2013年度鑑賞作品
ライジング・ドラゴン
 
2013年度インデックス
2012年度のバックナンバー
2011年度のバックナンバー
2010年度のバックナンバー
top
ジャッキー最後のアクション超大作

これが最後のアクション映画という前宣伝の「ライジング・ドラゴン」は、ジャッキー・チェンが世界中を飛びまわるトレジャーハンターに扮したアドベンチャー活劇。有終の美を飾るには、少々中国向けの映画に仕上がっている。

清朝時代、贅の限りを尽くして建てられた円明園。しかし、欧州列強の侵攻により邸は破壊され、美術品はことごとく略奪されてしまった。そして、現在、円明園の遺物で国宝級とされる「十二生肖」は、その1つ1つがオークションで巨額で取引されていた。12体すべてが揃ったらどれほどの値がつくのか…?美術品ディーラー大手の社長ローレンスは、世界中のコレクターの元に散らばっているすべての像を手に入れるべく、伝説のトレジャー・ハンターのJCに高額の報酬で仕事をオファーする。

ライジング・ドラゴン

JCは、サイモンら信頼できるメンバーと共にチームを結成。仏貴族の末裔のキャサリンや、盗品の文化財を本国に戻す活動をする中国人女子学生ココらも巻き込み、作戦を開始する。パリ、南太平洋などを飛びまわり、1つ、また1つと像を集めるが、どうしても見つからないドラゴンの像には、思いもよらない陰謀が隠されていた。

というような映画的ストーリーなのだが、19世紀に北京の円明園にあった「十二生肖獣首銅像」を英仏が侵略・略奪したという歴史的事件を題材にしており、現在も再建計画が進んでおり、実際に中国当局が買い戻しを推し進めているという。「ライジング・ドラゴン」は、中国の国策に沿った政治的ドラマなのか、まったくのバラエティ作品なのか、微妙なところである。

ちなみに、中国政府は近年になって流出した宝物などの回収に本腰を入れており、円明園の西洋式建築西洋楼の一角をなす海晏堂の十二支像のうち「丑」「申」「寅」「亥」「午」は中国企業が約10億3400万円で購入し、中国政府に返還した。2009年2月には、イヴ・サン=ローランが所有していた「卯」と「子」の像が競売にかけられる事が判明し、中国側は購入のため交渉に乗り出した。

作戦を開始する

結局、2月25日に銅像はそれぞれ1570万ユーロ(当時の日本円で約39億円)で民間組織「海外流出文化財救出基金」の顧問を名乗る蔡銘超により落札されたが、「金を払うつもりはない。中国人としての責任を果たしただけだ」と語り、結局代金を支払うことはなかった。だが、これに対しては国外はもとより、中国国内でも批判の声が上がり、中国国家文物局も「個人的行為」だと表明し、国の関与を否定するにいたった。

一方、蔡銘超の発言に対し、所有者だったサン=ローランのパートナー、ピエール・ベルジェが「中国が人権を守り、ダライ・ラマ14世がチベットに帰還出来るなら中国政府に銅像を引き渡してもいい」と発言したことから中国は反発。2体の像は現在もベルジェが所有している。

現在は、中国人による海外での骨董購入ブームの波が日本にも及んでいる。日本各地で開催される中国古代の書籍や芸術品のオークションが、多くの中国人観光客を魅了しているという。中国人旅行者の存在は、日本の骨董市場に活力を与えると同時に、古美術品の祖国への還流を促していると言える。

今回の作品ではフランスが盗賊の子孫とばかりに非難の対象になっている

実際、京都あたりではプロのバイヤーが日本の骨董品には目もくれず、日本にある中国の骨董品を買い漁っているようだ。日本もバブル時代にはヨーロッパの絵画を買い占めた過去があるが、中国の場合は同じ買い漁りでも愛国心という大義名分が幅を利かしているようだ。

