2013年度鑑賞作品
ホワイトハウス・ダウン
 
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ホワイトハウス壊滅。
エメリッヒ監督の新ディザスター映画。

またホワイトハウスが破壊され乗っ取られた。6月に公開された「エンド・オブ・ホワイトハウス」を鑑賞しただけに、今回の作品との違いが気になるのは当然の事。映画レビューでも、今回の方がイイとか、前の方が面白かったなどと、両者を比較する内容の寸評が多い。

ストーリー的にも似通っているところも多々あるし、両者とも「ダイ・ハード」感は否めない。確かに、主人公をジョン・マクレーンにすれば、「ダイ・ハード」シリーズの最新版としても十分通用する雰囲気だ。

ホワイトハウス・ダウン

しかし、比較するなんてまったくのナンセンスで野暮ってものだ。どちらも面白いことは間違いない。フレンチが好きか、イタリアンが好きか、やはり和食ですか…ってな感覚だ。味付けの差で個人によって好き嫌いが分かれるようなものである。

以前、「エンド・オブ・ホワイトハウス」の寸評でも書いたが、チョイ昔までのハリウッド映画の悪役は、ソ連が代表選手だったが、連邦崩壊で敵がいなくなったアメリカはそれをエイリアンに見出した。そして、21世紀に入ると中東がターゲットになり、そして、フセインやビン・ラディンがいなくなれば、お次は北朝鮮。ハリウッド映画はいつも「敵」を作って成長する。中国が標的になってもおかしくないのだが、ま、いろいろとオトナの事情が存在するのだろう。

ハリウッド映画はいつも「敵」を作って成長する

今回は外敵ではなく、自国内に敵を求めた。現在、誰もが諍いのない平和を願っているが、戦争を飯のタネにする人々や企業が少なからず存在するのもこれまた事実。彼らにとって「外敵からの脅威」が無くなれば、失業の憂き目を見る。

ジェイミー・フォックス演じるアメリカ合衆国第46代大統領ソイヤーは、中東から米軍を撤収しイラン新政権と和平を結ぼうとしていた。そして、中東からアメリカ軍全部隊を撤収し、軍事費の多くを同盟国の貧困に苦しむ人々への財政支援に使用するという歴史的演説を終え、専用ヘリコプターでホワイトハウスに戻ってくるところから物語はスタートする。

一方、イーライ・ラフェルソン下院議長の警護官ジョン・ケイルは、大統領警護官を強く志願していた。離婚した元妻との娘エミリーは11歳ながら「政治オタク」というかソイヤー大統領の大ファン。このあたりの設定は日本では現実味が少ないが、何ともアメリカらしい。

元妻との娘エミリーは11歳ながら「政治オタク」

エミリーの学芸会の予定をすっかり忘れていたためにすっぽかしてしまったジョンは、名誉挽回とばかりコネを頼りにホワイトハウス見学チケットを2人分入手。「ただの旗を振るだけの学芸会だった」と、それまでご機嫌斜めだったエミリーは、見事破顔一笑。大統領警護官の面接試験に合わせ、2人はホワイトハウスへ向かう。

大統領警護官の面接試験では、かつてジョンと恋人関係にあったが、現在ではシークレットサービス次席特別警護官となっているキャロルが担当。アフガニスタンで上官を救ったジョンの功績は名誉あるものだが、大学が夜学だったことや成績が決して良くはなかったこと、議会警察官としての勤務態度の悪さなどを指摘され、結果不採用となってしまう。

大統領警護官の面接試験では、かつてジョンと恋人関係にあったが、現在ではシークレットサービス次席特別警護官となっているキャロルが担当

意気消沈のジョンはエミリーと一緒にホワイトハウスツアーで憂さ晴らし。ここで登場するツアーをガイドするホワイトハウスの生き字引ドニーの存在が後々生きてくる。自分を上回る知識のドニーにエミリーの尊敬の眼差しが可愛い。

ツアーをガイドするホワイトハウスの生き字引ドニーの存在が後々生きてくる

ホワイトハウス内で偶然大統領に会ったエミリーは大感激。スマホの動画で単独インタビューに成功。YouTubeに掲載許可を得たエミリーは喜色満面。大統領もノリノリだ。このあたりの描写はいかにも現代的。一昔前では考えられないシチュエーションだ。

スマホの動画で単独インタビューに成功

まさにそんなタイミングで、隣接する議事堂のドームが爆破され、謎の武装集団がホワイトハウスを襲撃、占拠するという前代未聞の事態が発生。武装グループの一団は次々と施設内を制圧し、ツアー参加者も人質に取られることに。ただ、運よくトイレに行っていたエミリーは難を逃れる。

隣接する議事堂のドームが爆破

ここからは怒涛の展開。武装集団の黒幕は内部にいた。25年間シークレットサービスに在籍したマーティン・ウォーカー長官の息子は、大統領が命じた秘密作戦で戦死していた。その私怨がクーデターの引き金となっている様子だが、果たしてそうなのか。

ちなみに、ウォーカー長官を演じたジェームズ・ウッズは、なかなか渋い玄人受けする俳優。空軍士官学校へ入学する予定だったが、入学前に事故に遭い断念。「SAT (大学進学適性試験)」で満点の800点を獲得し、奨学金の全額給付を受けてマサチューセッツ工科大学の政治学を学ぶが、在学中から舞台に立っており、後に中退。オフ・ブロードウェイで舞台役者としてデビューし、1972年に映画デビュー。IQ180の高い知能の持ち主であり、米教育情報サイト「SuperScholar.org」により「世界で最も頭のいい10人」の1人に選ばれている。

