top

2017 Apr. 4

ポーランド映画祭 2017

4月22日から5月5日までの期間、武蔵小杉にある「川崎市市民ミュージアム」で「ポーランド映画祭 2017 in 川崎 アンジェイ・ワイダ追悼特集」が開催される。

ポーランド映画祭 2017

イベントでは、2016年10月に亡くなった世界的巨匠であるアンジェイ・ワイダ監督の追悼特集として、彼の代表作9作品を上映。名作がデジタルシネマにより鮮烈に甦る。

「ポーランドの巨匠」として知られるワイダ監督は、90年の生涯を通して40本もの映画を撮り、政治と歴史に向き合い続けた芸術家として映画史に残る傑作を数多く残した。その反骨精神あふれる作品群は、ポーランド国内はもちろん、世界各国や日本にも多大な影響を与えてきた。

 Andrzej Wajda
Andrzej Wajda

1926年3月、ポーランド東北部のスヴァウキで生まれたアンジェイ・ワイダの父はポーランド軍大尉だったが、対独戦中にカティンの森事件に巻き込まれて亡くなった。

1944年、青年時代に博物館で開かれた「日本美術展」において喜多川歌麿や葛飾北斎などの浮世絵をはじめとした日本美術に感銘を受け、芸術家を志した。第二次世界大戦中は、対独レジスタンス運動に参加。戦後、1946年にクラクフ美術大学に進学し、その後、進路を変えてウッチ映画大学に進学。1953年に同校を修了した。

1955年、「世代」で映画監督としてデビュー。

世代
Pokolenie/世代

1957年の「地下水道」が「第10回カンヌ国際映画祭」で審査員特別賞を受賞。1958年にはイェジ・アンジェイェフスキの同名小説を映画化した「灰とダイヤモンド」は、反ソ化したレジスタンスを象徴的に描き、1959年の「第20回ヴェネツィア国際映画祭」で国際映画批評家連盟賞を受賞した。

地下水道
Kanal/地下水道

灰とダイヤモンド
Popiol i diament/灰とダイヤモンド

これら三作品は、ワルシャワ蜂起時のレジスタンスや戦後共産化したポーランド社会におけるその末路を描いた「抵抗三部作」として知られている。

以後、アンジェイ・ムンク、イェジー・カヴァレロヴィチらと並んで、当時の映画界を席巻した「ポーランド派」の代表的存在となる。中でも「灰とダイヤモンド」は、「ポーランド映画史上最も重要な作品」と言われるまでになった。

Andrzej Wajda
Andrzej Wajda

1960年、政治色を排した青春映画「夜の終りに」を発表。1962年にはフランソワ・トリュフォーや石原慎太郎らが参加したオムニバス「二十歳の恋」の一篇を製作。1965年の「灰」は4時間近い大作であり、日本では170分に短縮されてビデオリリースされた。

夜の終りに
Niewinni czarodzieje/夜の終りに

灰
Popioly/灰

1968年にはイギリスとユーゴスラビアとの合作「Gate to Paradise」を製作。1969年には「灰とダイヤモンド」に主演したズビグニェフ・ツィブルスキの死を受け、映画製作の現場を舞台にした「すべて売り物」を発表。また、同年の「蝿取り紙」は異色のコメディ作品であった。

1970年、第二次世界大戦後のポーランド社会を扱った「戦いのあとの風景」と、1930年代のポーランドを舞台に三人の男女の関係を描いた「白樺の林」を発表。「白樺の林」は、翌1971年の「第7回モスクワ国際映画祭」で監督賞を受賞した。

Brzezina/白樺の林
Brzezina/白樺の林

1975年には19世紀末のポーランドを舞台に3人の若者の姿を描いた大作「約束の土地」を発表。「第9回モスクワ国際映画祭」で金賞を受賞。

1977年、1950年代に労働英雄となった男の末路を、彼に関する映画を製作しようとする女学生を主人公にして描いた「大理石の男」を発表したが、ポーランドでは上映禁止処分を受けた。しかし、翌1978年の「第31回カンヌ国際映画祭」でスニークプレビューされ、「国際映画批評家連盟賞」を受賞した。

