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2017 Apr. 1

突然のオファー

長年生きていると面白いことに出くわすものだ。「Touch the Heartstrings」ではクルマネタがけっこう多く、それも個人的に最も好きな「アストン・マーチン」に関するネタが多いのも事実である。

先日、アストン・マーチン ジャパンの広報担当の方から突然のメールをいただき、驚いた。そして、その内容にこれまた驚愕。「Touch the Heartstrings」の読者である広報担当の方から信じられないようなオファー。

昨年販売が開始された「DB11」を1年間貸し出すので、試乗モニターになり、月1回「DB11」でのドライブ体験記のエッセイを書いてほしいとのこと。「こんなことってあるの…」。まさに、狐につままれたような、青天の霹靂というか、「う、うそ〜」ってな感じである。

DB11

さらに、毎月5万円のガソリン代とメンテナンスや修理にかかる費用が発生すれば「アストン・マーチン」が負担するという太っ腹な申し出。ただし、屋根付きの駐車場は用意してほしいとのこと。ま、これくらいは何とかしないと申し訳ない気もする。

そして、エッセイは、「アストン・マーチン」のウェブサイトで連載する…、こんな夢のようなオファーが届いた。

さて、エイプリルフールのネタはさておき、今日は時計のお話。

ROMAIN JEROMEとZENITH

「ROMAIN JEROME/ロマン・ジェローム」は、2004年創業の若い会社。

ROMAIN JEROME

このブランドのコンセプトは、近過去、つまり、ここ100年くらいの間に起こった大事件のDNAを時計に組み込み、未来に残していくこと。その出来事に関わる「物質」を時計に組み込み、形を変えその出来事の遺産・遺伝子を残そうというものである。

ROMAIN JEROME

「ROMAIN JEROME」の2017年のハイライトは「ドンキーコング」。任天堂が1981年にアーケードゲームとして世に送り出し、1983年にはファミリーコンピューターに移植されて世界中でヒットした作品である。

Donkey Kong

「パックマン」「テトリス」「スーパーマリオ」「スペースインベーダー」と、ここ数年、アーケードゲームの世界観を文字盤に表現してきた「ROMAIN JEROME」だが、今年はマリオがはじめてゲームキャラクターとして登場した「ドンキーコング」が発表された。

Donkey Kong

このマリオ、最初から名前があったのではなく、当初は「ジャンプマン」と形容されていたようだ。障害物をジャンプでかわし、足場を渡って囚われた姫を助ける内容は、その後のゲーム文化の礎となり、ゲームにストーリー性をもたらしたことでもエポックと考えられている。

ジグザグな8bitキャラクターは、すべてコールドエナメル製法で表現。

Donkey Kong
世界限定81本 214万円(税別)

スイスの職人が丁寧に樹脂を塗り重ねるコールドエナメル技法で描かれている。3層のピクセルのなかに樹脂を塗り、乾かしており、塗装剤が枠線のなかに盛られているアナログ感がカッコイイ。文字盤に描かれたキャラクターは動きはしないが、見つめているとゲームに夢中になった時代の記憶が呼び覚まされてくるようだ。

「スウォッチ」グループで、「ジャケ・ドロー」のブランド再構築を行い、ブランドを復権と再生に導いたマニュエル・エムシュは、若いブランドの「ROMAIN JEROME」のクリエイティブディレクターに2010年に就任し、ウォッチメイキングの世界に新風を吹き込んだ。

マニュエル・エムシュ

このブランドを「エモーショナルなアート」と形容。時計が必ずしも必要とされていない現代において、だからこそ自分たちの「作品」にはストーリーを込めたいと訴える。

1972年生まれのマニュエル・エムシュは、14歳で初めてアメリカを訪れたのは、交換留学生となった姉のホームステイ先を訪ねるためだった。「その時の記憶が、私にとっては鮮明に心に残っている」と、エムシュ。憧れのテレビゲーム、ポップコーンの甘い香り、ティーンエイジャーだけのドライブ。スイスの片田舎に育った彼にとって、何から何までが眩しく映った。そのテレビゲームがマリオ。マリオはエムシュにとってのフリーダムの象徴でもあった。

