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2018 Dec. 9

ENSO ANGO/エンソウ アンゴ

価値観が多様化する現代において、ラグジュアリーの定義も少しずつ変化している。これまでは、贅の限りを尽くした足し算の発想、つまり、物質的な豊かさを指すものだった。しかし、現在は不要なものを取り除いた引き算の発想による精神的な豊かさも、ラグジュアリーだと感じる人も増えている。

そんな流れが、ホテル業界にもやってきた。日本において、ラグジュアリー・ステイの新しい方向性を示すのが、「ENSO ANGO/エンソウ アンゴ」かも知れない。

ENSO ANGO

「SLH(スモール ラグジュアリー ホテル)」をご存じだろうか。「スモール ラグジュアリー ホテルズ オブ ザ ワールド(本社:ロンドン)」が、独自の厳しい基準をベースに世界各国から選りすぐった、個性溢れるラグジュアリーな独立系ホテルがそう呼ばれている。都会的なデザイナーズホテル、都心の隠れ家ホテル、歴史の香り漂うカントリーハウス、プライベートアイランドのリゾートなど世界約80各国に500以上のホテルが加盟する。

スモール ラグジュアリー ホテルズ オブ ザ ワールド

それぞれが、オリジナリティはもちろん、最高のロケーション、クオリティへのこだわり、パーソナルに行き届いたサービス、そして、デスティネーションを楽しむためのベストを提供するという高いマインドを共有し、世界中のハイエンドな旅を愛する人々に支持されている。

スモール ラグジュアリー ホテルズ オブ ザ ワールド

日本では、これまで「東京ステーションホテル」「ホテル雅叙園東京」「登大路ホテル奈良」など12のホテルが加盟していたが、2018年11月、京都からホテル「ENSO ANGO FUYA II/エンソウ アンゴ麩屋町通U」が新たに仲間入りした。

ENSO ANGO FUYA II
ENSO ANGO FUYA II

「ENSO ANGO」は、2018年10月15日オープンしたばかりの新しいホテルで、そのコンセプトも新しい。ホテルの客室と施設を、あえて街中に分散させることで、暮らすようにその土地を楽しむ「分散型ホテル」

ENSO ANGO FUYA II
ENSO ANGO FUYA II

イタリアでは過疎化した地域の街づくりの政策の1つとして、分散型ホテル「アルベルゴ・ディフーゾ」が数十年前から根付いている。ホテル一棟でサービスのすべてをまかなうのではなく、街にあるレストラン、バー、客室などを利用してもらうことで、旅人に「街に滞在する」という意識、旅の醍醐味を提供という、いわば、地域全体が旅人をもてなすという形態なのである。

これを日本らしく、都市型に転換したのが「ENSO ANGO」。過疎とは無縁の京都だが、ここにあえて分散型ホテルを作ることで、暮らすように街を楽しむ体験を提供できる。大都市ほど、旅人はその表層しか体験できないことが多い。「分散型ホテル」なら、地域コミュニティとの接点が増え、旅するだけでは見えにくかったその街、さらには、その国の素顔を知ることができるというわけだ。

ENSO ANGO

「ENSO ANGO」は麩屋町通にある「FUYA I」「FUYA II」、富小路通にある「TOMI I」「TOMI II」、大和大路通にある「YAMATO I」の独立した5棟から成る。それぞれに、レストラン、バー、キッチン、ジムなどが分散しているので、ゲストが利用したい施設を持つ棟を行き来する。

ENSO ANGO
ENSO ANGO
ENSO ANGO
ENSO ANGO
ENSO ANGO
ENSO ANGO
ENSO ANGO

もちろん、宿泊者は別棟の設備も無料で利用可能。ないものは他で補完するという発想で、大型ホテルが巨大スーパーだとすれば、「ENSO ANGO」は街の商店街に立ち並ぶ個人商店だと考えらえるかもしれない。2つの大きな違いはコミュニケーション。言葉を交わす、笑顔を交わすことから、特別な体験が始まる。

建物自体は同じムードを共有するが、インテリアはそれぞれが個性的。「FUYA I/麩屋町通I」は、伝統的な町家一軒分の敷地に建てられ、いわゆるウナギの寝床。

FUYA I

この形状を生かして町家本来の伝統的な作りを踏襲。細長い廊下を奥に進むとラウンジと坪庭。パブリックエリア全体が陶作家でありアーティストでもある安藤雅信の作品のギャラリーになっている。都会の喧騒から離れた静かな空気感が魅力的。