Czlowiek z marmuru/大理石の男
Czlowiek z marmuru/大理石の男

1930年代のポーランドの田舎を舞台にした1979年製作の「ヴィルコの娘たち」は、翌1980年の「第52回アカデミー賞」の外国語映画賞にノミネートされた。

Panny z Wilka/ヴィルコの娘たち
Panny z Wilka/ヴィルコの娘たち

その他、ポーランド映画界で「モラルの不安」と呼ばれる運動が盛んになったこの時期には「麻酔なし」「ザ・コンダクター」といった社会批判を暗喩的に描いた作品を製作している。

1981年には「大理石の男」の続編となる「鉄の男」を発表。1980年に起きたグダニスク造船所でのストライキに始まる連帯運動を描き、「第34回カンヌ国際映画祭」でパルム・ドールを受賞。しかし、その反体制的な活動が原因となり、戒厳令布告によってポーランド映画人協会長などの職を追われることになる。


「第34回カンヌ国際映画祭」でパルム・ドールを受賞

1983年、フランスのゴーモン社の出資をもとに、ともに国外を舞台にした「ダントン」と「ドイツの恋」を製作。「ダントン」は、セザール賞監督賞や英国アカデミー賞外国語作品賞、ルイ・デリュック賞など様々な賞を受賞した。その後、1986年に「愛の記録」を製作し、ポーランド映画界に復帰。

Danton/ダントン
Danton/ダントン

1987年には思想・芸術部門を受賞。賞金の4500万円を建設基金として、多額の寄付などをもとに1994年に「日本美術技術センター」がクラクフに設立された。

1988年にはドストエフスキーの「白痴」を原作とした舞台「ナスターシャ」の演出を担当し、坂東玉三郎を主演に起用。そして、1994年には再び玉三郎を主演に映画化も行っている。

Nastasja/ナスターシャ
Nastasja/ナスターシャ
Nastasja/ナスターシャ

2000年には、世界中の人々に歴史、民主主義、自由について芸術家としての視点を示した業績により、「第72回アカデミー賞」において名誉賞を受賞


「第72回アカデミー賞」において名誉賞を受賞

また、2007年にはカティンの森事件を扱った「カティンの森」を製作。翌2008年の「第80回アカデミー賞」では外国語映画賞にノミネートされ、2009年には「菖蒲」が「第59回ベルリン国際映画祭」でアルフレッド・バウアー賞を受賞した。

Katyn
Katyn/カティンの森

Tatarak/菖蒲
Tatarak/菖蒲

2010年12月6日、ポーランドを訪問中のロシアのメドベージェフ大統領から友好勲章を授与され、2013年には連帯の指導者から大統領となり「ノーベル平和賞」を受賞したレフ・ワレサを描いた「ワレサ 連帯の男」を製作・発表した。

Walesa. Czlowiek z Nadziei/ワレサ 連帯の男
Walesa. Czlowiek z Nadziei/ワレサ 連帯の男

残念ながら、親日家としても知られたアンジェイ・ワイダ監督は、昨年の10月に肺不全により死去。90歳の人生に幕を下ろした。

今回の追悼特集として上映される9作品は以下の通り

「世代」
世代
1942年、ドイツ占領下のポーランド。ワルシャワ郊外で母と暮らす青年スタフは、ドイツ軍の貨物列車から石炭を盗むという仕事を仲間たちとやっていた。ある日、スタフは反ナチのレジスタンス運動家のドロタという少女と知り合い、運動に参加するのだが、やがて彼らにも、戦争の現実が忍び寄ってくる。

