2014年度鑑賞作品
大脱出/Escape Plan
 
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アクション界の2大レジェンドが初の本格共演を果たす。
攻略型脱出エンターテインメント!

大脱出/Escape Plan

犯罪率の高いアメリカでは、成人の100人に1人に当たる230万人が刑務所や拘置所に収監されているという。そのため刑務所はいつも定員オーバーの状態。囚人の人権もあるため収容所の質も上げなくてはならなく、政府はコスト削減のために民間企業による刑務所経営を認めている。刑務所ビジネスに手を出す民間企業は入居率の悪いマンションを刑務所にして急成長する。

刑務所・監獄もの、脱獄もの、囚人もの…、多少テイストは違うかも知れないが、このジャンルの映画は映画草創期から製作され続け、人気カテゴリーに属することは間違いない。閉ざされた空間を舞台にすることで濃いドラマが生まれ、クセ者揃いのキャラクターを配置してメリハリがつけやすい。そして、概ね無実の主人公がさまざまな困難の末に脱獄を成し遂げ自由を手にするカタルシスがたまらなく爽快。

脱獄を成し遂げ自由を手にするカタルシスがたまらなく爽快

監獄が抑圧された社会を象徴し、人種・思想で差別されることなく犯罪者であれば平等に蹂躙されるがゆえに偏見を超えた紐帯が生まれやすい側面もあり、その状況下で生まれる友情や自由を獲得するための戦い、連帯感が現実と違って自然に描かれる。いたいけな主人公たちが一致団結、理不尽な支配や虐待に立ち向かう構図は観客たちの溜飲を下げる。

しかし、刑務所もの、脱獄ものバリエーションのアイデアが出尽くした感のある現在では、何となく時代遅れと思われても仕方ない題材である。そんな、ある意味王道ではあるが古色蒼然とした刑務所脱獄ムービーに、シルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーの二大スターがガッツリ取り組んだ「大脱出」。

シルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーの二大スターがガッツリ取り組んだ「大脱出」

スタローン主演の「デモリションマン」では2032年の米国大統領がシュワちゃんだったり、シュワちゃん主演「ラスト・アクション・ヒーロー」では「ターミネーター2」の主役がスタローンだったりと、お互いの主演映画でオチャメぶりを発揮するほど昔から仲のいい2人。当時から共演を望まれており、本人たちは乗り気だったが諸事情から実現はせず、そのうちシュワちゃんはカリフォルニア州知事に当選し、芸能界から引退。その後、声優やカメオでちょこちょこ出演していたが、2010年にスタローン主演・監督、アクションスター総出演の「エクスペンダブル」でシュワちゃんがカメオ出演、両雄初共演が実現。それから「エクスペンダブル2」を経て、本格的共演作でW主演となったのが今回の作品である。

本格的共演作でW主演となったのが今回の作品

「大脱出」は二枚看板が注目されるが、ビッグネームに負けないほどシナリオの出来が素晴らしい。犯罪者と偽り入獄、その刑務所の弱点を突き脱獄を成功するセキュリティ・コンサルタントのレイ・ブレスリン。彼は脱獄することで刑務所の「穴」を指摘する脱獄のプロ。

シナリオの出来が素晴らしい
犯罪者と偽り入獄 彼は脱獄することで刑務所の「穴」を指摘する脱獄のプロ

ある日、CIAから政府も関知しない民間運営の刑務所の脱獄の依頼が舞い込む。そこに収監されているのは世界の秩序を脅かす重犯罪者ばかり。レイは社会的な意義を感じ依頼を引き受ける。「墓場」と異名を持つ民間刑務所は、絶対脱獄不可能と言われているが、実はレイ自身が考案し、それを元に設計されていた。念のために緊急避難コードを暗記し、腕に発信機を埋め込み指定された場所で迎えを待つレイ。ところが、そこに現れた男はレイをスタンガンで気絶させ、腕の発信機を抜き取る。そして、目隠しされたレイは車内に放り込まれた。

気がつくと周囲から丸見えのガラス張り独房。監視カメラが常時レイを見つめ、マスクを被った武装看守が警備に当たっていた。尋問室に連れて行かれたレイは所長のホブスから非難コードはおろか外部との連絡の絶たれていることを知り、また、自分の考案した以上に改良を加えられている刑務所に改めて危険な状況にいることに気付く。

