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ウルフ・オブ・ウォールストリート
 
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実在したウォール街の株式ブローカーのダイナミックな成功とセンセーショナルな破滅を描く、仰天、興奮、衝撃のエンタテインメント!

「ウルフ・オブ・ウォールストリート/The Wolf of Wall Street」は、実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートの回想録「ウォール街狂乱日記-「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生」を原作とした彼の波乱の人生を映画化した作品。

ウルフ・オブ・ウォールストリート/The Wolf of Wall Street

この作品の監督であるマーティン・スコセッシと主演のベルフォートを演じるレオナルド・ディカプリオとのコンビは今回で5作目。過去には、2002年の「ギャング・オブ・ニューヨーク」、2004年「アビエイター」、2006年「ディパーテッド」、2010年「シャッターアイランド」でタッグを組んでいる。

第71回ゴールデングローブ賞においてディカプリオが映画演技賞(ミュージカル・コメディ部門)で主演男優賞を獲得し、もうすぐ発表されるオスカーにも、「作品賞」「主演男優賞」「監督賞」「助演男優賞」「脚色賞」と5部門にノミネートされている作品とはいえ、誰からも好かれる映画でないことは間違いない。

誰からも好かれる映画でないことは間違いない
誰からも好かれる映画でないことは間違いない

「大好きなディカプリオの映画だから…」「何か面白そう…」「何か楽しそう…」「家族と鑑賞に行きたい…」「恋人と鑑賞に行きたい…」と何気に考えている方には、まずおススメできない。いろんな映画に慣れている方には何でもないかも知れないが、あまりこの手の作品に馴染みのない方や免疫力の少ない方には少々ドン引きするか唖然とするかも知れないほど品性お下劣極まりない作品に仕上がっている。結局、「お金に関する不正の話」「ドラッグ描写満載」「SEXやヌード描写満載」という、ある意味「R-18指定作品」にも納得の作品である。ただ、残酷な暴力シーンなどはないのでその辺りは妙な緊張感が無くて良い。

しかし、「こんな下品な映画許せない」という批判は的外れ。「ドラッグ描写が不快」「SEX描写が多すぎる」と言ったところで、実話をもとに製作されている訳で、これでもかなり抑えているようだ。主人公本人の実際の私生活はもっと凄かったってことは、ま、常人の理解を遥かに超えているという事だ。

常人の理解を遥かに超えている

肩の力を抜いて気楽に観ればこれほど面白い作品はない。上映時間何と3時間と言う長尺だが、長さを感じることのないスピーディーな展開に時間を忘れてしまう。良し悪しは別にして、上映時間の大半はパーティとドラッグとSEXのドンチャン騒ぎシーン。従来の栄光と挫折のサクセスストーリーものはけっこうシリアスな作品が多いものだが、この作品に限っては軽佻浮薄で下品さ全開。70歳を超えるマーティン・スコセッシ監督のエネルギッシュで狂気の沙汰ともいえるほどの暴走演出が潔い。ディカプリオのドヤ顔もステキ。

ディカプリオのドヤ顔もステキ

ウォール街には「金」にまつわる豪快な逸話が幾つも転がっている。そのなかでもとてつもなくスケールの大きな話が、26歳で証券会社を設立し、年収4900万ドル(約49億円)を稼ぎ出し、10年間の栄光の果てに36歳で楽園を追放された男ジョーダン・ベルフォートの物語。「成功」「放蕩」「破滅」そのすべてにおいて彼はいまだ誰も超えられない破格の伝説を誇る。

学歴もコネもなく、やる気だけでウォール街に飛び込んできた22歳の青年ジョーダン・ベルフォート。この時までジョーダンは「いい投資を客に教え、儲けてもらって喜んでもらう」ことが優秀な証券マンの在り方だと信じていたが、上司ハンナに会って考え方が一変。ハンナは昼間っから酒やコカインを嗜む破天荒な男。そして、ジョーダンへのアドバイスも凄い。「アホな投資家の財布から金を巻き上げることが証券マンの仕事だ」と言い切る。そして、株で儲けるには酒と女とドラッグが不可欠と付け加える。