FUYA I

「FUYA II/麩屋町通II」は、時代を画した世界的インテリアデザイナー故内田繁の茶室と立礼席を始め、その理想を継承する内田デザイン研究所のデザインによって空間が構成されている。

FUYA II

メディテーションや法話を聞くことが出来るタタミ サロン、そして、庭を見ながら瞑想×運動が出来るジムなどの施設がある。「ENSO ANGO」はその名前に託された日本の精神文化を根本にもっているが、「FUYA II」はその精神性をそのまま具現化。タタミ サロンでの京都名刹の坐禅体験に参加して、お茶を一服もステキな体験。

FUYA II
FUYA II
FUYA II
FUYA II

「TOMI I/富小路通I」は、「食」の様々なスタイルを通して交流やコミュニケーションの機会を提供する場。

TOMI I

テラスに面したゲストキッチンは、アイランドキッチンとダイニングテーブルを備えた、グループや家族単位で使用することができるパーティ用キッチンスペース。また、日比野克彦が直接壁にインスタレーションしたアートがあるラウンジには、プロ仕様のカウンターキッチンを用意し、宿泊ゲスト用のおばんざい教室からプロの料理人によるプライベートディナーまで、さまざまな「食」のイベントを企画。ラウンジからゲストルームまで、すべて京の旅と食をテーマとしてクリエイトされた日比野オリジナルアートが満載。

TOMI I
TOMI I
TOMI I

「TOMI II/富小路通II」は、建築から「BVLGARI」や「LOUIS VUITTON」などのプロダクトまで幅広く活躍するスイスのデザイングループ「アトリエ・オイ」が、日本で初めて関わった空間デザインとインスタレーション。

TOMI II

空間テーマを「陰影」に絞り、和傘の技を応用した影の美しい照明器具や清水焼きをアレンジした棚など、京都の技と融合。彼らが日本でデザインした家具や照明や装飾品で、多彩な「日本」を表現。

TOMI II
TOMI II
TOMI II
TOMI II
TOMI II

また、ここには「ENSO ANGO」で唯一のレストランがあり、朝食、ディナー、バータイムまで、多くの人々が交差し、コミュニケーションする「交流」の場を担う。日本、スイス、京都の柔らかい融和は、日本文化を見事に表現する。

「YAMATO I/大和大路通I」は、最も小さな棟ながら、祇園にほど近く、最も繁華街に沿った立地を活かし、便利にステイできるモダンなミニマルコンセプトの棟。

YAMATO I

客室は、バンクベッド形式で、コンパクトながらも機能的な構成。また、1階には外部の人も気軽に利用できるバーがあり、「祇園」とのつながりが自然と生まれる、「ENSO ANGO」の棟のなかで独特のポジションをもっている。いまや「MoMA」をはじめ海外の美術館まで幅広く評価されている寺田模型独自のアートを散りばめ、室内環境にさりげないユーモアと文化的意味を付与している。

YAMATO I

大都市の限られた空間を創造力で活用する「ENSO ANGO」だが、客室内にもその発想は生きている。シャワーブースとトイレをコンパクトに配し、洗面台を室内に取り出したことで、使い勝手を重視。また、歯ブラシやスキンケアアイテムはなく、必要最低限のものだけが置かれている。それは、エコロジー意識だけではなく、ラグジュアリーを重視する人にとって使い慣れたものこそが最も快適であると知っているからだ。

ENSO ANGO
ENSO ANGO

建物を行き来することを不便と感じる人もいるだろう。だが、体験やこだわりに重きを置く人にとっては、こんな旅のスタイルこそラグジュアリーだと感じるかも知れない。今後はさらに棟を増やしていくというから、自分の拠点が街に複数点在するとなれば、街歩きはもっと快適になることだろう。

ENSO ANGO

「ENSO ANGO」では、各棟で京都の伝統に出会える様々なアクティビティも用意されている。建仁寺塔頭両足院の副住職による、心を整える坐禅、京のおばんざい教室や伝統を担う職人たちのトーク、「Tatami Salon」でのヨガ、編んだ竹で作られたモダンな茶室でのお茶会など数多い。

アクティビティ
アクティビティ
アクティビティ
アクティビティ

これらのアクティビティ・プログラムを展開することからもわかるように、「ENSO ANGO」が目指しているのはコミュニティとの一体感。ホテル開業に当たり、計画段階から街を歩いてコミュニティと知り合うことだけを目的としたチームを結成したという。地域と旅人を有機的に結ぶのもホテルの新しい役割なのかも知れない。そして、そこに精神的ラグジュアリーが存在する。

 
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