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2010年度のバックナンバー
監督:サイモン・ウェスト 公開日:2011年8月13日
原案:ルイス・ジョン・カリーノ 上映時間:100分
この男、完璧。伝説の殺し屋復活!
【イントロ】

1972年公開のチャールズ・ブロンソン主演映画「メカニック」のリメイク作品である。懐かしいと感じる人はなかなかのマニアであることは間違いない。

1972年公開のチャールズ・ブロンソン主演映画「メカニック」

証拠をまったく残さず、機械のように完璧に仕事をこなすことから「メカニック」と呼ばれる凄腕の殺し屋アーサー・ビショップは、孤独で寡黙なプロフェッショナル。そんなアーサーを演じるのは、寡黙がよく似合うジェイソン・ステイサム。

彼は、ブロンソンの「メカニック」が公開された1972年にイギリス、シデンハムで誕生している。飛び込みの英国代表チームに選抜され、オリンピック予選で3位に入賞、世界ランクで12位に入ったこともあるスポーツマンである。

ジェイソン・ステイサムの「メカニック」

TVコマーシャルや広告の分野でモデルとして活躍した後、ガイ・リッチー監督に見出され1998年に俳優業に進出し、リッチーの2作目「スナッチ」ではブラッド・ピットやベニチオ・デル・トロと共演を果たした。これをステップにして、2002年公開のリュック・ベッソン製作フレンチ・アクション「トランスポーター」で主演の座を射止め、それからは順調にスター街道を驀進した。なお、「トランスポーター」は05年と08年に続編が制作されている。ハリウッドでも「アドレナリン」とその続編「アドレナリン:ハイ・ボルテージ」、「デス・レース」「エクスペンダブルズ」などで主演クラスのスターとして活躍中である。

監督はアクションやスリラーの分野を中心に活躍しているサイモン・ウェスト。BBCの映像編集者としてキャリアをスタートさせた後に独立し、多くの印象的なコマーシャルを制作。1991年にはLAに拠点を移してCM制作を続け、カンヌ映画祭で金獅子賞を受賞するコマーシャルを生み出した。そんな実績が認められ、1997年にニコラス・ケイジ主演の「コン・エアー」で映画デビューし、同作を1億ドル突破の大ヒットに導いた。有名な作品としては、ジョン・トラボルタ主演「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」やアンジェリーナ・ジョリー主演「トゥームレイダー」などがある。

共演陣も多彩だ。ベテラン俳優ドナルド・サザーランドは、ご存知人気TVドラマ「24 -TWENTY FOUR-」シリーズの主人公ジャック・バウワー捜査官で有名なキーファー・サザーランドの父親。主人公アーサー・ビショップの親友であり、この仕事を始めるきっかけを作ってくれた恩人役で登場する。その息子スティーブに「X-MEN:ファイナルディシジョン」で注目株のベン・フォスターが扮している。そして、組織のボス・サンダーソンを個性派俳優トニー・ゴールドウィンが演じている。

『The Mechanic』のプレミアで、スタローンと一緒のステイサムとドナルド・サザーランド
息子スティーブに「X-MEN:ファイナルディシジョン」で注目株のベン・フォスターが扮している

また、比較的チョイ役だがけっこう印象的な美女を、世界的なトップモデルとして知られ、これまでにヴォーグ、エル、アリーナ、コスモポリタン等のファッション誌の表紙を飾ってきたミニ・アンデンが演じている。2000年代半ばから女優業に進出し、「オーシャンズ12」や「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」などのヒット作や、「NCIS〜ネイビー犯罪捜査班」「名探偵モンク」「アグリー・ベティ」「CSI:マイアミ8」などの人気TVドラマに顔を見せている。

世界的なトップモデルとして知られ、これまでにヴォーグ、エル、アリーナ、コスモポリタン等のファッション誌の表紙を飾ってきたミニ・アンデンが演じている

1972年公開のオリジナル版は「アメリカン・ニュー・シネマ」の影響下にあった作品と違い、本作はハード・ボイルド色が強く、ドライなタッチに仕上がっている。

余談ながら、「アメリカン・ニュー・シネマ」とは、1960年代後半から70年代にかけてアメリカで製作された、反体制的な主に若者の心情を綴った映画作品群を指す日本での名称である。1940年代までの黄金時代のハリウッド映画は、「観客に夢と希望を与える」ことに主眼が置かれ、英雄の一大叙事詩や、夢のような恋物語が主流であり、ハッピー・エンドが多くを占めていた。1950年代以降、スタジオ・システムの崩壊やテレビの影響などにより、ハリウッドは製作本数も産業としての規模も凋落の一途を辿り、また「赤狩り」が残した爪痕などにより黄金時代には考えられなかった暗いムードをもった作品も少なからず現れた。