上司ハンナに会って考え方が一変
株で儲けるには酒と女とドラッグが不可欠と付け加える

そんな無茶苦茶なアドバイスにジョーダンは目から鱗。それから6か月、必死に勉強をしてブローカーの資格を取り、さあ稼ごうと思った矢先、ブラック・マンデーで会社は倒産。

ここで登場した上司のハンナを演じたマシュー・マコノヒーに注目。物語の最初の頃の短い出演だったが、彼の存在感はデカプリオを完全に喰っている。

彼の存在感はデカプリオを完全に喰っている

テキサス州ウバルデでアメリカンフットボール選手からトラックの運転手に転じた父と教師である母の間に生まれたマコノヒーは、アイルランド系アメリカ人。大学卒業後にロサンゼルスへ移り住み、有名なタレント・エージェンシーと契約していくつかの作品に出演。若き日のポール・ニューマンを彷彿とさせる精悍なマスクで注目を集め、「評決のとき」の主役の座を見事に射止めた。この作品はアメリカ映画の若手スターのほとんどがオーディションを受けたと言われ、彼は並みいるスターをおさえて主役の座を勝ち取ったことになる。

2005年の「ピープル」誌で「最もセクシーな男性」に選ばれ、2007年にも同誌の「最もセクシーな独身男性」に選ばれたマコノヒーは、2011年に公開された「リンカーン弁護士」以降の作品における演技は多くから称賛されている。特に、スティーブン・ソダーバーグ監督の「マジック・マイク」でストリップクラブのオーナー役での演技は高い評価を得て、アカデミー賞へのノミネートも期待されていた。マコノヒーのノミネート漏れに疑問を呈する評論家は多かったという。

ストリップクラブのオーナー役

また、HIVに感染した主人公を演じるために38ポンドもの減量を行った「ダラス・バイヤーズクラブ」では、デカプリオ同様、第86回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。ちなみに、現地時間3月2日にカリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッドのドルビー・シアターで授賞式が行われる。例年は2月最終日曜日に行われているが、2014年はソチオリンピック中継に配慮して4年ぶりに3月開催となった。

38ポンドもの減量を行った「ダラス・バイヤーズクラブ」

そして、マコノヒー演じるマーク・ハンナがジョーダンを鼓舞するために教えた胸を叩きながらのハミング曲が妙に印象的。劇中にデカプリオがもう1度、そして、エンドロールでもアレンジされ立派な曲として登場する。何となく耳に残る曲だが、撮影中にマコノヒーが即興で口遊んだものという。

また、ジョーダン・ベルフォートの片腕となるドニーを演ずるジョナ・ヒルも、この作品で第86回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。彼は2011年公開の「マネーボール」でブラッド・ピット演じるビリー・ビーンの若い助手を演じ、その演技が評価されて第84回アカデミー賞の助演男優賞にもノミネートされた実績がある。

ジョーダン・ベルフォートの片腕となるドニーを演ずるジョナ・ヒル

羽振りの良さそうなジョーダンに月に幾ら稼いでいるのかと強引に聞き出し、給与明細書を見せられた瞬間に子分になることを即決するシークエンスなどはけっこう笑え、この作品の中にあってはホッコリするシーンである。これが実話なら、 このドニー・アゾフという人物もやはり変人であることは間違いないところだが、この人物は原作の複数人を集約させたオリジナルキャラクターということらしい。ただ、作品の中の変人同士の奇妙な友情関係はひじょうに興味深い。

給与明細書を見せられた瞬間に子分になることを即決
奇妙な友情関係はひじょうに興味深い

入社した証券会社の倒産後、少額株の売買で法外な手数料を請求する場末の小さな証券会社とも言えないようなオフィスに再就職したジョーダン。始業と共に電話をかけまくり、一度食らいついたら相手が買うまで受話器を置かない。客が利益を得ればさらに別銘柄を勧め、損を出しても舌先三寸で言いくるめる。

株取引で楽してリッチになろうなどと思うやつらはクズ、彼らからは搾り取れるだけ搾り取ってもまったく良心は痛まない。一方、濡れ手に粟で儲かるが、ライバルは多く油断するとすぐに蹴落とされる。そんな教えを実践し、たちまち頭角を現すジョーダン。

