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2018 Jan. 5

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「だまし絵(トロンプ・ルイユ)」の旗手であり、「視覚の魔術師」とも呼ばれる版画家マウリッツ・コルネリス・エッシャー、また、シュルレアリスムを代表する画家サルバドール・ダリ、そして、「日本のエッシャー」の異名を持つグラフィックデザイナー福田繁雄の3者の作品を紹介する展覧会「夢幻×無限 エッシャー、ダリ、福田繁雄」が、4月20日から6月24日までの期間、福島の「諸橋近代美術館」で開催される。

Self-Portrait, M. C. Escher
Self-Portrait, M. C. Escher

「トロンプ・ルイユ」は、シュルレアリスムにおいてよく用いられた手法・技法であるが、シュルレアリスムに限って用いられるものではない。フランス語で「眼を騙す」を意味し、「トロンプイユ」と表記されることもある。今日では解りやすく「トリックアート」と呼ばれる事が多い。

トリックアート

「トロンプ・ルイユ」の範疇に分類される様式はかなり広く、「壁面や床などに実際にはそこに存在しない扉や窓、人物、風景などを描き、あたかも存在するように見せかける作品」「平面作品に物を貼り付けて、絵の一部が外に飛び出しているような作品」「3次元の現実ではありえない建築物を描いた作品」「人体や果物・野菜などを寄せ集めて人型に模した作品」「普通に見ると人間の顔に見えるがさかさまにしたり、向きを変えたりするとまったく別の物に見える作品」「大きさや長さについて錯覚を起こさせるような作品」などに分類される。

トロンプ・ルイユ
トロンプ・ルイユ
トロンプ・ルイユ
トロンプ・ルイユ
トロンプ・ルイユ

「トロンプ・ルイユ」は、、以下のような目的で用いられる事が多い。

舞台美術における背景セット
演劇の舞台や映画の撮影スタジオなど、限られたスペースで劇中の空間を表現するための大道具には、古くから「トロンプ・ルイユ」の技法を利用して実際以上に奥行きを感じさせる工夫がされていた。

トロンプ・ルイユ

また、テーマパークの建造物にもこうした手法は取り入れられており、徐々に道幅を変えて距離を遠く、または、近く見せたり、建物の一階分の高さを上へ行くほど低くして煽り感を大きくしたりしている。五重塔やお城が上層ほど小さくなっているのも、軽量化して建築の安定を確保するとともに、強化遠近法でより高く荘厳に感じられる効果を有している。

敷地の奥行きを広々と見せる
舞台装置に限らず日常生活の中でも、実際には存在しない奥行きを有るかのように見せるため、騙し絵的な装飾がなされることがある。部屋・廊下・庭などが狭い場合、人は心理的な圧迫感から実用の不便以上に不快に陥りやすい。壁面に架空の奥行きを描くことで、そうした閉塞感が緩和され、ゆったりと感じられる。

トロンプ・ルイユ

店舗の売り場や喫茶店など同じような座席・陳列台が並んでいるフロアで、壁面が鏡張りになっていたりするのも、室内の面積が倍増して感じられる一種の「トロンプ・ルイユ」効果といえる。

また、壮大で複雑な装飾建築を実際に造ろうとすれば、多大な費用や労力を要するが、精巧な絵によってこれらが実在するかのように平面に描けば省力化が可能となり、壁紙や塗装で、大理石・木目・レンガなど実物とは異なる材質のように見せかけるものもある。窓のない側の壁や、現実にはあまり景色の良くない窓面上に、あたかもリゾート地に立地しているかのような風光明媚な眺望を描く形式のイリュージョン・ペインティングも存在する。

イリュージョン・ペインティング

純然たる娯楽
騙し絵の意外性を楽しむ芸術作品として観賞する。

建築不可能な構造物や、無限を有限のなかに閉じ込めたもの、平面を次々と変化するパターンで埋め尽くしたものなどひじょうに独創的な作品を作り上げ、ウッドカット、リトグラフ、メゾティントなどの版画製作でよく知られたオランダの画家(版画家)であるエッシャー。

エッシャー

日本では長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」が、約180点にも及ぶ世界有数のコレクションを所有している他、エッシャーの作品をモチーフにした3Dアトラクション「ミステリアスエッシャー」が有名。

また、「ハウステンボス」内には「エッシャー通り」という通路も存在する。なお、「三重県立美術館」にも3点の作品が所蔵されている。

ちなみに、「日本のエッシャー」と称されるグラフィックデザイナーの福田繁雄は、「滝」などの不可能図形作品の立体化を行っている。

福田繁雄

余談ながら、2002年にベアトリックス女王の祖母で元オランダ王妃エンマ女王の宮殿であったライヘ・フォールハウト宮殿の中に「エッシャー美術館」が開館。ここでは、エッシャーの著名な木版画などのアート作品の他に、彼のプライベート写真やビデオ作品の上映などが行われている。

今回の展覧会は、エッシャーの代表作「滝」や「諸橋近代美術館」が所有するダリの「アン・ウッドワード夫人の肖像」、福田繁雄のトリックアート「SHIGEO FUKUDA」などを通じ、夢幻と無限を表現した奇妙な世界を味わうことができる、また、会期中は様々なワークショップも実施される予定。

