2013年度鑑賞作品
ウルヴァリン:SAMURAI
 
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未知なるSAMURAIの国で
不死の男が初めて直面する「死」の恐怖。
ウルヴァリンは日本で散るのか?

ワイルドな風貌に宿した孤高の魂、あらゆる物質を切り裂く爪、驚異的な治癒能力に支えられた不老不死の肉体を持つ、「X-メン」シリーズの人気キャラであるウルヴァリン。前作の「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」では南北戦争以前から生き続けていることが明かされたが、今回スピンオフ作品の第2弾は原爆投下時の長崎に居合わせたことでストーリーが展開する。

the wolverine

ウルヴァリンにはトレードマークのカギ爪と並ぶもう1つの武器、治癒能力がある。その効果ゆえに彼はミュータントのままあらゆる時代を生きねばならない。それは永遠の孤独に等しい悲しすぎる宿命と言える。

今回の作品の舞台はほとんどが日本。東京都港区の増上寺をはじめ、新宿、秋葉原、上野、アニメ「崖の上のポニョ」のモデルにもなった広島県福山市の鞆の浦など、日本の各地で大掛かりなロケーションが実施され、公開前から大きな話題になった。例によって、ハリウッド映画お馴染みのユニークな「日本」が登場したり、地理的矛盾も多々あるが、そんな事を気にしていてはダメ。「北の玄関口」上野駅から新幹線に乗って長崎方面に向かうというのもご愛嬌である。また、増上寺での葬式シーンなどで警備の人間が堂々とマシンガンを構えていたりするツッコミどころもそっとしておこう。

日本の各地で大掛かりなロケーションが実施
増上寺での葬式シーン

基礎的な知識として、ウルヴァリンと「X-メン」シリーズに登場していたジーンとの関係を知っておいた方が、わかりやすい。2作目の最後に犠牲になったジーンが実は生きており、もう1つの人格である「フェニックス」が目覚めてしまうってのが3作目の「X-MEN:ファイナル ディシジョン」。この「フェニックス」がやたらと強い。恩師をも粉砕する彼女の暴走にウルヴァリンが下した決断はあまりに切なかった。

ウルヴァリンが下した決断はあまりに切なかった

そんな感情を引きずったままカナダで隠遁生活を送っていたウルヴァリンに、かつて長崎で命を救った軍人で、今では大物実業家となった矢志田の使者が訪ねてくる。死期が近い矢志田が直接ウルヴァリンに礼を伝えたいという。そして、使者としてウルヴァリンを日本へと導く剣の達人ユキオ役には福島リラが抜擢された。「ドルチェ&ガッバーナ」の2004年春夏キャンペーンモデルとして契約してからは一気に国際的なモデルとして注目された彼女は、今回、日本のポップカルチャーを代表するようなヴィジュアルで独特の存在感を発揮する。

剣の達人ユキオ役には福島リラが抜擢
剣の達人ユキオ役には福島リラが抜擢 剣の達人ユキオ役には福島リラが抜擢

哀しみを抱きながら生き続けるウルヴァリンに「死」を与えるという謎めいた言葉を残しながら矢志田は命尽きてしまう。この時矢志田老人の横たわるベッドがアート作品ともいえる素晴らしい作品?。ちょっとした感動間違いない。こんなベッドがあればいいと本気で思ってしまう。

こんなベッドがあればいいと本気で思ってしまう

葬儀に参列したウルヴァリンは、ヤクザ組織に襲われた矢志田の美しい孫娘マリコを救い逃避行。銃で撃たれたウルヴァリンは、今までの治癒力が上手くいかないことに愕然。治癒能力を失ったウルヴァリンは、心身に凄まじいダメージを負い、初めて「限りある命」を意識する。

しかし、弱っていてもウルヴァリン、疾走する新幹線の上でのアクションシーンはかなりの迫力と面白さ。日本人女性マリコとの切ないラブ・ストーリーを絡めたエモーショナルなストーリーの中に、タフで過激なヒーローの内なる葛藤と、ウルヴァリンに仕掛けられた罠の謎が徐々に浮かび上がる。

今までの治癒力が上手くいかないことに愕然
疾走する新幹線の上でのアクションシーンはかなりの迫力と面白さ

ハリウッドが日本の伝統文化への深いリスペクトをこめたこの作品には、巨大な矢志田邸の日本家屋のセットなど、映像の隅々にまで「和」の美学が息づいている。そして、超ハイテクとのギャップも見逃せない。

超ハイテクとのギャップも見逃せない
超ハイテクとのギャップも見逃せない

東洋武術のエッセンスをふんだんに取り入れたアクション・シーンの数々も、このうえなく新鮮なスリルと興奮を呼び起こす。矢志田の息子である信玄を演じる真田広之とウルヴァリンの「爪VS二刀流」の火花を散らす超絶バトルは大きな見所の1つであり、素晴らしいダンスシーンのような滑らかさとキレがある。ただ、残念なのが矢志田信玄という男のポジションがイマイチはっきりせず、ウルヴァリンの敵という訳でもなく、味方でもない。ひじょうに中途半端な立ち位置である感が否めない。