ウォーカー長官を演じたジェームズ・ウッズ

サスペンスをじっくり味わうヒマもなく、ハリウッドでも指折りの「破壊王」で知られるローランド・エメリッヒ監督ならではの、盛大なぶっ壊しバトルが展開する。「インディペンデンス・デイ」「デイ・アフター・トゥモロー」「2012」など、やたらと壮大な世界観とド派手な破壊描写が得意のエメリッヒ監督が、ホワイトハウスという監督からすればかなり小さな舞台でのアクションをどのように料理するのかひじょうに興味が湧く。

盛大なぶっ壊しバトルが展開する
盛大なぶっ壊しバトルが展開する 盛大なぶっ壊しバトルが展開する

この作品は、ド迫力のスケール感より、いろんなディテールが充実している。今ではオバマ政権の経費節減政策でホワイトハウスの見学ツアーは中止になっているが、エメリッヒ監督はホワイトハウス内をできるだけリアルに描くことに力を注ぎ、一般的には解放されていない中枢部まで忠実に再現した。大統領がマリリンモンローとの逢引に使ったという地下通路が登場するが、実際にあるかどうかは定かではない。ただ、ホワイトハウスというのはひじょうに興味深い建物であることは間違いない。

ホワイトハウスというのはひじょうに興味深い建物であることは間違いない

そして、まさかのカーチェイスシーン。大統領を乗せる専用車は「ザ・ビースト」という愛称で呼ばれており、装甲車のような防弾装置が施されている他、攻撃用の武器まで搭載されている巨大なリムジン。そして、ホワイトハウスの庭を舞台に「ザ・ビースト」による派手なカーチェイスシーンは案外新鮮で迫力がある。

ホワイトハウスの庭を舞台に「ザ・ビースト」による派手なカーチェイスシーンは案外新鮮で迫力がある

この作品のポイントの1つは、大統領とジョンがコンビが運命共同体になり武装集団と闘うというバディ・ムービー的要素を含んでいるところにある。大統領がちょっと天然のためか、激しいアクションの合間にユーモラスなセリフと仕草で観客を和ませてくれる。この辺りの緩急は、全編シリアスムードで突っ走った「エンド・オブ・ホワイトハウス」とは少々違うところかもしれない。

大統領とジョンがコンビが運命共同体になり武装集団と闘うというバディ・ムービー的要素を含んでいる

そして、エミリーの存在。スマホを武器に武装集団を隠し撮りし、それをYouTubeにアップするシークエンスは拍手ものの大活躍。彼女のおかげで犯人たちの素性が判明。エミリーを演じるジョーイ・キングは、これから続々と公開映画が続く注目の子役。また、ラストでホワイトハウスを守る勇敢なシーンも、学芸会での演技が伏線として活かされ、観客の目頭を熱くする。

ラストでホワイトハウスを守る勇敢なシーンも、学芸会での演技が伏線として活かされ、観客の目頭を熱くする

アメリカや大統領を守るというより、娘のエミリーを救出したいという「公私混同」的活躍のジョンを演じるのは今や売れっ子スターのチャニング・テイタム。アクションもほとんど自分でこなす頑張りで、娘思いの父親役を好演している。ジョンとエミリーの親子ドラマ的要素も作品の大きなポイントであり、物語を盛り上げる。

ジョンとエミリーの親子ドラマ的要素も作品の大きなポイント

そして、普通なら最初の頃にあっけなく殺されていても不思議ではない、ツアーガイドのドニーの活躍も見逃せない。官邸に所蔵されている古今の名器に通暁しており、それらを無造作に破壊するテロリストが許せない。命がけで抗議するがまったく相手にされない。そんなドニ―がジョンの危機を救うべく、彼の取った行動とセリフが痛快そのもの。良いアクセントになっている。

世界のほぼ全域を影響下に置き、実質的に地球で一番権力を持つ人間であるアメリカ大統領。選ばれる過程は日本でも詳しく報道されるが、大統領が在職中に死亡・辞職した場合は副大統領が後継につき、さらに新大統領も職務不能になったとき上院議長が大統領権限を引き継ぐ。そして、前任者が機能不全に陥ったと確認されると数名の閣僚の前で宣誓するだけで大統領の地位に就く。

もちろん非常事態に煩雑な手続きを踏んでいられない事情はわかるが、選挙戦が国を挙げての祭りなのに比べあまりにもあっけなく決まってしまう落差は新鮮であり少々怖い。

前任者が機能不全に陥ったと確認されると数名の閣僚の前で宣誓するだけで大統領の地位に就く

合衆国大統領の権限として最も重要なものは核兵器の発射ボタンを有する事であり、その権限が民意を代表していない人物に簡単に移動することは恐怖である。まさに「ホワイトハウス・ダウン」の本質はこのあたりにある。また、鉄壁の防御を誇るホワイトハウスも、内部から裏切り者に手引きされると簡単に陥落しているが、当然ながら現実には起こってほしくないことだ。

軍需産業で私腹を肥やす輩の姿がチラホラ垣間見える辛辣な社会風刺劇をベースに、爆破とアクションと親子愛の味付けで痛快なエンターテイメント作品に仕上げられている。

爆破とアクションと親子愛の味付けで痛快なエンターテイメント作品に仕上げられている

「インデペンデンス・デイ」ではエイリアンに木っ端微塵にされ、「デイ・アフター・トゥモロー」で氷漬けにされ、「2012」では津波に襲われたホワイトハウス。そして、今回はテロリストによる破壊と、壊し方にもだんだん現実味を出しているエメリッヒ監督。監督はホワイトハウスに何か恨みでもあるのかと訝ってしまう。

インデペンデンス・デイ

拍手喝采もののエンディングも心地良く、娯楽大作としての見応えも十分。実に良くできた夏休み映画である。

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