その後、ヴェトナム戦争への軍事的介入を目の当たりにすることで、国民の自国への信頼感は音を立てて崩れた。以来、懐疑的になった国民は、アメリカの内包していた暗い矛盾点(若者の無気力化・無軌道化、人種差別、ドラッグ、エスカレートしていく暴力性など)にも目を向けることになった。そして、それを招いた元凶は、政治の腐敗というところに帰結し、アメリカの各地で糾弾運動が巻き起こった。「アメリカン・ニューシネマ」はこのような当時のアメリカの世相を投影していたと言われている。

ニューシネマと言われる作品は、反体制的な人物(特に若者であることが多い)が、体制に敢然と闘いを挑む、もしくは、刹那的な出来事に情熱を傾けるのだが、最後には体制側に圧殺されるか、あるいは個人の無力さを思い知らされ、幕を閉じるものが多い。つまりアンチ・ヒーロー、アンチ・ハッピーエンドが一連の作品の特徴と言える。それは、鬱屈した世相を反映していると同時に、映画だけでなく小説や演劇の世界でも流行していたサルトルの提唱する実存主義を理論的な背景とした「不条理」が根底にあるとも言われているようだ。

ちなみに、ヴェトナム戦争の終結とともに、アメリカ各地で起こっていた反体制運動も下火となっていき、それを反映するかのようにニューシネマの人気も下降していくことになる。

ニューシネマで打ち出されるメッセージの殆どは「個人の無力」であったが、70年代後期になると、「ロッキー」に代表されるように、「個人の可能性」を打ち出した映画が人気を博すようになる。さらにジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」の大ヒットにより、再び50年代の夢とロマンの大作映画や、それまで子供向けとされていたSF映画も復活した。

ヴェトナム戦争により強い大国アメリカの理想像を打ち砕かれ、長らく暗い、憂鬱なニューシネマの虚無感に共感していたアメリカ国民は、戦争の終結と共に、再び明るく希望のある作品を求めたのである。

凄腕の殺し屋アーサー・ビショップは、孤独で寡黙なプロフェッショナル
破壊と銃撃のバイオレンスの中で、殺すことでしか生きていけない男たちの悲哀と虚無が濃厚に凝縮された秀作である

精密機械のごとき正確さで暗殺を実行する殺し屋と、ある理由によって弟子となった2人の関係を中心に息詰まるアクションが展開される。破壊と銃撃のバイオレンスの中で、殺すことでしか生きていけない男たちの悲哀と虚無が濃厚に凝縮された秀作である。

 
【ストーリー&インプレッション】

南米コロンビアの麻薬王が自宅のプールで暗殺されるが、事件は他殺ではなく事故死として受け入れられた。暗殺者の名はアーサー・ビショップ。闇の犯罪組織に雇われて次々と「仕事」をこなしつつも、殺人の痕跡をいっさい残さない。誰とも組まずに孤独を受け入れる。まさしく、プロ中のプロ。

そんなアーサーにミッションが下された。それはアーサーの親友であり、この仕事を始めるきっかけを作ってくれた恩人ハリー・マッケンナの暗殺。葛藤を抱えながらも、プロとしてこの仕事を引き受けることになる。

闇の犯罪組織に雇われて次々と「仕事」をこなしつつも、殺人の痕跡をいっさい残さない。誰とも組まずに孤独を受け入れる。まさしく、プロ中のプロ
闇の犯罪組織に雇われて次々と「仕事」をこなしつつも、殺人の痕跡をいっさい残さない。誰とも組まずに孤独を受け入れる。まさしく、プロ中のプロ

車椅子生活をおくる親友を抹殺するのは、友人を騙すことに対する苦悩を除けば、たやすいことであった。その後、親友の葬儀に出席したアーサーは、そこで親友の息子で乱暴者のスティーブと再会する。「オヤジがあんたに教えたことを俺も教わりたい」というスティーブの頼みを、父親を抹殺した罪悪感も手伝い、暗殺テクニックのすべてを伝授することに…。

