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ラストスタンド
THE LAST STAND
 
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武器なし、応援なし、あるのは4人の仲間と奇策のみ。
最後の砦に勝ち目ナシ!

お帰り!シュワちゃん。アーノルド・シュワルツェネッガーの記念すべき復帰作「ラストスタンド」は、「ターミネーター3」以来、10年ぶりの主演作品。「エクスペンダブルズ2」のトレンチ役で軽い肩慣らしをした後での完全復帰作は、現代版西部劇とも言えるアクション活劇。

お帰り!シュワちゃん

元ロサンゼルス市警察の麻薬捜査課精鋭部隊に所属していたが、職務で部下7人を失い、その後は退職してメキシコとの国境付近のソマートンという田舎町で保安官としてのんびり暮らしているレイ・オーウェンズという役どころ。

冒頭、道端にパトカーをとめてボ〜っとドーナツを食べている若い警官の横を、目にも止まらぬ速さで駆け抜けていく無灯のスポーツカー。観客にはそれがクルマだとわかるが、ドーナツに夢中の彼にはわからない。計測器の時速300キロオーバーの測定値からジェット機だと思ってしまう能天気さがステキ。このクルマがこの作品での裏の主役といえる働きぶりを見せるチューンアップされた最新鋭のシボレー・コルベットZR1のカスタムカー。

最新鋭のシボレー・コルベットZR1のカスタムカー
最新鋭のシボレー・コルベットZR1のカスタムカー

画面はメキシコ国境付近の田舎町へと切り替わる。小さな町は地元ハイスクールのフットボールチームの応援へ出掛けようと賑やかな真っ最中。消火栓の横に駐車違反をする市長を諌めるシュワちゃんだが、緊急時はクルマを退かしてよと、キーをシュワちゃんに投げ、「傷つけないでね」と、これまた能天気な市長。この市長の真っ赤なカマロZL1の新車が裏の主役第二弾。このクルマの行く末は観客の期待を決して裏切らない。アメリカの誇る2台のグラマラスカーのバトルはなかなかの迫力である。

真っ赤なカマロZL1

一方、深夜のラスベガスでは護送中の麻薬王コルテスが仲間に奪還される事件が勃発。FBIの女捜査官を人質に圧倒的スピードとパワーを誇るコルベットでメキシコ国境へ向けて爆走するコルテスは、プロレーサー並みのドライビングテクニック。

コルテスは、プロレーサー並みのドライビングテクニック

FBIはパトカーやヘリコプターを駆使し総力を挙げてコルテスを足止めしようとするが、コルテス一味の妨害で壊滅状態。FBIから凶悪犯罪者集団が国境の突破を狙ってソマートンを通過しようとしているという情報がオーウェンズに届く。その頃、オーウェンズの部下が町の郊外で脱出工作する武装集団と遭遇し、銃撃戦で亡くなるという事件が起こる。

コルテス一味の妨害で壊滅状態

援軍のない状況下、オーウェンズは戦闘経験のない部下やユニークな助っ人数人と共にコルテスの逃走を阻止するべく「最後の砦(ラストスタンド)」として立ち上がる。自宅で武器博物館を運営する武器オタクで、コレクションの銃に名前を付けるという変わり者ルイスから古びた武器を調達し、いざ決戦。数で勝る強敵に立ち向かう素人同然集団の戦いは、まさに王道の古典的西部劇を彷彿させる。

オーウェンズは戦闘経験のない部下やユニークな助っ人数人と共にコルテスの逃走を阻止するべく「最後の砦(ラストスタンド)」として立ち上がる
オーウェンズは戦闘経験のない部下やユニークな助っ人数人と共にコルテスの逃走を阻止するべく「最後の砦(ラストスタンド)」として立ち上がる

このポンコツ助っ人集団のキャラが濃い。各々がいい味を醸し出しているところが嬉しい。派手なようでけっこう地味な銃撃戦は、最近のド派手なドンパチとは違った趣があり、けっこう骨太のアクションが展開される。また、古臭いリボルバー拳銃など、古き佳き時代の西部劇へのオマージュも忘れない。