「地下水道」
地下水道
ナチスの占領に対する国内軍とワルシャワ市民の抵抗運動=ワルシャワ蜂起の敗北を、ドキュメンタリー風に捉えた作品。脚本家のイエジ・ステファン・スタヴィンスキをはじめ、キャスト、スタッフに実際の蜂起に参加した人々を多数起用。地下水道で繰り広げられる死闘がリアルに捉えられている。

「灰とダイヤモンド」
灰とダイヤモンド
第二次大戦が終結した1945年5月8日から翌朝までの1日、労働者党書記の暗殺を命じられたゲリラ兵の青年マチェクがたどる悲劇的な運命を描いた青春劇。反共主義者の暗殺者を主人公にしたことで当時のポーランド国内では冷遇されたが、ヴェネチア国際映画祭批評家連盟賞受賞を機に、ポーランド映画史上最も重要な作品と言われるまでになった。

「大理石の男」
大理石の男
スターリン体制が強化された50年代ポーランドで、英雄として国家に祭り上げられた1人の男。1976年、映画を学ぶ女子大学生は、ドキュメンタリーの製作を通して英雄神話に隠された真実を描きだそうとし、政府の欺瞞が赤裸々に暴かれる。この作品は当局との間に大きな軋轢を生むが、国民からは熱狂的な支持を受けた。カンヌ国際映画祭批評家連盟賞受賞。

「仕返し/Zemsta」
仕返し/Zemsta
アレクサンデル・フレドロの戯曲にもとづく喜劇作品。18世紀末頃のポーランドを舞台に、1つの城に住む二家族の顛末を描く。家同士の対立に振り回される若い恋人たちという、いかにも古典喜劇らしい内容だが、ポーランド人への皮肉的な視線も交えられている。ロマン・ポランスキーの他、ヤヌシュ・ガヨス、ダニエル・オルブリフスキらポーランドを代表する俳優たちが出演。

「夜の終りに」
夜の終りに
ワルシャワの街で出会った若い医師と娘が繰り広げる恋愛ゲーム。「雪解け」後のワルシャワの街を記録映画風に映しながら、男女の心理的駆け引きを描いたこの作品は、ワイダにとって異色作とも言える。脚本は作家のアンジェイェフスキと監督のスコリモフスキが共同執筆。ポーランドジャズの立役者でもあるコメダが音楽を担当、劇中にも出演を果たしている。

「サムソン」
サムソン
1939年〜43年頃のワルシャワ、ユダヤ人ゲットーを脱出した青年ヤクプの数奇な運命。ヤクプは、ナチスによるユダヤ人迫害やゲットー蜂起まで常に歴史の波に翻弄され続けるが、いかなる迫害にも屈しない精神的強さを持っている。その強さが、旧約聖書の英雄サムソンに重ね合わせられる。本国では知らぬ人がいないと言われる名作だが、日本では昨年に初上映された。

「菖蒲」
菖蒲
余命わずかな妻と医師の夫。かつてワルシャワ蜂起で息子を亡くした夫婦の微妙な距離感と、偶然出会った美しい青年に惹かれる妻の心の動きが、繊細なタッチによって捉えられていく。一方で、妻を演じたクリスティナ・ヤンダの、長年連れ添った夫を本作撮影中に亡くすという個人的体験が挟みこまれ、映画を思わぬ方向へと導く。

「戦いのあとの風景」
戦いのあとの風景
1945年初頭のドイツ。ナチスの強制収容所から解放された囚人たちは、米軍の手で難民収容所に移送される。皮肉屋の青年作家は、収容所でユダヤ系の娘と出会うが、束の間の愛はやがて皮肉な運命にさらされる。原作は、ポーランド人作家タデウシュ・ボロフスキの短編小説。婚約者と共にアウシュヴィッツ収容所を生き抜いた作家は、1951年に自ら命を絶った。

さらに、アンジェイ・ワイダ監督自身が日本に対する思い出やメッセージ、作品への想いを語る特別映像メッセージも特別に公開されることになっている。

Touch the heartstrings | Facebookページも宣伝


 
backnumber
 
<< Back Next >>
backnumber
 
pagetop