最初の仕事こそ手際が悪かったが、スティーブはメキメキと腕を上げていった。

スティーブはメキメキと腕を上げていった

新たなミッションでスティーブとともに、標的が滞在するホテルに手際よく潜入するが、スティーブのちょっとしたミスから、派手な銃撃戦に突入。この頃から、完璧だった手際の歯車に少しずつ狂いが生じ始めていた。

ハリー・マッケンナが原因で死んだはずの男の突然の出現に、組織の裏切りを知るアーサー。また、父を殺したかもしれないアーサーに対するスティーブの疑念。誰を信じ、誰を敵とみなすべきか?混沌とした状況下、アーサーの命を懸けた戦いが始まろうとしていた…。

アーサーの命を懸けた戦いが始まろうとしていた…

チャールズ・ブロンソン主演のオリジナル版に比べ、ハードボイルド色が強く、ドライなタッチに仕上がっている。ジェイソン・ステイサムのプロに徹したスキのない姿勢、格闘、射撃、ドライビング・テクニック、また、オーディオ機器やヴィンテージカ―の知識までフォローする幅広いスキルが披露され、鍛え上げられた肉体を武器にリアルな暴力を見せている。

師匠と弟子の関係はクールで、友情や同情などのウエットな方向に走らない演出は、テンポが良く観ていて心地よい。最後に、スティーブはアーサーが父の仇と気づくが、スティーブに知られてしまったのをアーサーも逆に察知する。ここで、スティーブはアーサーを問い質したりしないし、アーサーも下手な言い訳をしない。2人の逡巡や葛藤を省き、あくまで生きるか死ぬかのドライな選択を迫る割り切り方が潔い。

ほんの少し、こんなシーンもある…

それまでに時々登場していたアナログオーディオや古いジャガーEタイプのレストアが伏線となるクライマックスシーンの緊張感ある演出はカッコいいの一言だ。

ただ1つ個人的に残念に思えるのは、弟子のスティーブ役のベン・フォスターが少々脆弱な感が否めないことだ。オリジナル版では、健康的なハンサムガイのジャン=マイケル・ヴィンセントが屈強な弟子を演じており、チャールズ・ブロンソンとのロートル殺し屋との対比が描かれていたような気がする。弟子の方が強そうなイメージの方が、何となく後半のせめぎ合いがより一層の緊迫感が生まれるような気がする。どう見てもジェイソン・ステイサムが強そうだもの…。また、雰囲気もステイサムのミニチュア版のようで、風貌が似通っているというのも何となく損をしているような気がする。

雰囲気もステイサムのミニチュア版のようで、風貌が似通っている

弟子のスティーブには、肉体美を誇るアシュトン・カッチャーくらいを起用すれば面白かったかも知れない…と、勝手にキャスティングするもの、映画のもう1つの楽しみ方かも…。

「完璧」と呼ぶにふさわしい男の奔走を堂々と描き切り、全米興行チャートで初登場3位に輝いた「メカニック」は、ハードボイルド好きにはたまらない作品である。21世紀の強靭な男の美学を体感してほしい!

 

キャスト スタッフ
アーサー・ビショップ:ジェイソン・ステイサム 監督::サイモン・ウェスト
スティーヴ・マッケンナ:ベン・フォスター 製作:デヴィッド・ウィンクラー/ビル・チャートフ
ディーン:トニー・ゴールドウィン レネ・ベッソン
ハリー・マッケンナ:ドナルド・サザーランド 製作総指揮:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ
サラ:ミニ・アンデン アヴィ・ラーナー/ダニー・ディムボート
バーク:ジェフ・チェイス トレヴァー・ショート/ボアズ・デヴィッドソン
リアム・ファーガソン 脚本:ルイス・ジョン・カリーノ/リチャード・ウェンク
クリスタ・キャンベル 撮影:エリック・シュミット
カタジナ・ウォレニオ 編集:トッド・E・ミラー/T・G・ハリントン
アダ・ミッシェル・ロリダンス 音楽:マーク・アイシャム
エディ・J・フェルナンデス 原案:ルイス・ジョン・カリーノ
   
   
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