベッドでテレビを見ていると、学会が開催されるニュースが報道された。この映像を見て、自分が学会のためにベルリンに来ていた事と、妻を残してきたホテルを思い出す。マーティンは病院を抜け出し、ホテル・アドロンに急行する。

しかし、レセプション会場で見つけた妻は、マーティンを知らない男だと言う。もっと悪いことに、見ず知らずの男が現れ、自分こそがマーティン・ハリスだと主張する。そして、リズはその「第二の」マーティンを本物と信じて疑わない。

レセプション会場で見つけた妻は、マーティンを知らない男だと言う。もっと悪いことに、見ず知らずの男が現れ、自分こそがマーティン・ハリスだと主張する。

ホテルでの騒動の後、病院に連れ戻されたマーティンは、優しい看護士に「困ったときはこの人に相談すればいい」と、ある男性の存在を教えてもらう。しかし、その後その看護士は謎の殺し屋に殺され、マーティンも命を狙われる。何か陰謀の存在を確信したマーティンは、病院を命からがら逃げ出した。最後の頼みとして、ベルリンでの事故直前に会った人物を探すことに…それは、タクシードライバーのジーナだ。事故の直後、ジーナは瀕死のマーティンを川底から救出したが、どういうわけか行方をくらませてしまっていた。

マーティンも命を狙われる

ジーナはボスニアの出身で、今はドイツに不法滞在していた。だから、マーティン救出後に、警察の事情聴取でそのことがバレるのが怖くて姿を消したのだ。

ジーナを探し出すことに成功したマーティンはジーナにつきまとい、どうにか答えを引き出そうとするが、ジーナは関わり合いになることを拒んだ。自分の過去を恐れ、今までの苦い経験に怯えているジーナは、もしマーティンに協力すれば、やっとの思いで手に入れたささやかな安心が脅かされることを恐れた。本当の自分を世の中に知らしめようとするマーティンと、存在そのものを隠してひっそりと暮らすことを願うジーナ。偶然のいたずらによって接点をもった2人だが、それぞれの思惑は正反対なのだ。

ジーナを探し出すことに成功したマーティン

ジーナは目立つような真似をしたくなかったが、マーティンの必死の思いを理解し、世間が敵のように見える気持ちも理解できた。そして、ジーナは正式にビザを取得して、人生をやり直すためにお金を必要としており、マーティンがその金を用立てるという話には魅力があった。しかし、殺し屋は彼女のもとにもやってきて、彼女の友人まで殺してしまう。

ジーナは目立つような真似をしたくなかったが、マーティンの必死の思いを理解し、世間が敵のように見える気持ちも理解できた。
逃げる2人 逃げる2人

2人は看護士に教えてもらった男、エルンスト・ユルゲンのもとに出向き、事の経緯を説明し、もう1人のマーティンが偽者であることを証明するために協力を求める。ユルゲンは旧東ドイツの秘密警察シュタージの元メンバーで、生きる化石のような男であった。かつては国家を守り、国政を守っっていたが、今は生きがいを見失っているが、自分と同じように喪失感に苦しんでいる人間を見ると放っておけないユルゲンは、マーティンへの協力を承諾する。

苦しんでいる人間を見ると放っておけないユルゲンは、マーティンへの協力を承諾する。

マーティンはジーナとユルゲンの協力を得て、大いなる陰謀にに立ち向かう…そこには、どんな謎が隠されているのか…アッと驚く真相が待っているが、それはスクリーンで確かめてほしい。

自分がどこの誰なのか?それを心の中では分かっていても、証明できないとしたら、どんな精神状態になるだろう。しかも他人が、見ず知らずの誰かが、自分になりすまし、まわりの人間もその人物を信じているとしたら…この作品の中心には、そんなジレンマが居座っている。

記憶喪失の逆転現象のような状況である。世間のほうがマーティンに関する記憶を失ってしまい、マーティンがマーティンであることを知っているのは本人だけ。ほかは誰ひとりとしてマーティンのことを思い出せない…という設定は、観客をも不安に巻き込んでしまう。どんな仕掛けが施されているのか、どうして自分がこんな目に合うのだろうか…マーティンと観客は一体になってこの謎に挑んでいく…

見ず知らずの誰かが、自分になりすまし、まわりの人間もその人物を信じているとしたら……

この作品のもう1つの主役は、舞台となったベルリンの街だ。作品の主要テーマであるアイデンティティの危機を象徴する都市としてベルリンが選ばれたのは、ベルリンには長いこと分断されていた歴史があり、今でこそ東西ドイツが統一され、ベルリン市内では新しいビルが古いビルを凌駕しているが、それでも当時の名残をあちこちに見ることができる。まさに、2つの世界がひとつの都市に存在しており、マーティンが自分の居場所と信じている世界とマーティンのアイデンティティが剥奪された世界の相反する2つの世界が作品中では違和感なく共存している。

マーティンとリズはベルリンに到着後、まっすぐにホテルへと向かう。そのホテルが、世界的に知られる5つ星クラスの名門、ホテル・アドロンだ。近隣にはウンターデンリンデン通りの観光名所ブランデルブルク門がある。ホテル・アドロンは第二次世界大戦の戦火を逃れたものの、その10年後に起きた火災事故で一度は全焼したが、現在は再建されて、豪華な佇まいを取り戻している。

マーティンの訪問先のなかで、ひときわ異彩を放っているのが、ユルゲンの自宅マンションだ。室内には勲章や表彰状が飾られており、高級な家具が置かれている。旧東ドイツの一般市民には手が届かなかったような調度品ばかりで、そこには20世紀のシュタージの下級警察官の華やかりし頃の暮らしが再現されている。ユルゲンは、かつてそんな暮らしを謳歌し、今では恋しがっている心情が切なく表現されたインテリアである。

ユルゲンの自宅マンション

対照的なのは、ジーナの住むアパートである。ジーナが暮らすクロイツベルク地区は、ベルリンに最初に入植したトルコ人労働者が定住した地区であり、ジーナのアパートには大勢の期間労働者が住んでいて、なかには不法就労者も混じっているような雰囲気が伝わってくる。隣の声がすぐ横から聞こえてくるような薄っぺらい壁が象徴的である。

また、建築家のルートヴィヒ・ミース・ヴァン・デル・ローエが1960年代に設計した新国立美術館やブランデンブルク門や博物館島といった観光名所が数多く登場するのも魅力だ。上質のサスペンスと一緒にベルリンの風景も堪能できる素晴らしい作品である。

上質のサスペンスと一緒にベルリンの風景も堪能できる素晴らしい作品である。

 

キャスト スタッフ
マーティン・ハリス博士:リーアム・ニーソン 監督:ジャウム・コレット=セラ
エリザベス・ハリス:ジャニュアリー・ジョーンズ 製作総指揮:スーザン・ダウニー/スティーヴ・リチャーズ
ジーナ:ダイアン・クルーガー サラ・メイヤー/ピーター・マカリーズ
エルンスト・ユルゲン:ブルーノ・ガンツ 製作:ジョエル・シルヴァー/レオナード・ゴールドバーグ
ロドニー・コール:フランク・ランジェラ アンドリュー・ローナ
マーティン・ハリス:エイダン・クイン 脚本:オリヴァー・ブッチャー/ステファン・コーンウェル
  原作:ディディエ・ヴァン・コーヴラール
  撮影:フラビオ・ラビアーノ
  美術:リチャード・ブリッドグランド
  音楽:ジョン・オットマン/アレクサンダー・ラッド
  編集:ティモシー・アルヴァーソン
  衣装(デザイン):ルース・マイヤーズ
<< Back Next >>
 
 
ホーム