2013年度鑑賞作品
LOOPER/ルーパー
 
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未来に追われ、過去にとり憑かれる

昨日はエロいテディベアが活躍する「テッド」の公開初日だったのだが、先週から公開されている「LOOPER/ルーパー」を鑑賞。タイムマシンが開発された近未来を舞台に繰り広げられるちょっとドキドキするような設定のSFサスペンス作品は以前から興味津々だった。

タイムマシンをテーマにした作品は、一度考え始めるとパラドックス状態に追い込まれることになる。しかし、いろんな「?」を無視すると、けっこう楽しめるし、面白いものだ。

LOOPER/ルーパー

近未来。タイムトラベルが可能になった世界では、その影響力の強さから政府がタイムトラベルを禁止しためアンダーグラウンド化し、タイムトラベルは犯罪組織のみが利用するようになったというのが物語のバックボーンである。

完璧な管理社会である2074年では監視技術が進み、個人は完全な監視下にあった。そのため、人を殺しても死体が感知され、捨て場所がないという状況。つまり、犯罪組織もそう簡単に邪魔者を始末することができない時代。そこで彼らは、使用が禁止されているタイムマシンを入手。この発明品はいまだ不完全で、30年前の過去にしか行けない一方通行だが、殺したい相手を証拠を残さずに消し去るため過去に転送する目的には最適。

邪魔者を縛り上げ、タイムマシンで30年前の過去で殺害すれば完全犯罪となる。彼らは30年前にエージェントを送り込み、「ルーパー」と称する殺し屋集団を組織させ、その時代の闇組織に殺害を実行させていた。「ルーパー」の仕事は簡単。指定された時間に指定された場所で待機していると、急に頭に袋をかぶせられた標的が転送されてきて、それをラッパ銃といわれる処刑専用の銃でズドン。はい、任務完了ってな具合である。標的は背中に銀のインゴットを背負っており、それが「ルーパー」への報酬となる。なかには、金のインゴットを背負っている標的がやってくることもある。その標的は何と30年後の自分なのだ。未来の自分を処分した「ルーパー」は、「ループを閉じる」ことになり、「ルーパー」を引退、残り30年間の余生をそれなりに生きていくという運命が待っている。

「ルーパー」の仕事は簡単

凄腕「ルーパー」として名を馳せるジョーは、日々単純な仕事をこなしていた。仕事の後は派手な夜遊びと麻薬というお約束の自堕落な生活をエンジョイ。ある日、親友のセスがジョーのアパートに逃げ込んできた。セスは未来の自分を殺せなくて逃がしてしまうというドジを踏んだ。未来の自分を処刑できなかったことは、今の自分が殺されることを意味する。悩んだ末、セスを秘密の場所に匿うが、今までの報酬をすべてフイにする気かと組織に脅され、仕方なく親友の隠し場所を吐露。

。仕事の後は派手な夜遊びと麻薬というお約束の自堕落な生活をエンジョイ

未来のセスを殺すため、かなり斬新で残酷な方法が披露されるが、それは劇場で「恐怖感」と「不気味さ」を体験してほしい。それ自体がその後のスリルを生む伏線にもなっていて見事だが、しかし、よく考えると「何もそこまでしなくても…」と思えるのだが…。

自分の財産と引き換えに親友を組織に売った罪悪感と遣る瀬無さに落ち込んでいたジョーに新たな処刑オファーが届く。予定の時間から少し遅れて転送されてきた標的は、頭に袋がかぶされていなかった。一瞬、たじろぐジョー。標的の目を見たジョーが30年後の自分だと思ったのか、標的が禿げ頭だったからちょっと驚いたのかは定かではないが、引き金を引くことをほんの少し躊躇したジョーは不意を突かれ、オールド・ジョーに逃げられてしまう。これでセス同様、組織から命を狙われることになるジョー。

ジョーに新たな処刑オファーが届く

SF映画ファンの多くは、超クーをルな未来的ガジェットの登場や衝撃的で派手な映像、そして、斬新な設定を期待する。しかし、この作品ではカッコいい未来的アイテムはほとんど(まったくではないところが憎い…)登場しないし、街並みも荒廃して現在と似通っている。後半の大半はのどかな農場が舞台となり、ある意味SF映画らしくない。しかし、それを上回る斬新な設定がキモである。