いろんなことを深く考えず、単純な勧善懲悪の物語はやはり娯楽活劇の醍醐味。ちょいとロートルになった感は否めないが、まだまだシュワちゃんの存在感は絶大。スクールバスで現場に登場し、後部の扉をドバーンと開け、年代物のガトリング銃を乱射して悪党どもを木端微塵に粉砕する爽快さ。スカッとするシーンである。

年代物のガトリング銃を乱射して悪党どもを木端微塵に粉砕する爽快さ

かつてのようなマッチョさは少々失せ、歳をとり体力も衰え、痛めつけられ、傷だらけになり、それでも、昔に失った多くの仲間の為、また、自分のプライドのために戦い続ける男の意地のような迫力は充分伝わってくる。そして、「歳かな」という自虐的なセリフもユーモラスであり、町の住民との絆やチームワークもほっこりとして心地良い。過去の主演作品の多くは単独で戦う不死身のヒーロー役だったシュワちゃんの復帰作は、頼りないけど気のいい仲間を大切にする人間味溢れる主人公を好演する。

自分のプライドのために戦い続ける男の意地のような迫力は充分伝わってくる

田舎町の象徴のようなトウモロコシ畑で視界が遮られた中でのカーバトルは、お互いのクルマ同士が殴りあっているかのような雰囲気があり、最後には国境の渓谷に架けられた橋のド真ん中での肉弾戦が用意されているというサービス。やはりシュワちゃんの映画にはガチンコタイマンの殴り合いは外せない。

視界が遮られた中でのカーバトルは、お互いのクルマ同士が殴りあっているかのような雰囲気

そして、映画のラストでシュワちゃんが言う「This is my home」は、長らく政界で活躍した彼のハリウッドへのカムバックを表明しているようなセリフである。また、最後にコルテスを連行するシーンは、クルマと馬が違っているだけで、まったく西部劇のラスト同然である。

「ラストスタンド」は韓国の映画監督であるキム・ジウン初のハリウッド作品。2010年には、チェ・ミンシク、イ・ビョンホン出演のスリラー映画「悪魔を見た」が公開され、ワシントンD.C.映画批評家協会賞、ヒューストン映画批評家協会賞、セントルイス映画批評家協会賞などにノミネートされた監督である。

シュワルツェネッガーが今でも「アメリカのヒーロー」であることを世に知らしめるため、あえてアメリカ映画の王道であり、古典的な西部劇のモチーフを駆使し、シュワちゃんを魅力を存分に発揮させている監督の彼に対するリスペクトや愛情のようなものを感じてしまう。

シュワルツェネッガーが今でも「アメリカのヒーロー」

ナルシストの麻薬王をはじめ、現場を仕切るコルテスの腹心の部下もけっこうゲスい魅力を振りまいている。悪役の存在が勧善懲悪モノのキモだけに、なかなか良いキャスティングとキャラ設定だ。

そこそこの迫力と泥臭さが入り混じり、伝統版西部劇に韓国風味のバイオレンスのエッセンスをちょこっと加えたシュワちゃん復帰作は、ズバリ面白い。画面の中で「絵」になる存在であることを証明した作品に仕上がっていることは間違いない。「リオ・ブラボー」に代表される古い西部劇を愛するファンなら、また違った楽しさが味わえるかも知れない。

たシュワちゃん復帰作は、ズバリ面白い

興行的にアメリカではコケたと噂されている。莫大な資金で制作する最先端CGなどをフンダンに駆使したド迫力映像を見慣れた最近の観客には、いかにも手作り風のアナログ感漂う作品には満足できない心中も何となく察することはできるのだが、このような映画こそ評価してほしいものだ。

観終わった後のスカッとする清々しさを、ぜひ劇場で味わってほしい。

観終わった後のスカッとする清々しさを、ぜひ劇場で味わってほしい。

 

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