最近では「盗まれた物は盗み返す」という事案が実際に起こっているだけに、このストーリーはけっこう生々しい。今回の作品ではフランスが盗賊の子孫とばかりに非難の対象になっているが、外交問題に発展しそうなデリケートなテーマをさらりと映画にしてしまうジャッキーの感性は、愛国心の為せるワザか能天気なのか判断は難しい。

愛国心の為せるワザか能天気なのか判断は難しい

日本も辿ってきた道なので、中国のナショナリズムを一方的に断罪することは出来ないが、南太平洋の財宝が隠された島も「これは尖閣諸島なのか」と思えてしまうし、海賊も日本語を喋っている。ま、中国人の従来からある日本人観を茶化したヒストリカルなジョークということなのだろう。大雑把でご都合主義のストーリーが、その辺りを上手くぼかしている。美術品の贋作という興味深いプロットも極めて雑に扱われているところが、かえって往年の香港映画の愛すべきデタラメさを彷彿とさせ、何となく懐かしくもある。

往年の香港映画の愛すべきデタラメさを彷彿とさせ、何となく懐かしくもある

来年には還暦を迎えるジャッキー・チェン。大スターになった今も、出来るだけ自分自身でアクションをこなす彼は長年の無理がたたって身体はボロボロに違いない。近年の作品ではアクションは控えめの、お師匠さんのような役柄が多かったのも頷ける。

ただ、今回は最後と言うだけにアクションは凄い。ローラーブレード・スーツに身を包み、驚きの逃走アクションを披露してからは、まさにノンストップ状態でジャッキー・アクションの集大成と言える作品に仕上がっている。燃え盛る火山に向かい地上数千メートルの上空で繰り広げられるスカイダイビングをしながらのバトルもハラハラドキドキもの。ジャッキー映画恒例のおまけのNGシーンでは、そのバトルの撮影シーンがチラッと映っているが、「ほ〜、こうやってるのか」ってな具合である。

ローラーブレード・スーツに身を包み、驚きの逃走アクションを披露
燃え盛る火山に向かい地上数千メートルの上空で繰り広げられるスカイダイビングをしながらのバトル

また、ライバルのトレジャーハンターとソファーから離れずに闘うというとぼけた制約の中でみせるカンフーアクションは、ジャッキーらしいコミカルさと身近なものを上手く使う創意工夫に満ちた演出がまさに真骨頂。思わずスクリーンに魅入ってしまう。

ライバルのトレジャーハンターとソファーから離れずに闘うというとぼけた制約の中でみせるカンフーアクション

そして、チームの紅一点でテコンドーの達人ボニーのお色気?シーンも秀逸。脚の長さに脱帽である。ただ、せっかくの足技で盗んだ鍵がどうのように使用されたかは不明。こんな意味のないシークエンスがけっこう有難いかも…。

チームの紅一点でテコンドーの達人ボニーのお色気

余談ながら、今回の作品にはあっと驚く人気スターたちがほんの小さな役で友情カメオ出演している。骨董鑑定を学ぶソルボンヌ大学生ココの弟で敵に捕らわれてしまう青年には台湾のイケメン俳優のチェン・ポーリン、ラストで「産まれる」って病院へ運ばれるデビッドの妻には、香港映画界の女優スー・チー。映画の中でジャッキーが電話で口喧嘩している相手、ラストに1カットだけ映るJCの妻役には、ジャッキーの実際の奥様であり、30年ぶりに映画出演となる女優ジョアン・リンが扮しているのもお楽しみ。

ジャッキーのアクション超大作がこれで見納めになると思うと残念であり少々寂しい。エンディングでジャッキー本人のナレーションでわざわざ明言しているのだからホントのことなのだろう。ジャッキーのようなアクションができる俳優は今後なかなか出現することはないだろう。過去に観たジャッキーの作品が走馬灯の如く駆け巡る思いである。テーマといい、最後のアクション作品といい、感慨深い作品である。

最後のアクション作品といい、感慨深い作品である

 

pagetop
<< Back Next >>
 
ホーム