2013年度鑑賞作品
レ・ミゼラブル
 
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愛、結城、希望…世界が泣いた、永遠に語り継がれる物語。
1985年の初演以来、鳴り止むことのない喝采。
ミュージカルの金字塔、舞台からいよいよスクリーンへ。

「あゝ無情」と言ってもアン・ルイスのヒット曲の事ではない…、というベタなギャグはさておき、文豪ヴィクトル・ユゴーが1862年に発表した大河小説「レ・ミゼラブル」は、150年の時を経ても現代にも十分通じる物語で、格差と貧困にあえぐ民衆が自由を求めて立ちあがろうとしていた19世紀フランスを舞台に展開する。

この不朽の名作を原作に、1985年にロンドンで初演されて以来、世界43カ国、21カ国語に翻訳され、6000万人を超える観客を動員しているこの作品は、紛れもなく世界で最も愛されているミュージカルの最高峰である。ちなみに、原題の「Les Miserables」は、「悲惨な人々」「哀れな人々」の意味。日本では始め、森田思軒が一部を「哀史」の題名で訳したが完訳には至らず、黒岩涙香が翻案、「噫無情(ああむじょう)」の題名で1902年10月8日から1903年8月22日まで「萬朝報」に連載された。

その舞台の興奮と感動を、超一級のキャストとスタッフの手によって、丸ごとスクリーンに封じ込めて完全映画化された。舞台を愛するファンにも満足のいく感動作に仕上がっている。

丸ごとスクリーンに封じ込めて完全映画化された

主人公のジャン・バルジャンは、パンを盗んだ罪で19年間投獄された男。仮釈放されたものの生活に行き詰まった彼は、再び盗みを働くが、その罪を見逃し赦してくれた司教の真心に触れ、身も心も生まれ変わろうと決意。マドレーヌと名前を変え、市長の地位に上り詰める。そんなバルジャンを執拗に追いかける警官のジャベール。そして、不思議な運命の糸で結ばれた薄幸な女性ファンテーヌ。彼女から愛娘コゼットの未来を託されたバルジャンは、ジャベールの追跡をかわしてパリへ逃亡。

コゼットに限りない愛を注ぎ、父親として美しい娘に育てあげる。そんな中、パリの下町で革命を志す学生たちが蜂起する事件が勃発し、誰もが激動の波に呑まれていく…。そう、超有名な物語だけに、観客の多くは結末に至るまでストーリーを熟知している。

観客の多くは結末に至るまでストーリーを熟知している

ミュージカルを舞台で観たこともほとんどないし、ミュージカル映画など心の奥底では何となく否定していた部類の人間だが、この映画の最後には涙に溢れていた。観客がいなければ嗚咽していたところだ。

イメージするミュージカル映画は、今まで普通に会話していたのに、突然歌いだし踊りだすというような違和感丸出しの展開である。しかし、この作品では言語が「歌」。そして、ダンスもない。しかも、取ってつけたような不自然さが微塵もない。辛辣な評論家が出演者の歌のテクニックをどうこういうのは勝手だが、登場人物のすべての歌唱力は本当に素晴らしく、会話より「歌」が自然であり、その感情がダイレクトに心に響き、魂を揺さぶる。

「英国王のスピーチ」でオスカーを受賞したトム・フーパー監督がこだわった、すべての歌を実際に歌いながら生で収録する撮影方法は、役者の感情のほとばしりがそのまま歌唱となって溢れ出し、ライブ感満点の醍醐味が味わえる。

会話より「歌」が自然であり、その感情がダイレクトに心に響き、魂を揺さぶる

怒りと憎しみを糧に苦痛に満ちた重労働に耐えてきた男は己の人生を呪い、神を恨みながら生き続ける。夢破れ不幸のどん底に突き落とされた女は、わずかな希望にすがりつく。社会の最下層で暮らす人々は搾取され貧困にあえぎつつ、それでも「明日」を信じている。そんな登場人物の願いがこもったメロディの数々は、美しくもあり切ない。映像と音楽は、苦難、絶望、歓喜、そして愛を高らかに歌い上げ、音楽の持つパワーが観客に深い感動を与える。