M.C.エッシャー 「滝」
M.C.エッシャー「滝」

ダリ「アン・ウッドワード夫人の肖像」
ダリ「アン・ウッドワード夫人の肖像」

福田繁雄「SHIGEO FUKUDA」
福田繁雄「SHIGEO FUKUDA」

M.C.エッシャー「もう一つの世界」
M.C.エッシャー「もう一つの世界」

M.C.エッシャー「写像球体を持つ手」
M.C.エッシャー「写像球体を持つ手」

さらに、続く7月8日から10月21日の期間、「Dear Ms.Crook パメーラ・ジューン・クルック展」が開催される。

Dear Ms.Crook

英国の現代芸術家パメーラ・ジューン・クルックは、ダリに次ぐ「諸橋近代美術館」の主要コレクション。イギリスのプログレッシブ・ロックバンド「キング・クリムゾン」のCDジャケットに数多く登場する彼女の作品、「作品の世界を鑑賞者に解放したい」との思いから、額縁まで描くのが特徴。

Dear Ms.Crook

新しく収蔵された動物シリーズ4点をはじめ、独創的な作品の数々が楽しめる。

400年の歴史を誇る琳派の日本画と、漫画やアニメのキャラクターを融合した作品群が堪能できる展覧会「ぼくらが日本を継いでいく-琳派・若冲・アニメ-」が、1月10日から16日まで、新宿島屋で開催される。

リボンの騎士×東下り
リボンの騎士×東下り

今回の展覧会で展示されるのは、「日本古来の絵画の流れを受けているともいえる漫画やアニメを、琳派的手法で描くとどうなるか?」という視点から、日本画と着物を基盤とする京都の老舗工房「豊和堂」の絵師が、琳派へのオマージュ作品として描いたものである。会場では、2015年に「京都国際マンガミュージアム」で開催された「琳派オマージュ展」などで発表された作品から、若冲の作品に着想を得て2017年に制作された新作まで、計35点を一堂に展示される。

火の鳥×旭日に波濤
火の鳥×旭日に波濤

作品はすべて「豊和堂」の絵師による肉筆画で、約1000点に及ぶ日本美術コレクションを有する、京都の「細見美術館」の所蔵品に着想を得ている。

伊藤若冲「鶏図」と初音ミクを組み合わせた「初音ミク×若冲鶏」の他、「ブラック・ジャック×富士烏」「リラックマ×軒端の梅」など、伊藤若冲や俵屋宗達、神坂雪佳らの作品をモチーフに、現代のキャラクターたちが時代を超えて日本画に融合したユニークな世界観の作品が楽しめる展覧会となっている。

初音ミク×若冲鶏
初音ミク×若冲鶏

ブラック・ジャック×富士烏
ブラック・ジャック×富士烏

リラックマ×軒端の梅
リラックマ×軒端の梅

なお、会場には物販コーナー併設。ポストカードやクリアファイルをはじめとするオリジナルグッズ、会場限定の商品などが販売される。

日本最初期の前衛絵画家の東郷青児の特別回顧展「生誕120年 東郷青児展 夢と現の女たち」が、2月16日から大阪「あべのハルカス美術館」にて開催される。

弱冠19歳で「仁科展」に発表した「パラソルさせる女」で、日本最初期の前衛絵画として話題になり、昭和初期のモダンな美人画は近代女性のタイプを変えてしまったとも呼ばれる実力者の東郷青児。アール・デコ全盛期の1920年代にフランスへ渡り、ピカソとも交流。大胆な画風と芸術家たちとの華やかな人間関係から、時を超えて今なお注目を集める人物である。

東郷青児

東郷青児の生誕120年を記念して行われる「東郷青児展 抒情と美のひみつ」では、全4章に渡って、1950年代末までを中心とする作品61点と資料39件を展示。

日本最初期の前衛的絵画群
見所となるのは、デビュー作「パラソルさせる女」と代表作「サルタンバンク」。1916年に処女作として発表された「パラソルさせる女」は、キュビスムや未来派を取り入れた大胆な画風で、当時多くの人の目に斬新に映った。

パラソルさせる女
パラソルさせる女

「未来派風」と呼ばれ、前衛的な新人として注目された。また、代表作である「サルタンバンク」は、パリに渡った東郷の姿を映し出すように異邦人の郷愁を漂わせる。

サルタンバンク
サルタンバンク

フランス仕込みの洒落たデザイン
アール・デコ全盛期の1920年代にフランスへ渡った東郷作品には、フランス仕込みのセンスの良さが随所で感じられる。装丁本や雑誌の表紙絵、舞台装置の写真など、昭和モダン文化を彩ったデザインの仕事も紹介する。

表紙絵

ピカソ、藤田嗣治など芸術家たちとの華やかな交流
東郷の周りを囲む芸術家たちは、著名な者が多くとても華やか。ピカソをはじめ、山田耕筰、有島生馬、古賀春江などと親交を結んでおり、帰国後は、宇野千代、川端康成と関係を深め、1930年代後半から40年代前半にかけては、藤田嗣治と共に百貨店の大装飾画に挑戦した。泰西名画調のモチーフをレパートリーに加え、近代的な女性美を描き出し、以後東郷の芸術家としての人生を大きく変える。藤田嗣治と競作した京都「丸物百貨店」の対の壁画などを展示する。

東郷青児「山の幸」
東郷青児「山の幸」

藤田嗣治「海の幸」
藤田嗣治「海の幸」

憂いを秘めた美人画「青児美人」の数々も
数多の恋愛エピソードを持つスキャンダラスな人生を背景に作られていった美人画「青児美人」は、東郷作品の中でもよく知られた作品群。今回の展覧会では、陶器のように滑らかな画面に気品あふれる女性を描いた「紫」など、ますます洗練を極めていった美人画の数々も紹介。

紫

平和と団結
平和と団結

バイオレット
バイオレット

若い日の思い出
若い日の思い出

憂いを帯びた独特な女性像を通して、女たちとの苦悩や葛藤の経験を紐解いていく。

ちなみに、開催期間は4月15日まで。この機会に東郷青児の世界観を体感したいものだ。

 
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