矢志田の息子である信玄を演じる真田広之
「爪VS二刀流」の火花を散らす超絶バトルは大きな見所の1つ

ヒーローものの醍醐味はその敵にある。敵の強靭さが最後のカタルシスを生む。今回は敵の存在が分散しすぎている点が残念だ。ウルヴァリンが何のために誰と闘っているのかがひじょうに分かり難い気もする。結局マリコを守るだけに終始した展開が少々寂しい。ただ、ミュータントの女性がけっこう美人。なかなか不気味な存在だ。

ミュータントの女性がけっこう美人
なかなか不気味な存在だ

そして、ヒロインのマリコ役を射止めたのは、「ラルフローレン」や「エンポリオアルマーニ」など錚々たるワールドキャンペーン広告、雑誌への出演を果しているTAO(岡本多緒)。長らく黒髪の長髪であったが、2009年2月のニューヨーク・コレクションの時期に、後に「TAOヘアー」「TAOカット」「TAOショート」と呼ばれるようになる前髪を切りそろえた特徴的なマッシュルームカットにした。そして、フィリップ・リムに見出され、ショーのトップバッターに抜擢され、フィナーレでは一緒に舞台挨拶をした。リムは「TAOヘアー」を大変気に入って、出演モデル全員を「TAOヘアー」にするという演出を行い話題なった。

TAO(岡本多緒)

続くロンドン、ミラノ、パリでも好評で、計58のブランドのショーに出演、これは世界で第5位の出演数。多くのエージェントやメゾンの目に留まり、2009‐2010年秋冬コレクションで大ブレイクを果たした。なお、2009年4月に「スタイルドットコム」が選ぶ09/10年秋冬コレクションで活躍した新人モデル10人の内の1人に選ばれ、同年6月には第52回FEC賞「FECモデル・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。現在はニューヨーク在住で、177センチの長身美女である。

TAO(岡本多緒)
TAO(岡本多緒)

究極の和洋折衷というべき画期的なハイブリッドムービーは、多少のくすぐったさや「なんでやねん」を無視すれば、案外日本人が一番楽しめる作品なのかも知れない。そして、不老不死のウルヴァリンが力を失うことで初めて「命」の尊さを知り、孤高の「SAMURAI」になっていく。

孤高の「SAMURAI」になっていく

余談ながら、ヤクザの1人に格闘家の小川直也の姿や、矢志田の葬儀シーンではヒュー・ジャックマンの大ファンである関根勤の娘である関根麻里がエキストラとしてカメオ出演しているので、チェックを忘れずに。

なお、「X-MEN」シリーズの1作目と2作目の監督をしたブライアン・シンガーがカムバックし、シリーズとしては7作目になる「X-MEN:デイズ・オブ・フューチャー・パスト(X-Men: Days of Future Past)」が2014年に公開が予定されている。この作品は原作のクリス・クレアモントとジョン・バーンが1981年に執筆したストーリー「デイズ・オブ・フューチャー・パスト(英語版)」をもとにブライアン・シンガーが原案を書き、サイモン・キンバーグ、マシュー・ヴォーン、ジェーン・ゴールドマンによって脚本化された。ちなみに、製作・脚本の1人であるヴォーンはオリジナル三部作の前日譚である「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」の監督・脚本を務めていた人物。

「X-MEN:デイズ・オブ・フューチャー・パスト(X-Men: Days of Future Past)」が2014年に公開が予定

「X-Men: Days of Future Past」は、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」及びシリーズ3作目「X-MEN:ファイナル ディシジョン」の両方の続編として登場する。オリジナル三部作からはパトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ハル・ベリー、アンナ・パキン、ショーン・アシュモア、エレン・ペイジ、ダニエル・クドモアのお馴染みのキャストが、また、「ファースト・ジェネレーション」からはジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルトが出演する。ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンも当然出演し、このシリーズで唯一の皆勤賞である。

ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンも当然出演し、このシリーズで唯一の皆勤賞である

主要撮影は2013年4月よりカナダのモントリオールで始まり、8月に完了。2014年7月18日に公開が予定されている。詳しいストーリーは定かではないが、1970年代を舞台とした物語となり、元アメリカ合衆国大統領のリチャード・ニクソンが登場するという。また、ブライアン・シンガー監督は、タイムトラベル、弦理論、多元宇宙について話し合うために映画監督のジェームズ・キャメロンと会ったことを明かしている。

エンドロールが始まると席を立つ観客もチラホラ見受ける。しかし、ここはトイレに行きたいのをもう少し我慢してスクリーンを見続けよう。エンドクレジットの間に「X-Men: Days of Future Past」に繋がる場面が登場する。お楽しみに。

トイレに行きたいのをもう少し我慢

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