マリオ

自分にとっての時計とは、古き良き記憶を思い起こさせるエモーショナルなもの。単に時刻を告げる道具ではなく、記憶を辿るという意味で、むしろ時を止めるような道具だとコメントする。

現代の高級腕時計とは、すなわち精巧さを愛でる精密機械であり、ステイタスの象徴。それらは、どのブランドの腕時計にも共通する事実。そして、時計でストーリーを語るというのも多くのブランドが手掛けてエイル。ただし、「ROMAIN JEROME」ほど、アップトゥデイトな角度から鋭角に切り込んでくるブランドは存在しない。

しかも、かつて「ジャケ・ドロー」という古典派なブランドを再興させた立役者でもあるマニュエル・エムシュ。真逆とも言える両ブランドだが、エムシュは、変わらぬ手法で采配を振る。「古典的なもの」と「現代的なもの」、インスピレーションは異なっても、エムシュが時計に込めるストーリーの熱量は同じである。

また、「エイヤフィヤトラヨークトルDNA バーン ラバ」は、地球のエネルギーを高級機械式時計に表現したモデル。シリーズ3作品目となったこのモデルのイメージは、2010年春にヨーロッパ全空域を閉鎖に至らしめたアイスランドの火山「エイヤフィヤトラヨークトル」の歴史的な大噴火である。

エイヤフィヤトラヨークトルDNA バーン ラバ
世界限定99本 344万円(税別)

滾るマグマを示す溶岩亀裂部の赤、黄色は、コールドエナメルによる表現。オニキスベースのプレートに、エイヤフィヤトラヨークトルで実際に採取した溶岩をあしらい、立体的なベゼルで独自の雰囲気を演出する。ベゼル同様に凹凸のあるストラップは、「トード(ヒキガエル)」製。

エイヤフィヤトラヨークトルDNA バーン ラバ

なお、日本で発売されたDNAコレクション第1弾は「ムーンDNAコレクション」

「ムーンDNAコレクション」のムーン・ダストシリーズ。月のクレーターをイメージした文字盤にはムーン・ダスト、ベゼルにはアポロ11号のスチール部品が素材の一部として使用されている
「ムーンDNAコレクション」のムーン・ダストシリーズ。月のクレーターをイメージした文字盤にはムーン・ダスト、ベゼルにはアポロ11号のスチール部品が素材の一部として使用されている

ムーンDNAブラック・ムード 168万円
ムーンDNAブラック・ムード 168万円

これは、アポロ11号のDNAを受け継ぐ時計。ブラック・ムードの文字盤には、船体の一部や砂より小さい塵っぽい素材のムーン・ダストを混ぜたパーツを時計に使用。

そして、第2弾は「タイタニックDNAコレクション」。調査用に回収された客船タイタニック号の一部を時計のパーツとして使用。

タイタニックDNAコレクション

特徴的なのはベゼルで、錆びたタイタニック号のスチールを使っているのだが、タイタニック号の造船所「ハーランド&ウルフ社」のグレードAのステンレススチール素材と合体させて作るという凝った仕様。

2012本限定「タイタニックDNAスティームパンク」 157万5000円
2012本限定「タイタニックDNAスティームパンク」 157万5000円

もちろん、腐食がこれ以上進まないように特殊加工が施されている。ボイラー室から発見された石炭の粉塵を文字盤に使用している金側のモデルもある。

「ROMAIN JEROME」は、人類が遭遇した語り継がれるべき事象のDNAを腕時計に取り込んできた。そのジャンルは多岐にわたり、陸・海・空(宇宙)、そして、ユニークなコラボモデルにまで至る。しかし、これらのモチーフを通じて、ブランドが訴えているのはストーリー。力強さ、カッコよさ、かつて熱狂した対象、言葉を重ねずとも直感で伝わる熱き物語である。

往年の王道ウォッチコレクターにとって、「ROMAIN JEROME」の世界観は理解を超えているかも知れない。それでも「時間を掛けて丁寧に説明していけば、我々の価値観は必ず理解してもらえるものと信じている」と、マニュエル・エムシュは語る。