たちまち頭角を現すジョーダン

ウォール街で学んだセールストークと場末の仲買オフィスのシステムを巧みに組み合わせ、短期間に莫大な財産を築き上げ、自分の会社「ストラットン・オークモンド」社を設立。小さなガレージで始めた会社だったが、金持ち相手に優良株を売って信用させ、次にリスクの高い小型株を売りつけるというジョーダンが作った勧誘マニュアルを社員に実践させると、これが見事に当たり業績はうなぎ登り、数年後には数倍の広さを持つゴージャスなビルの一室に引っ越し、マスコミをにぎわす風雲児となった。

マスコミをにぎわす風雲児となった

金が入ると生活も一変するのはお約束。常軌を逸した浪費ぶりとゴージャスな私生活。ま、スケールの大小はあるにせよ成金の行動パターンは似通っているものだ。ただ、ジョーダン・ベルフォートは別格で、スクリーンの中での彼の行動はあまりに強烈すぎて、観客には理解や共感は皆無かも知れない。それほどぶっ飛んでおり、よく生きていられるよなぁ〜というのが正直なところ。昼間からオフィスで乱交に溺れ、ドラッグをキメ、お祭り騒ぎを繰り返す。肯定するわけではないが、これらの行動は1つ間違えればどん底に急降下しかねないストレスと日々戦い、セックスやドラッグで脳内快楽ホルモンを過剰に分泌させていなければ精神の均衡を保てない危うさの裏返しでの行動とも言える。

金が入ると生活も一変するのはお約束

また、彼の才能の1つである何百人もの社員を興奮させるアジテーションテクニックは素晴らしく、インパクト絶大。毎朝その演説でアクの強いトレーダーたちを鼓舞させて稼がせるという独特のマインドコントロールにも似たスピーチはこの作品の見どころの1つ。きっと観客も魂が揺さぶられる感覚を味わうことができるだろう。このテクニックをどこかの企業経営者が採用したいと真剣に考えたとしても不思議ではない。ま、実際に実践している企業もあるかも知れないが…。

彼の才能の1つである何百人もの社員を興奮させるアジテーションテクニック

アメリカは自由競争の社会。そして、映画「ウォール街」でマイケル・ダグラス扮するゴードン・ゲッコーの言う「強欲は善だ」という価値観がまかり通っている。しかし、ここまで派手な振る舞いは当然、証券取引委員会やFBIも黙っちゃいない。何となく草刈正雄を彷彿させるカイル・チャンドラー扮する捜査官パトリック・デナムとの攻防が面白い。

何となく草刈正雄を彷彿させるカイル・チャンドラー扮する捜査官パトリック・デナムとの攻防が面白い

アメリカには「司法取引」という便利な制度がある。FBIの捜査の前に次第に追いつめられたジョーダンは、結局パトリックとの「司法取引」に応じることにするが、土壇場で心変わり。この行動に怒ったパトリックは、「なめんなよ!」とばかり猛攻勢。ここから資金隠しに奔走するジョーダンたちの姿が妙にオチャメだが、不正は不正、決して褒められるものではない。

資金隠しに奔走するジョーダンたちの姿が妙にオチャメ

スリリングな攻防戦が続くが、結局FBIの圧力に屈するジョーダン。アメリカ流の「司法取引」は、往々にして「仲間の情報を提供すれば、自分の罪を軽くしてやる」という取引であり、ジョーダンが仲間を売っていく姿は寂しいものがある。ま、はなからビジネスマンの信義に欠ける人物だけにこれも仕方ないといえばそれまでだが…。

ジョーダンが仲間を売っていく姿は寂しいものがある

ただ、逮捕され、仲間を売り、女房からは三行半を叩き付けられても、出所後には自叙伝を書いたり、「モーティベーショナル・スピーカー(成功の秘訣や失敗の経験談などを講演などで伝える職業)」としてセミナーで講師をしたりとしっかり儲けるバイタリティはさすがである。ちなみに、作品の最後に登場するセミナーの司会者がジョーダン・ベルフォード本人である。お見逃しのないように。