もう1つ、従来のタイムトラベル系の「同じ時に同じ者が同時に存在してはならない」というセオリーを見事に覆している点がユニーク。現在の自分と30年後の自分が同じテーブルで喋っている…、それも「タイムトラベルのこと聞かせてくれ」と尋ねても「タイムトラベルの話は断る。複雑すぎる。どうでもいい…」という恍けたセリフで応酬する。

そして、目の前にいる30年後の自分は「殺し」のターゲット。30年前の自分にどんなに説明しても相手の考えが読めるから無駄な事。お互い目の前に年齢の違う別人格の自分が存在する。何となく絆を感じつつも、「敵」という居心地の悪さも入り混じる2人。テーブルをはさんで対峙するシーンは、互いの腹の内を探り合いながらも困惑と不安が凝縮され、濃厚な緊迫感が辺りに充満する。

「同じ時に同じ者が同時に存在してはならない」というセオリーを見事に覆している点がユニーク

どうしてブルース・ウィリスが袋をかぶらずにタイムトラベルしてきたかというところが、この作品の重要なポイントであり、オールドジョーから過去にやってきた目的を知らされると、ストーリーは急激に複雑な様相を呈し、先読み不能のスリリングな展開が観客をスクリーンに釘付けにする。知的な興味を刺激する丁々発止のせめぎ合いが続き、予想不可能なラストに突っ走る。

また、荒んだ生活に明け暮れるヤングジョーは、30年後の自分から「愛」の素晴らしさを教えられ、逃亡中に出会う母と子に、他人とのふれあいが孤独を癒し人生を豊かにしてくれることを学ぶ。この作品のもう1つのテーマは、自分本位に生きていた主人公の心の成長にあるようだ。そして、自分の運命を悟ったとき、ヤングジョーの取る行動にこの作品のすべてが集約される。

逃亡中に出会う母と子

ヤング・ジョーを演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットのイメージは、どちらかというとイケメンの優男。それが、30年後には禿げ頭のタフガイ、ブルース・ウィリスになっているなんて…。でも、ヤングジョーの仕草や表情がブルース・ウィリスにどことなく似ているのだ。このソックリ感を出すために、レヴィットには毎日3時間かけて特殊メイクが施された。ちなみに、彼自身もブルース・ウィリスの動きや喋り方を徹底的に研究したという。

レヴィットが30年を経てブルース・ウィリスになっていく過程を1分程度のダイジェストで見せる映像は面白い映像だが、頭髪がどんどんモト冬樹状態になっていく様は何となく哀れというか、レヴィットファンには酷かもしれない。ただ、決してブルース・ウィリスと似てるとは言い難いジョセフ・ゴードン=レヴィットが、アカデミー賞に2度のノミネート経験をもつ日本人メークアップアーティストの辻一弘の特殊メイクによって変身していくシーンは必見だ。

レヴィットが30年を経てブルース・ウィリスになっていく過程を1分程度のダイジェストで見せる映像は面白い映像

フランス語を勉強し、フランスに行きたいと願っているヤングジョーだが、まわりからは「今は中国語だぜ」ってな感じで、この作品では中国の影響力が強く描かれている。オールドジョーは上海で暮らしていたことを考えると、やはりどこかの時点でフランスから中国に進路変更したようだ。これも、現代の世相を反映しているようで興味深い。

一昔前の「ベスト・キッド」は日本が注目されていた時期だったが、ジャッキー・チェンが師匠役を演じたリメイク版「ベスト・キッド」の舞台は中国。今は中国のプレゼンスが相当強いようだ。今後も中国が何らかの形で登場する作品が増えることは間違いないだろう。ただ、ハリウッドが中国をどのように描いていくかが注目される。

全編が未来っぽい映像でないだけに、荒唐無稽なストーリーだが妙にリアル感漂う世界観が存在する。過去と未来が交錯する世界で2人の自分がぶつかり合う。こんな奇抜なアイデアのタイムトラベルは、いままでにないエンターテイメントを誕生させた。

重箱の隅を楊枝でつつくような粗捜しや「?」を気にせず、無邪気に鑑賞するべし!きっと楽しめる作品になること間違いない。ちなみに、予告編で観たブルースオヤジの主演する「ダイ・ハード/ラスト・デイ」が2月14日に公開される。こいつも抜群に面白そうだ。

きっと楽しめる作品になること間違いない

 

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