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2017 Jun. 17

オリエント急行殺人事件

エルキュール・ポアロは、アガサ・クリスティの推理小説に登場する架空のベルギー人名探偵で、シャーロック・ホームズなどと同様、時代を越え、現在にまで至る支持を得た名探偵の1人。

ホームズ以来のそれまでの推理小説の主人公から一線を画した探偵であり、滑稽ともいえるほどの独特の魅力で高い人気を誇っており、クリスティが生み出した代表的な探偵と同時に、一般的にも著名な名探偵の1人である。19世紀中頃に誕生したポアロは、ベルギー南部のフランス語圏出身とされており、名前のエルキュールはギリシア神話に登場する怪力の英雄「ヘラクレス」のフランス語形である。

エルキュール・ポアロ

ベルギーで警察官として活躍し、署長にまで出世した後、退職。第一次世界大戦中、ドイツ軍の侵攻によりイギリスに亡命することを余儀なくされ、亡命者7名と共にイギリスの富豪夫人の援助を受けて「スタイルズ荘」のそばにあるリーストウェイズ・コテージで生活をしていた。そこで、以前にベルギーで知り合っていた友人のアーサー・ヘイスティングズ大尉と再会し、殺人事件を解決する。

スタイルズ荘の怪事件

そして、その事件が、「スタイルズ荘の怪事件」として1920年に発表されたアガサ・クリスティの処女作である長編推理小説で、「エルキュール・ポアロ」シリーズの長編第1作で初登場作品であり、ヘイスティングズ大尉がポアロの活躍を記述したという作品形式は、「シャーロック・ホームズ」シリーズに見られる「ワトスン」のように、当時の主流であった推理小説の形式であった。その後、イギリスでヘイスティングズ大尉と同居し、探偵として活躍、数多くの難事件を解決した。

1934年に発表された長編推理小説で、クリスティの長編としては14作目、「エルキュール・ポアロ」シリーズとしては8作目にあたる「オリエント急行殺人事件」は、その奇抜な結末からクリスティの代表作の1つに挙げられている。

Murder on the Orient Express

作品の舞台は、「青列車」「ゴールデン・ロー」「ノース・エクスプレス」のような象徴的な名称を持つ豪華列車で、ヨーロッパ各地の鉄道網を100年以上に渡り駆け巡っていた長距離夜行列車「オリエント急行」。

 the Orient Express

中東での仕事を終えたポアロは、イスタンブール発カレー行きのオリエント急行に乗り、ヨーロッパへの帰途に就く。一等車両にはポアロの他、様々な職業、国の出身者が乗り合わせ、季節外れの満席となっていた。

その中の1人、アメリカの富豪サミュエル・ラチェットがポアロを知り、話しかけてくる。彼は脅迫状を受け取っており、身の危険を感じてポアロに護衛を依頼。しかし、ポアロは興味を持たず、また、ラチェットに良い印象を持っておらずオファーを断る。

列車がヴィンコヴツィとブロドの間で積雪による吹き溜まりに突っ込み立ち往生する中、翌朝、ラチェットの死体が彼の寝室で発見される。彼は、何らかの刃物により全身を12か所に渡ってメッタ刺しにされて殺害されていた。現場には燃やされた手紙が残されており、そこから解読されたのは「小さいデイジー・アームストロングのことを忘れ」という言葉だった。ラチェットは、かつて幼いデイジーを誘拐して殺害した犯人だった。

Murder on the Orient Express

ラチェットの正体を知ったポアロは捜査を始め、友人で国際寝台車会社重役であるブックと、乗り合わせた医師コンスタンチンと共に事情聴取を行う。しかし、乗客たちのアリバイは互いに補完されており、誰も容疑者に該当しない。困惑しながらもポアロは真相を導き出し、乗客たちに2つの解答を提示する…という内容。

Murder on the Orient Express

この作品は1974年に映画化され、アルバート・フィニー演じるポアロ他、ショーン・コネリー、アンソニー・パーキンス、ローレン・バコール、イングリッド・バーグマン、マイケル・ヨーク、ジャクリーン・ビセットなど、豪華なキャストが話題になった。なお、監督は「十二人の怒れる男」「セルピコ」など、硬派な社会派映画作品を撮り続け、リアリズムに徹した骨太な演出が特徴のシドニー・ルメットが手掛けた。

Murder on the Orient Express

第47回アカデミー賞では、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、衣装デザイン賞の6部門でノミネートされ、そのうちイングリッド・バーグマンが助演女優賞を受賞した。

Ingrid Bergman

ちなみに、原作者であるアガサ・クリスティは、これまで自分の作品が映画化したものがすべて商業的な作品で終わっていたため、自分の作品が映画化されることを非常に嫌っていた。しかし、この作品で製作プロデューサーを務めたイギリス女王の従兄弟でもある、ジョン・ブラボーン卿が説得し、説き伏せた事で映画化が可能となり、また、この映画の成功でブラボーンは原作者であるクリスティからの信頼を勝ち取り、以降、クリスティ作品の映画化を数多く手がける事となった。

この作品では原作とは若干登場人物の名前が異なり、鉄道会社の重役ブークがビアンキに、被害者の召使マスターマンがベドウズに変更されている。また、原作では事件発生前、ポワロはシリアで現地フランス陸軍の事件を解決するが、この作品ではイギリス軍の事件を解決していることになっていた。

この作品で探偵ポアロを演じたアルバート・フィニーは、観客が素顔を忘れてしまうほどの凝った役作りで好評だったが、彼のポアロ役はこの1作きりで、以後、アガサ・クリスティ原作の映画化は全てピーター・ユスティノフがポアロを演じている。

アルバート・フィニー
アルバート・フィニー

ピーター・ユスティノフ
ピーター・ユスティノフ

そして、新しい「オリエント急行殺人事件」が、今年の冬、12月に全国の劇場で公開が予定されている。

Murder on the Orient Express

監督は数々のシェイクスピア劇で名を馳せ、「シンデレラ」や「マイティ・ソー」を大ヒットに導いた名匠ケネス・ブラナー。最近は監督としての活動が目立つブラナーだが、今回の作品では主人公のエルキュール・ポアロ役も演じている。

Murder on the Orient Express

キャストは、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジョニー・デップ、「バットマン リターンズ」のミシェル・ファイファー、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のデイジー・リドリー、「恋におちたシェイクスピア」でアカデミー助演女優賞を受賞したジュディ・デンチ、そして、「それでも恋するバルセロナ」でアカデミー助演女優賞を受賞したペネロペ・クルスら豪華陣が集結し、作品を彩っている。

Murder on the Orient Express
Murder on the Orient Express

アルバート・フィニーが演じたポアロをブラナーが、そして、リチャード・ウィドマークが演じたラチェットをジョニー・デップが演じる今回の作品の仕上がりが楽しみである。キャストを比較して観るのも一興だ。

Murder on the Orient Express

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