気がつくと周囲から丸見えのガラス張り独房
マスクを被った武装看守が警備

脱獄策を練るレイの前に、囚人たちのボス格であるロットマイヤーが現れる。国際指名手配中のテロリスト「マンハイム」に唯一繋がる人物であるロットマイヤーは、看守も迂闊に手を出せない囚人であった。独房からの脱獄を狙っていたレイは、ロットマイヤーと殴り合いのケンカをして、あわよく独房に放り込まれる。独房でレイは脱獄には協力者がいる事を感じ、ロットマイヤーに自分の正体を打ち明け協力を求める。

ロットマイヤーに自分の正体を打ち明け協力を求める

ここからがスタローンとシュワちゃんがガッツリ絡んでくる。殴り合い、そして、腹の読めないロットマイヤーを相棒として共謀しながら脱出プランを練るレイ。また、刑務所には様々な思想犯で埋め尽くされており、脱獄計画に加わるムスリムの囚人が登場。このムスリムの侠気に胸を熱くする観客も多いことだろう。目的のために信仰の違いを乗り越えて団結する熱い男のドラマは感動を呼ぶ。

スタローンとシュワちゃんがガッツリ絡んでくる
熱い男のドラマは感動を呼ぶ

まだまだ現役のアクションスターだが、以前のように腕っぷしだけで難局を乗り切るにはさすがにお年を召したお2人。この作品のレイは明晰な頭脳を持つ人物として描かれており、緯度を知るために「六分儀」を自作すると思えば、現在位置を知るために地球の自転による「コリオリの力」を利用するなど相当に賢い設定。

ただ、シュワちゃんがヘリコプターに設えた銃座から機関銃を外して敵をなぎ倒していく往年のアクションシーンは健在。まさに歌舞伎役者の見得を切るような決めのシーンを彷彿させ、お約束のサービスカットとはいえ、観客は惜しみない喝采を贈る。

シュワちゃんがヘリコプターに設えた銃座から機関銃を外して敵をなぎ倒していく往年のアクションシーンは健在
まさに歌舞伎役者の見得を切るような決めのシーン

この作品の大きなミスは、予告編やマスコミ、ニュースサイトなどの映画紹介で、絶対言及してはいけない「刑務所の構造上の最大の秘密」を当たり前のようにばらしていることに尽きる。この作品に登場する鉄壁の刑務所の秘密がどのようなものか知らずに観ればもっとハラハラドキドキするはずで、登場人物と緊張感を共有することができる。彼らがどうやってその秘密を知るのかという興味にシフトとする感覚はいかがなものか。

ま、些細なことはこの際無視して、「ロッキー」「ランボー」と「ターミネーター」の主演同士が同じスクリーンの中で頑張っている姿が観れるだけでも幸せってなものである。演出的にも両者に華を持たせたガチンコ勝負は、老いてますます元気なスターたちの心意気を見るようだ。

老いてますます元気なスターたちの心意気を見るようだ

刑務所の運営を民間軍事会社にしたアイデアが優れた脚本とはいえ、社会風刺の効いた見応えある作品に仕上げたスウェーデン出身のミカエル・ハフストローム監督の手腕はなかなかのものである。ストックホルム大学で映画を学んだ後、ニューヨークの大学で美術を学び、映画評論家やテレビ映画監督を経て、2001年に「Days Like This」で劇場映画を初めて監督。ちなみに、2011年に公開されたハフストローム監督の「シャンハイ/Shanghai」では、ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファと共に渡辺謙、菊地凛子が出演している。

ハフストローム監督の「シャンハイ/Shanghai」

余談ながら、監獄からの脱獄映画のセオリー通り冷酷な所長が登場するが、スタローンとシュワちゃんの前では何とも影が薄く存在感が乏しいのは致し方のない事。

所長を演じるジェームズ・カヴィーゼル
スタローンとシュワちゃんの前では何とも影が薄く存在感が乏しい

所長を演じるジェームズ・カヴィーゼルは、1991年に映画デビューしたが、1999年公開の「シン・レッド・ライン」で主役に抜擢されるまで端役が続いた。なお、「シン・レッド・ライン」以降は主役級の作品が多くなっている。

映画ラストでの心地良いどんでん返しが爽快だ。すべての展開が「なるほどね…」ってな具合に明らかに。これはもう劇場で楽しむしかない。

これはもう劇場で楽しむしかない

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