荒れた海で波が容赦なく打ちつける中、ジャン・バルジャンたち囚人が強制労働させられ巨大な帆船を引くオープニングから、迫力ある映像と荘厳な音楽で観客の心を惹きつける。そして、あっと言う間に2時間40分あまりの時間が過ぎる。

荒れた海で波が容赦なく打ちつける中、ジャン・バルジャンたち囚人が強制労働させられ巨大な帆船を引くオープニング

自分を偽る生き方を強いられながらも、人としての正しい道を模索し、波乱万丈の人生を歩むジャン・バルジャン。彼の心の旅を軸に多彩な登場人物の運命が交錯するドラマは、絶望的な環境にあっても、よりよい明日を信じ、今日を懸命に生き抜く人々の姿を19世紀フランスを舞台に、街並みや衣装などのディテールをリアルな映像美で描き出す。

その中心にあるのは、様々な形で表現される「真実の愛」。離れて暮らす娘コゼットを思いやるファンテーヌの母の愛。ジャン・バルジャンがコゼットに注ぐ無償の愛。コゼットのジャン・バルジャンに寄せる無垢な愛。コゼットと恋人マリウスの間に通い合う純愛。幾つもの愛のエピソードが、観客のエモーションを刺激し、忘れがたい名場面の数々を作り出していく。そして、ジャン・バルジャンとジャベール警部の対立する様がドラマチックに描かれる。

その中心にあるのは、様々な形で表現される「真実の愛」。

貧しさから豊かな髪を売り、その後、売春婦に身を落としたファンテーヌが魂の底から声を振り絞り歌う「夢やぶれて」。あれこれ夢見ていた幸せな少女時代を回想するが、現実のあまりに悲惨な状況に彼女の涙は止まらない。また、マリウスへの愛が消えないエポニーヌが、夜の街を彷徨いながら片想いの心を切実に歌い上げる「オン・マイ・オウン」や「ワン・デイ・モア」、クライマックスでの「民衆の歌」など、心揺さぶる珠玉のナンバーが勢揃い。そして、コゼットを引き取ったジャン・バルジャンが、彼女と新たな人生を送ることを心に誓い未來を願い歌う「Suddenly」は、オリジナル舞台の作詞・作曲家が手掛けた新曲。

貧しさから豊かな髪を売り、その後、売春婦に身を落としたファンテーヌが魂の底から声を振り絞り歌う「夢やぶれて」。

ジャン・バルジャンとコゼットの血のつながりを超えた父娘の絆は、苦悩と葛藤に満ちたジャン・バルジャンの人生がコゼットの存在によって報われ、未来へとつながっていくことを物語るシーンに、誰もが涙を誘われずにいられない。

それぞれの「命」を懸命に生き、役割を果たした「Les Miserables」が集い、誇り高く歌い上げるラストシーンは、そのまま我々の未来への賛歌でもあり、圧倒的な感動の極みに誘う。生きるのが難しい時代だからこそ輝きを増す人と人の絆。誰かのために生きることの尊さ。困難に立ち向かっていく勇気と、希望を持つことの大切さ。それらを高らかに謳いあげた「レ・ミゼラブル」は、まさに、時代を超えた名作である。そして、この映画版「レ・ミゼラブル」は、現代の私たちが求めている「もの」であり、共感できる作品だ。気品と堂々たる風格を備えたこの作品は、歴史に残る1本になることは間違いない。

「Les Miserables」が集い、誇り高く歌い上げるラストシーン

昨日お伝えしたアカデミー賞ノミネート作品に、この「レ・ミゼラブル」も含まれている。他の作品はまだ観ていないので、はっきりとしたことは言えないが、この作品は「作品賞」の受賞に値する作品である。

この作品は「作品賞」の受賞に値する作品である。

 

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