ROMAIN JEROME

マニュエル・エムシュの視線の先は、おそらくは未来の時計ファンに向けられている。腕時計というアイテムの存在意義が揺れ動く中で、エムシュは自分自身の直感に従い、真っすぐに将来を見つめている。ブレない発信力は、とても強力なのである。

一方、「ZENITH/ゼニス」「RANGE ROVER/レンジローバー」とのパートナーシップが結実した第2弾モデル「Zenith Chronomaster El Primero Range Rover Velar Special Edition/ゼニス クロノマスター エル・プリメロ レンジローバー ヴェラール スペシャル エディション」が発表された。

Zenith Chronomaster El Primero Range Rover Velar Special Edition

都会派のダークカラーに身を包んだ、シックで軽量な現代のエル・プリメロ クロノグラフである。

ラグジュアリーSUVの歴史は、「Land Rover/ランドローバー」が初代「RANGE ROVER」を発表した1970年から始まり、それから約半世紀が経過した今もなお衰えないイノベーション精神が、「RANGE ROVER」ファミリーにとって4番目となるモデル「VELAR」の誕生へとつながった。

RANGE ROVER VELAR

「ランドローバー」では、「VELAR」を「前衛的(アバンギャルド)」な「RANGE ROVER」と位置付ける。

RANGE ROVER VELAR

それは、「Glamour(魅惑)」「Modernity(近代的)」「Elegance(優雅さ)」という新しい要素を、「RANGE ROVER」ブランドにもたらした。

「VELAR」という名称の由来は、ラグジュアリーSUV分野の草分け的存在である初代「RANGE ROVER」のプロトタイプを発表した1960年代に遡る。当時の開発担当エンジニアたちは、発表前の「RANGE ROVER」のプロトタイプ26台を、ラテン語で「(ヴェールで)覆う」ことを意味する「velare」から派生させ、「VELAR」と名付けていた。

初代「RANGE ROVER」のプロトタイプ

同じく1969年に「ZENITH」は、時計史上初の自動巻クロノグラフ キャリバーを発表。「NO.1」を意味する「El Primero/エル・プリメロ」と名付けている。これは、ハイビート脱進機により10分の1秒単位で計測できる、正確性に富むクロノグラフである。

El Primero

それから約半世紀を経て、両ブランドのDNAに脈々と受け継がれるイノベーション精神は、ミッドサイズ・ラグジュアリーSUVである新型「RANGE ROVER VELAR」と「Zenith Chronomaster El Primero Range Rover Velar Special Edition」を誕生させ、ジュネーブ・モーターショーで初披露された。

Zenith Chronomaster El Primero Range Rover Velar Special Edition

「Zenith Chronomaster El Primero Range Rover Velar Special Edition」は、セラミナイズドアルミニウム製ケースに、毎時3万6000振動のハイビート・ムーブメントが搭載され、そして、コントラストが効いたバーニッシュトコッパー色仕上げの42mmケース、艶消し加工を施したスレートグレー文字盤にもデザイン上の特徴を備えている。

Zenith Chronomaster El Primero Range Rover Velar Special Edition

時計の裏側に目を移すと、「RANGE ROVER」と「VELAR」の名がシースルーバックから覗くローター及びケースバックそれぞれに刻まれていることが分かる。ストラップには新しく共同開発された耐久性の高いラバーが採用され、ダイヤモンド型にパンチング加工されたカーフスキンでコーティングされている。

Zenith Chronomaster El Primero Range Rover Velar Special Edition

このストラップのカーフスキンには「RANGE ROVER」の内装で使用されているものと同じ、高品質なスコティッシュ・レザーを採用し、留め具にはDLCコーティングを施したチタン製のトリプル・フォールディング・バックルを使用する。なお、価格は未定。

「RANGE ROVER」ブランドと同じ理念をもって生み出された今回の特別ウォッチは、唯一無二の伝統を受け継ぎ、その洗練された佇まいはあらゆるシーンに馴染む、まさに心揺さぶる時計の誕生である。

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