セミナーの司会者がジョーダン・ベルフォード本人

余談ながら、この作品は女性ヌードやセックスシーンがテンコ盛りだが、日本人(個人的なのかも知れないが)の感性にはあまりエロっぽさは感じられない。陰湿なジメッとしたところに猥褻を感じる日本人特有の性癖(個人的なのかなぁ〜)には、スポーツ感覚のメチャ明るいセックスにエロはない。そして、あまりにも多くの女性が1度に登場するので焦点が定まらない。ただ、張りのある美しいヒップラインにはそそられる…。

この作品は女性ヌードやセックスシーンがテンコ盛り

また、この作品の魅力の1つにマシュー・マコノヒーやジョナ・ヒル以外の脇役陣のキャスティングにある。スイスの銀行家をユニークに演じたのは、2011年の主演映画「アーティスト」でカンヌ国際映画祭男優賞及びアカデミー賞主演男優賞をはじめ、様々な賞を受賞したフランス人俳優のジャン・デュジャルダン。とぼけた銀行家を熱演。

フランス人俳優のジャン・デュジャルダン
フランス人俳優のジャン・デュジャルダン

「スタンド・バイ・ミー」や「恋人たちの予感」の監督で有名なロブ・ライナーは、ジョーダンの父親役で出演。ジョーダンの会社で数少ない良識派として作品を支えている。そして、ジョーダンの再婚相手であるナオミを演じるマーゴット・ロビーの美貌も目の保養になる。

ロブ・ライナーは、ジョーダンの父親役で出演
ロブ・ライナーは、ジョーダンの父親役で出演 ナオミを演じるマーゴット・ロビーの美貌も目の保養
ナオミを演じるマーゴット・ロビーの美貌も目の保養

度肝を抜くエピソードの宝庫であり、最低にして最高のカリスマのジョーダン・ベルフォートの半生を映画化した「ウルフ・オブ・ウォールストリート」。彼のジェットコースター人生と桁違いのゴージャスぶりを常識と良識を一時忘れ、破天荒な人生を楽しむ驚愕のエンタテインメント作品である。

またまた余談ながら、「ウォール街のウルフ」と呼ばれたジョーダン・ベルフォートは警備の最も軽い刑務所で3年過ごしただけで出所。この作品のミソは、こうした放逸な行為や卑劣な行動と受ける罰が釣り合っていないところにある不条理さなのかも知れない。

度肝を抜くエピソードの宝庫であり、最低にして最高のカリスマのジョーダン・ベルフォートの半生
度肝を抜くエピソードの宝庫であり、最低にして最高のカリスマのジョーダン・ベルフォートの半生 度肝を抜くエピソードの宝庫であり、最低にして最高のカリスマのジョーダン・ベルフォートの半生
度肝を抜くエピソードの宝庫であり、最低にして最高のカリスマのジョーダン・ベルフォートの半生

ちなみに、約15人で構成される管財人弁護団は、会社整理に2006年まで数千時間を費やした。連邦検察当局や会計士の助けも借り、被害者1513人のために約1200万ドル(約12億円)を回収。被害者は破綻した証券会社に1億2000万ドル請求していたから、10分の1の回収率であった。

また、回収された資金以外にも3年の服役後2006年4月に出所したジョーダン・ベルフォートは被害者に賠償金を支払うよう命じられた。裁判所資料によれば10月時点でジョーダンは1160万ドル支払った。ジョーダンはまた、自らの総所得の50%を引き渡すよう求めた2003年の裁判所命令に基づき支払いを続けている。

裁判所命令に基づき支払いを続けている

しかし、彼が賠償金を十分支払ったかどうかについて法的ないざこざも続いており、10月半ばの裁判所文書によれば、裁判所判事はジョーダンを「デフォルト(破産)」させる申し立てを取り下げさせた上でジョーダン提出の文書を基に解決策を探っているという。

ウルフ・オブ・ウォールストリート/The Wolf of Wall Street

 
The Wolf of Wall Street Official Trailer
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